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[ハンギョレ21 2010.07.02第817号]フランス学者たち、日本極右財団と戦う

“戦犯笹川がつくった日本財団の後援を拒否”共同声明…該当教授 訴訟されるや連帯の動き(4610字)

←日本財団の学術行事後援に反対し、名誉毀損疑惑で訴えられたカロリーヌ・ポステル=ヴィネイ博士. 

フランスの学者たちが歴史わい曲を日常的に行っている日本極右に対抗し、今厳しい戦いを行っている。

事件の発端は2年前の冬、2008年12月に遡る。その年はフランスと日本の修交150周年を迎え、これを記念する各種行事がフランス現地で開催された。その一環としてフランス国際関係研究所(IFRI)というシンクタンクでは修交150周年を記念する学術会議を準備していた。

←日本財団が英語で出版した南京大虐殺に関する本。南京大虐殺は虚構だという内容を含んでいる。 

日本財団、歴史わい曲支援活動

この行事は‘フランス-日本財団’(Fondation Franco-Japonaise)が後援を通じて資金援助を行っていた。フランス外務部もフランス-日本修交150周年を祝う意味で、この学術行事に共同後援者として参加することが予定されていた。

問題はこの行事の主後援機関であるフランス-日本財団の実体だった。この財団は第2次世界大戦直後、日本のA級戦犯として起訴された笹川良一という極右人物が日本国内外に設立した数十ヶの‘笹川財団’の一つであった。

笹川は20世紀序盤、イタリアの独裁者ムッソリーニに倣って日本にファシスト党を建設しようとしていた日本の代表的な極右人物だ。彼は第2次世界大戦期間に日本の戦争遂行に積極的に加担した疑惑で、終戦後 A級戦犯として起訴され収監生活をした。

しかし出獄後、日本極右政界の支援を得て競艇賭博事業を独占運営し天文学的な資金を蓄積することになる。このような資金力を土台に日本極右勢力の強固な後援者の役割をしながら、他の一方では1962年に日本船舶振興会という公益財団を設立し運営する。

日本船舶振興会は後ほど日本財団(Nippon Foundation)と名称を変えるが、これらは日本ばかりでなく海外にも数多くの類似財団を設立し、これら財団を通じて各種学術文化行事、研究活動などを支援し、笹川の極右行跡を美化し、日本極右勢力の歴史わい曲を積極支援してきた。
ところでフランス外務部がこのような笹川関連財団が後援する学術行事に参加すると言ったためフランス学界がどよめき返った。結局、フランスの日本学および東アジア学関連学者50人余りは行事開催を数週後に控え深い憂慮を表明する共同声明書を電撃発表することになる。彼らは声明書で、その間の学界研究成果を土台に笹川の行跡を告発しつつ、フランス政府が笹川関連財団の後援する今回の行事に参加しないことを強力に要求した。

学界の異例的に強い論調の声明に接したフランス外務部は相当に慌てた。そこで行事開催をわずか一週間余り後という目前にした時点であったにも関わらず、ベルナール クシュネル外務部長官は遅滞なく行事参加の再検討を指示し、フランス外務部は行事開催直前まで悩んだあげく、ついにこの行事を共同後援しないという最終決定を下した。

結局、この行事は当初の企画とは異なり、フランス外務部の名前は外した状態で開催され、以後の論難はフランス学界と外交家の後日談で終結しそうだった。しかし、この事件が世間の記憶から忘れられる頃の2009年秋、笹川と財団側は思いがけない行動に出た。当時、署名作業を主導した学者の1人であるパリ政治大学(Sciences Po)国際関係研究所のカロリーヌ・ポステル=ヴィネイ博士を名指しでフランス学者らの共同声明書が笹川良一と彼がつくった財団の名誉を傷つけたとし、フランスの裁判所に巨額の損害賠償訴訟を提起したのだ。

報復性損害賠償訴訟“学問の自由 威嚇”

←日本財団傘下の各種財団

特に当時、声明に参加した学者50人余り全体ではなくただ一人の学者だけに‘見せしめ’的な性格の訴訟を提起し、訴訟通知過程でもカロリーヌ博士の住居や事務室ではなく、公開的な校内学術行事場所で数多くの人が見る中で訴状を伝達する侮辱的な方法を選んだために波紋はより大きかった。

これに対しフランス内の学術研究団体らはいっせいに強力反発した。フランス政治学会は去る2月に発表した声明を通じ「公益財団が研究者の学術活動に対しこういう訴訟を行った事例はほとんど皆無であり、訴訟内容や過程もまた学問研究の自律性を抑圧するための見せしめ性格が濃厚だ」と抗議した。フランスの日本学会も声明を発表し「笹川良一の極右行跡は学問的にすでに数多くの学者が検証した懸案なのにも関わらず、こういう学問的事実に基づいた内容を問題にすることは理解できない」とし「学問の自由を威嚇する行為を直ちに中断すること」を要求した。併せてフランスの歴代大統領、長官、国会議員の大部分を輩出してきたパリ政治大学教授および研究者たちも異例の記名共同声明を出し「私たちはカロリーヌ・ポステル=ヴィネイ博士を支持し、研究活動の自由を守るために最後まで連帯するだろう」と支持意思を明らかにした。

これに対し匿名を要求したフランスのある日本学研究者は「笹川関連財団側の今回の対応は、ヨーロッパと米国を中心に展開してきた彼らの歴史わい曲が危機に処したという傍証」としつつ「西欧国家の中で日本に最も友好的だったフランス学界での影響力行使に亀裂が生じたことに対する報復性格が濃厚だ」と話した。

笹川関連財団が提起した訴訟の犠牲羊となったヴィネイ博士は訴訟問題ですでに数ヶ月にわたり正常な研究活動ができずにいる。その他にも30年以上にわたり日本を研究してきたフランスの代表的な日本学研究者として、受けることになった精神的衝撃と心理的圧迫は相当なものだ。

“日本財団に寛大な韓国、意外だ”

“思想と学問の自由を享受する学者たちに与えられた社会的責務は2つです。一つは自身の学問を土台に私たちの社会の‘誠実な見張り役’にならなければならないということであり、また他の一つは誤ったものがある時には‘勇敢な告発者’にならなければならないということです。私は私が当然しなければならないことをしただけです。特に今回の事件に対するフランス裁判所の判例は、今後 他の国の学者たちにも影響を及ぼすでしょう。笹川財団側に有利な判決が下されてきてはならない理由が正にここにあります。フランスだけでなく他の国の学者たちのためにも学問の自由と歴史的真実を守るため苦しいけれど最後まで戦います。”

ヴィネイ博士の話だ。彼女はまた「韓国の一部大学で笹川関連財団の研究資金流入と関連した論議があったことをよく知っている」としつつ「日本に植民支配された韓国社会が日本極右勢力の過去史わい曲を後押しする笹川関連財団に寛大だという点は意外」と語る。

日本極右の歴史わい曲に最も警戒心を持たなければならない韓国社会が、むしろフランス社会よりこの問題に鈍感だということは多少逆説的だ。最近、有名韓流芸能人が笹川一族の日本財団を事実上広報する役割を受け持つことにしたことは、この問題に今私たちの社会がどれほど鈍感なのかを端的に見せる例だ。

ヴィネイ博士を含む50人余りのフランス学者たちは今、1898年エミール・ゾラがそうであったように“私は告発する!”(J’accuse!)という叫びで海外で歴史わい曲を日常的に行う日本極右勢力を告発している。彼らのこのような叫びに韓国社会は果たしてどんな反響で連帯することができるか共に悩んでみることだ。

笹川関連財団らの策略

日本財団・東京財団などと名前を変えて実体隠蔽

フランスの日本学研究者たちは“A級戦犯笹川良一が設立した日本船舶振興会が1996年に日本財団(Nippon Foundation)と名前を変えたのは、日本政府が作った国際交流基金である日本財団(Japan Foundation)との混同を狙ったもの」と主張する。

実際にヨーロッパと北米はもちろん、国内でもこの2つの相異なる財団を同じ財団と勘違いしている場合が多い。2つの財団の日本語名称よりは英語名称が主に使われる状況で、‘Nippon Foundation’は‘Japan Foundation’のまた別の表記程度と思えるということだ。そして‘東京財団’(Tokyo Foundation)が日本財団と同じ資金と役員陣で設立・運営される所という事実も良く知られていない。そのためか国内政治家と言論はもちろん、さらに進歩的市民団体でもこれを代表的な日本のシンクタンクの中の一つとして紹介するケースが見られる。

一方、英国・フランス・北欧など海外に設立された笹川関連財団の場合には、初登録の際には笹川という名前を用いずに、現在は笹川という名前を併記する場合が多いが、これは笹川良一という人物に対する否定的イメージがすでに海外ではかなり薄められたおかげだ。フランスに設立されたフランス-日本財団(Fondation Franco-Japonaise)の場合にも、フランス当局に公益財団として初めて登録する時は笹川という名称を使わなかったが、今はホームページをはじめとするすべての活動内容に‘笹川 フランス-日本財団’(Fondation France-Japonaise Sasakawa)という非公式名称を使っている。
フランスの学者たちはこのような笹川と関連財団らによる組織的な歴史わい曲の代表的事例の中の一つとして南京大虐殺問題に言及する。何年か前、ヨーロッパと米国主要大学の日本学および東アジア学関連研究者たちと図書館等に一斉に東京財団が送った本が到着したことがあった。それは<南京大虐殺:事実vs虚構、ある歴史学者の真実探求>(The Nanking Massacre:Facts versus Fiction,A Historian’s Quest for the Truth)という本であったが、南京大虐殺が事実ではなく虚構だという日本極右勢力の歴史観を代弁するある日本学者の本を英語に翻訳出版したものだった。この本を全世界に普及させ、積極的に広報に出た東京財団は日本財団が出資して作った数多くの笹川関連財団の中の一つだ。笹川の資金で作られた数十ヶの財団が名前だけ別にして活動することにより、日本極右勢力とは関係がない色々な団体がこのような主張をしているように偽装する代表的事例ということだ。

フランスの学者の間では、このような事件以後 笹川関連財団らの歴史わい曲の試みを警戒しなければならないという動きが起き本格化し始めた。すでに様々な学者が笹川関連財団から研究資金を受け取ることを拒否し、このような動きに参加する学者も順次増えている。

パリ(フランス)=ユン・ソクチュン通信員 パリ政治大学ヨーロッパ学研究所博士課程研究員 semio@naver.com

原文: http://h21.hani.co.kr/arti/world/world_general/27629.html 訳J.S