米国の相互関税(韓国25%)発効日(8月1日)が迫り、韓国政府は米国を説得しつつ、被害の最小化に腐心している。対米投資と農畜産物市場の開放拡大がカギとなる。
キム・ジョングァン産業通商資源部長官は今月24日(現地時間)、ワシントンの米商務省庁舎でヨ・ハング通商交渉本部長とともにハワード・ラトニック商務長官と面会したのに続き、25日にはニューヨークにあるラトニック長官の自宅でも交渉をおこなった。キム長官は、政府の譲歩案と修正提案で説得する一方、米国側の要求事項を政府に報告し、政府から指針を示されている。同氏は当初、25日に帰国する予定だったが、交渉を妥結させるためにヨ本部長とともに米国滞在を延長したという。
政府はデジタル規制や自動車の環境規制などの、米国に非関税障壁だと指摘されている分野で一定の譲歩をするとみられる。政府は、規制を緩和して米国の要求に合わせるとの立場を表明してきた。
このような分野よりも、日本の「5500億ドル(約80兆円)投資約束」によって大きな変数となっている投資や、農畜産物市場のさらなる開放について、米国の露骨な圧力にどのように対応するかの方が、大きな関心事となっている。米国のトランプ大統領は「その他の国も金を払えば関税が下げられる」として、露骨に金を要求している。政府は大企業を中心として1千億ドル以上の大規模な投資提案をまとめており、日本と似たようなファンド造成も検討しているという。日本のように相互関税や自動車の関税率を15%に引き下げるためには、これまでの計画では難しいと判断しているのだ。政府関係者は「日米合意の内容を綿密に検討している」と語った。
問題は、日本の対米投資ファンドは規模と方式が前例のない水準でありながら、具体的な内容は曖昧だということだ。ただし、交渉を主導した赤澤亮正経済再生相は26日のNHKとのインタビューで、直接投資額は5500億ドルの1~2%に過ぎず、トランプ大統領が収益の90%を米国が持っていくと言ったのもそれについてだと説明している。残りは日本の国際協力銀行や日本貿易保険などを利用した融資と融資保証額だということだ。だとすれば5500億ドルを純粋に投資だと言うのは難しく、日本が初期に巨額の資金を調達することもないとみられる。しかし融資や融資保証も、執行機関にとっては大規模な資本拡充が必要となりうる。また、国内産業に対する支援に使うべき資金を外国政府の圧力に屈して転用するかたちになる。
韓国政府は、農畜産物市場の開放拡大を迫ってきている米国にどれくらい譲歩するかについても、検討を続けている。大統領室のキム・ヨンボム政策室長は25日の通商点検会議後のブリーフィングで、「交渉品目の中には農産物が含まれている」と明かした。政府はコメと牛肉の敏感さを考慮して譲歩リストから除外するとの方針を立てているが、交渉を妥結させるために再考する可能性も取り沙汰されている。
その場合は牛肉が再考対象になる可能性がある、との観測が流れている。トランプ大統領は24日に「我々の素晴らしい牛肉を拒否した国々に警告する」とソーシャルメディアに投稿している。ある通商分野の関係者は、「BSE(牛海綿状脳症)の懸念対象である30カ月齢以上の米国産牛肉の輸入を直ちに認めるというより、検疫手続きなどについて段階的なアプローチを検討する可能性がある」と述べた。韓国に最も多くの牛肉を輸出している米国の畜産業界の最大の不満は、韓国の月齢制限に合わせるため検疫コストがかかることだという。
政府は果物類の輸入制限や検疫問題でも、譲歩案を提示して交渉を進めているという。