韓国の二次電池材料メーカー各社が、米国現地に生産基地を設けるための準備に乗り出した。ドナルド・トランプ米大統領の輸入品への高関税賦課の脅しに、費用が多くかかっても米国に工場を建てる方向へと急旋回している。
20日、韓国の材料業界によると、韓国最大の電解液メーカー(売上基準)であるエンケムは、当初カナダのオンタリオ州に建設する予定だった17万5千トン規模の工場を米国に移す案を推進している。このため、インディアナ州内の工場敷地数カ所を巡り、詰めの検討作業を行っている。韓国企業がトランプ大統領の就任後に投資地域を米国に変えようとする具体的な動きが確認されたのはこれが初めてだ。
同社がカナダ投資にブレーキをかけたのは1月。トランプ大統領が昨年11月の当選後から公言してきたカナダ・メキシコなどに対する関税賦課を就任初日に再確認した時だ。エンケムの関係者は「米国現地の顧客会社を通じて情報を入手し、状況を鋭意注視していたが、関税の影響で米国に急旋回した」と述べた。ほとんどの顧客会社が米国にあるため、国境を越えて払うことになる関税費用が、カナダの工場敷地の安い賃貸料を考慮しても大きな負担として作用した。
エンケムが北米市場での生産力拡大に死活をかけている点も影響を与えた。エンケムは北米市場でのシェア拡大を足がかりに、中国メーカーを抜いて世界1位になるという中長期目標を持っている。このような目標達成のために米国の「貿易障壁」内に入ろうとしている。エンケムはすでに米国ジョージア州の工場で年産10万5千トン(昨年末基準)を商業生産しており、現在推進中のテネシー州(17万5千トン)工場を含め、2025年末までに北米での生産力を55万トンに引き上げる計画だ。
エンケムだけではない。韓国の陽極材メーカーのL&Fは、米国メーカーとの合弁投資で現地生産の道を開いた。この日、L&Fは公示を通じて、米国のリン酸鉄リチウム(LFP)陽極材製造企業「ミトラケム」の持分3.3%を1千万ドルで取得すると明らかにした。
L&Fは、ミトラケムとの戦略的パートナーシップ締結の一環だと説明している。ミトラケムは、米エネルギー省とミシガン州政府から計1億2500万ドルの補助金を確保し、ミシガン州に工場建設を推進しているが、この工場を米国現地生産に活用するということだ。L&Fの関係者は「直接工場を建てたり現地業者を買収するより早くて効率的に現地に生産基盤を設けるために持分投資を選んだ」として、「韓国国内の生産ライン設計をミトラケムの工場設計に適用して工事期間を短縮すれば、2027年から現地商業生産を開始できるだろう」と話した。
L&Fは現在、韓国国内のみに工場があるため、関税リスクが大きい。顧客であるバッテリーセル企業が北米中心にエネルギー貯蔵装置(ESS)市場に参入している状況で、現地生産基盤を適時に用意できなければ競争企業によって押し出される可能性がある。L&Fの関係者は「今後、ハイニッケル陽極材工場を米国に建設する案も考慮している」と語った。