「生成型AI(人工知能)を通じてBtoB(企業向け)・BtoC(一般消費者向け)事業が生まれているが、特定の企業1社が全てを成功させることはできず、多くのパートナーと共に作っていかなければならない」
「AI戦争」に飛び込んだ韓国の代表的なIT企業「ネイバー(NAVER)」が、AIをめぐる産業エコシステムの構築を通じて競争力を確保すると明らかにした。ネイバークラウドAIイノベーションセンターのハ・ジョンウ・センター長は17日、ソウルのCOEXで開かれた「ワールドITショー2024」で基調演説を行い、「(ネイバーの超巨大AIモデルの)ハイパークローバX(HyperCLOVA X)は外部にある多くの産業エコシステムを繋ぐ技術を提供する」と語った。さらに「重要なのはいい文章を書いて理解するのではなく、プラットフォームのパートナーAIを利用する企業にどんな価値を提供するのか」だとし、「ネイバーには韓国語中心に超巨大AIと産業エコシステムを作り上げた強力な経験がある」と強調した。
これに先立ち、ハ氏は9日には米国アリゾナ州フェニックスで開かれた「インテルビジョン2024」イベントにもサプライズ登場した。この場でハ氏は、半導体製造に再び飛び込んだインテルとともに、AI向け半導体に使われるソフトウェア・プラットフォームを共同開発すると宣言した。クローズドのAI開発の産業エコシステムを作っているNVIDIAに対抗し、インテルがネイバーと手を組んだわけだ。ネイバーはサムスン電子とも推論用AI向け半導体「マッハ1」の共同開発に乗り出している。
ハ氏の動きからは、AIをめぐる産業エコシステムに活路を見いだしているネイバーの戦略がうかがえる。AIは生産性を大幅に高めるため、AI確保に向けた世界各国の企業の投資競争が激しい。一方、超巨大AIモデルの開発は膨大な量のGPU(グラフィック処理装置)や電力、学習データなどが必要であり、グローバルビッグテックの独占が懸念される状況だ。
ハ氏は「米国シリコンバレーのビッグテックのAIは教育訓練段階で北米のデータを圧倒的に学習するが、データには(北米の)文化や歴史、社会規範などが蓄積されている」とし、「シリコンバレーが作ったAIを使うと文化アイデンティティが消えることになるため、各地域の国々がAI主権を守るために取り組んでいる」と説明した。ネイバーが先月、サウジアラビアの情報通信会社「アラムコ・デジタル」とパートナーシップを結び、アラビア語の巨大言語モデルを基盤とする「ソブリン(sovereign・自主的)AI」を構築することにしたのもこのような文化従属への懸念からだ。
米国と中国にも属さないAIモデルを開発しているネイバーが、韓国語基盤のハイパークローバXを構築した経験をもとに、自国語に中心にしたAIプラットフォームを新たに構築しようとする他の国に手を差し伸べられるということだ。ショッピングや広告など、インターネット産業全般にAI技術を適用する経験を積んでいるのもネイバーの強みだ。
ただし、ネイバーもやはりAIの性能向上の前提である「コンピューティング・インフラ」の構築という課題を抱えている。ハ氏は「GPUは高価で手に入れるのも難しい」とし、「AI使用者が多くなるのは必至であり、低電力・低費用・高効率の半導体が必要だ。このため、サムスン電子とともに(半導体を)作っている」と語った。