本文に移動
全体  > 経済

尹政権「健全財政」強調してきたが…韓国、財政赤字117兆ウォンで過去最大

登録:2023-04-05 04:18 修正:2023-04-05 09:47
尹錫悦大統領が4日、ソウル龍山の大統領室庁舎で行われた国務会議を主宰している/聯合ニュース

 昨年の韓国の財政赤字は、1年前に比べて26兆ウォン以上増えた。国税収入が前年より52兆ウォン(約5兆2100億円)も多かったにもかかわらず、政府が新型コロナウイルスへの対応などにさらに多くの金を使ったからだ。赤字の増加速度は国の経済の成長速度より速かった。財政の持続可能性に赤信号がともっているわけだ。現政権が推進した大規模減税で税収不足が現実化しているうえ、景気の不確実性も拡大するなど、財政をめぐる今年の条件も厳しいため、現政権の「健全財政」基調は本格的に試される見込みだ。

 政府が4日に国務会議で審議、議決した「2022会計年度国家決算報告書」によれば、総収入から総支出を引いた統合財政収支の赤字規模は64兆6000億ウォン(約6兆4700億円)。1年前に比べて赤字規模は34兆1000億ウォン(約3兆4100億円)の増。統合財政収支から社会保障性基金収支を引いた管理財政収支の赤字も、前年より26兆4000億ウォン(約2兆6400億円)増の過去最大水準となる117兆ウォン(約11兆7000億円)。経済成長のスピード(経常成長率3.8%)より激しい赤字の拡大だ。

 これに伴い、財政の健全性を計る3大指標はすべて上昇。国内総生産(GDP)に対する統合財政赤字の比率は3.0%、管理財政赤字の比率は5.4%で、1年前より1ポイントあまり跳ね上がっている。国の債務比率(国の債務を国内総生産で割ったものを%で表したもの)も1年前より2.7ポイント上昇の49.6%だ。

 赤字規模の拡大は、コロナ対応のために補正予算を1年間で2回編成するなど、財政を積極的に活用したために生じた。大統領選挙前の昨年2月に文在寅(ムン・ジェイン)政権が断行した第1次補正予算は16兆6000億ウォン(約1兆6600億円)、その後に尹錫悦政権が編成した第2次補正予算は55兆2000億ウォン(約5兆5300億円)に達した。

 財政健全性の悪化は、「健全財政」を最重要基調としている現政権の国政運営にとって相当な負担になるものとみられる。政府は当初、昨年まではコロナ対応のために健全性が傷つくことをある程度容認していたが、今年からは支出管理を厳格にし、徐々に健全性を確保していく方針だった。しかし、今年に入って税収不足の懸念が現実化したことで、支出を減らしたとしても財政赤字の拡大の可能性は高まっている。さらに、金融不安や原油価格の再高騰の可能性などに伴って先行きが一層不確実になっている景気を、財政で後押しする必要性も高まっている。

 ナラサルリム研究所のイ・サンミン首席研究委員は、本紙の電話取材に対し、「昨年の決算結果は、国の財政運用を『放漫財政』あるいは『健全財政』というふうに二分法的な見方だけで見るのは難しいという事実を示している」とし、「財政運用は安定的な税収確保を通じて持続可能性を高めていきつつも、必要に応じて赤字を容認しつつ支出を拡大していかなければならない」と述べた。

 一方、昨年の決算で余った歳計剰余金(一般会計)は6兆ウォン(約6000億円)。これは国家財政法(90条)に則って地方交付税と公的資金償還基金の拠出、債務返済にまず使い、残った2兆8000億ウォン(約2800億円)は政府が税収不足のために予定されていた支出ができない場合に、国務会議の議決だけで使える余裕資金となる。ただし、既存の予算事業の支出を増やしたり、新たな事業に使ったりするためには補正予算を編成しなければならない。企画財政部財政管理局のチョン・ヒガプ局長は「補正予算編成があるかどうかについては決まっているものはない」と述べるにとどまった。

チェ・ハヤン、アン・テホ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/economy/economy_general/1086501.html韓国語原文入力:2023-04-04 17:47
訳D.K

関連記事