「原油価格によるショックに比べ、穀物価格によるショックの方が原材料輸入国のインフレーションと経済成長率に及ぼす否定的影響が大きい」
2日、国際オンライン会議で開かれた「2022年BOK(韓国銀行)国際カンファレンス」で基調演説をしたシン・ヒョンソン国際決済銀行(BIS)調査局長がこのように分析した。「グローバル経済は1970年代のスタグフレーションを繰り返すか」というテーマで発表したシン局長は、実証分析(1972~2019年までの米国、英国、ドイツ、日本、フランスなど19カ国の経済データを活用)を行った結果、国際原油価格が供給側の要因(生産量変動)と関係のない新型コロナパンデミック以降の需要の爆発のような純粋な要因により10%上昇した場合、原油輸入国の一般消費者物価の上昇率(ヘッドライン・インフレーション)を引き上げる効果は「平均0.2ポイント未満」だと明らかにした。一方、穀物など農産物価格が10%上昇した場合、穀物輸入国のインフレを上げる効果は「0.4ポイント以上」と分析された。
特に、シン局長は「原材料価格のショックがインフレに及ぼす影響は有意味ではない結果が出たが、経済成長に及ぼす否定的な効果に起因するもの」とし、「原材料価格の上昇は短期的に輸入国のインフレを上昇させるが、国内総生産(GDP)に及ぼす否定的影響が増大し、成長と需要を減速させることで、中期的にはむしろインフレの下落もあり得ると」と説明した。
成長率については、原油供給のショック(生産量の減少)と原油価格が10%上がった場合、8四半期の時差を置いて主要先進国の国内総生産が約0.5%下がるものと推定された。このような供給要因を除いた純粋な要因(原油取引市場)による国際原油価格の10%上昇がGDPに及ぼす効果は限定的(0.2%以内)であることが分かった。一方、農産物価格の10%の上昇が成長率を下げる効果は0.2~0.3%であると分析された。シン局長は「原材料価格の上昇の際、輸入国のGDPは大幅に減少し、賃金や利潤、消費、投資などがいずれも下落し、家計と企業に否定的な影響を与える」と話した。
シン局長は最近、原材料価格の急激な上昇と高い変動性が経済成長を制約し、インフレを刺激する要因として働くが、世界経済の原油依存度の減少や強固な政策の体制などを考慮すると、1970年代の激しいスタグフレーションが再現される可能性は低いと見通した。最近の原材料価格の上昇は1970年代より広範囲な側面はあるが、原油価格上昇のショックが比較的限られており、全般的なインフレの圧力もまだ懸念すべき水準ではないという分析だ。世界経済の原油依存度は持続的に減り、エネルギー使用量のうち原油の占める割合は、1970年代末の約50%から2020年には30%水準まで下落した。シン局長は「インフレの予測値は、先進国と新興国が今年も自国の物価安定目標値よりかなり高い水準を維持し、来年には目標値よりやや高いか(先進国)、目標値範囲内に下落(新興国)するだろう」と予想した。シン局長は米国のプリンストン大学教授を経て、2013年から「中央銀行の中央銀行」と呼ばれる国際決済銀行で首席エコノミストとして働いている。
韓国銀行が主催する2022年BOK国際カンファレンスは「変化する中央銀行の役割:何ができ、何をすべきなのか」をテーマに6月2日~3日、オンライン・カンファレンスの形で開かれる。2005年から開催されており、今年は、新型コロナパンデミック以降の高インフレ及び通貨政策の正常化の課題▽労働市場の構造変化と所得不平等を拡大する過程における中央銀行の役割▽技術革新の便益を極大化するための中央銀行の対応など、4つのセッションに分かれて開かれる。