SKイノベーションが米国による輸入禁止措置を防ぐため総力をあげている。米国大統領の拒否権行使を積極的に求める一方、LGエネルギーソリューションへ渡す合意金の用意も急いでいる。米国国際貿易委員会(ITC)の決定に対する大統領の検討期限まだあと1カ月あまりだ。
4日に米国議会ホームページに公開されたテレビ会議録を見ると、米運輸省副長官に指名されたポリー・トロッテンバーグ氏は3日(現地時間)、承認公聴会で「運輸省が(SKイノベーションの工場の)問題を調べ始めたと聞いている」と述べた。これより前に民主党のラファエル・ウォーノック上院議員(ジョージア州)は「ITCの決定は(SKイノベーションの工場が提供する)雇用を期待していた人たちにとって深刻な打撃」とし「この決定が及ぼす影響を分析してバイデン大統領に提供せよ」と要求している。トロッテンバーグ氏はこれに対し「確実に約束する」と答えた。
雇用問題をてことして大統領の介入を要求しているかたちだ。SKイノベーションも最近、米通商代表部に提出した意見書で「バッテリー輸入が禁止されれば、ジョージア州の工場を放棄する可能性がある」と言及したという。同社は、現在建設中のジョージア州の工場が2600の地域雇用を創出すると述べてきた。ただし、実際に大統領が介入する可能性は低いという評価だ。大統領がITCの決定に拒否権を行使した例はほとんどないうえ、今回の訴訟は対中貿易紛争で米国が強調してきた知的財産権に関係するからだ。
そのため同社は、水面下で合意金の金策に乗り出している。大統領の拒否権を除けば、輸入禁止を避ける方法は、LGエネルギーソリューションとの合意のみだ。業界は、SKイノベーションの財務健全性がこの1年間で目立って悪化していることから、3兆ウォン(約2860億円)前後と予想される合意金を用意するためには、資産売却は避けられないとみている。SKイノベーションによる子会社株の売却決定が注目される理由はここにある。同社は最近、SKルブリカンツに続き、SK総合化学も49%の持ち株を売却することを決めた。それぞれ1兆ウォン(約954億円)を超える規模での取引になるものと予想される。
その間にも、完成車メーカーからの圧力は強くなっている。現代自動車グループは、今回の問題に関して対策に乗り出した。現代自動車グループは、起亜ニロや現代アイオニック5などにSKイノベーションからバッテリーの供給を受けている。輸入禁止措置が発効しても完成車の輸入は認められるが、修理や交換などのためのバッテリーの完成品・部品の輸入はできない。先日、ITCは、先月10日までに販売されたニロに限って交換・修理用バッテリーの輸入を認めている。現代車グループ関係者は「現在、米国法人で総合的な対応策を検討中」と述べている。