日本で5世代(5G)通信を眺める視線は複雑だ。5G製品とサービスに関心は熱いが、日本の技術力が主要国に大きく遅れをとったためだ。通信装備は中国華為(ファーウェイ)、端末は韓国サムスンが最も進んでいる。韓国、米国、中国より一歩遅い2020年3月に5G商用化が予定されている日本は、5Gの“失敗”を挽回するために、6G研究に力を注いでいる。日本の5G産業の現住所と消費者認識を、現地マスコミに報道された通信分野専門記者の話を通じて覗いて見る。
過剰な期待感
日本でも5Gへの関心は、3Gや4Gよりはるかに大きい。マスコミ取材熱気と報道量も同じだ。モバイル業界だけでなく、社会全般で5Gへの期待感が過剰という印象まで与える。日本政府が2016年に提示した新しい社会像「社会5.0」のように、スマートフォンの普及を前提に社会全体がデジタル化する流れがこの期待感を膨らませた。
日常的なスマートフォンの利用で不満が多いことも一つの理由だ。日本の通信企業の料金体系は、ほとんどデータ容量に制限を設けており、動画視聴やアプリのダウンロードのためにWi-Fi連結を待つことがわずらわしい。スマートフォンのユーザーが大幅に増え、通勤時に都心では混雑のために接続が切れる不便も相変わらずだ。
多くの人が日常的にスマートフォンを使うので、5Gが描く未来像と予想される便益を自ら理解する人が増えたことが、3Gや4Gの時とは大きな違いだ。業界波及効果が大きく、主要先進国では国家の政策で推進していることも注目度が高まった理由の一つと推定される。
しかし、LTE網を一緒に使う初期規格の“非独立モード”(NSA)サービスは、あくまでも4Gの延長線上にある。実際、4Gとともに使わなければならないので一般的に言うほどの劇的変化ではない。4G普及の主役になったスマートフォンのような存在が本当に出てくるかも疑問だ。3Gまでは先頭走者だった日本が、5Gで韓国と中国に完全に遅れをとったことは、品質に対する過度の執着が新技術導入を困難にさせたという指摘もある。
主役は5Gスマートフォン
5Gスマートフォンに対しては、まだ否定的見解が優勢だ。サムスンと小米(シャオミ)などが今までに出した5Gフォンは、既存製品のアップグレードバージョン水準にとどまっている。ユーザーが大きな変化を感じることは容易でない。5Gの特徴を生かした端末ではないためだ。価格も既存製品よりはるかに高く、初期利用は制限的な展望だ。
当初5Gフォンは、5Gモデムチップとアンテナ搭載、消費電力増加にともなうバッテリー大容量化などで重く分厚いだろうと予想した。だが、実際に出てきたサムスン「ギャラクシーS10 5G」や小米の「Mi Mix 3 5G」を見れば、4Gモデルと大差はないようだ。華為のMate30シリーズ5Gモデルは「第2世代の5Gフォン」と主張している。1世代とは違い、kirin990チップ5Gモデムを統合した。ドイツ・ミュンヘンの華為製品発表会で「Mate30 5G」と「Mate30PRO5G」モデルが展示されたが、触ってみると4Gモデルとの差異が分からなかった。
通信過程での発熱が激しく、5Gフォンの発熱設計は難しい。また、5Gに使われる周波数帯である「サブ6帯」(6GHz未満)と30GHz以上の“ミリ”の中で、ミリ波に対応するアンテナは薄くするのが容易でない。両方共に使用できる5Gフォンが、どの程度の大きさになるかが注目される。
サムスンのギャラクシーフォルドと中国華為のMate Xのような、折りたたみ(フォルダブル)機種が出てくるなど、高速大容量という5Gの長所を生かす端末がどこまで普及するかも関心事だ。ウェブサイトを見ながらテレビ電話するなど、5Gの特性だ。現時点で折りたたみフォンは、持ち歩きやすいタブレット端末程度に映る。たたむだけに厚く、スマートフォンとして使うにはあまり楽ではない。折りたたみフォンではなくてはならないアプリはあまりない気がする。タブレット用アンドロイド・アプリは、iPadほどには充実していない。また、まだ価格が高く一般ユーザーには負担になる。一般に普及するには、少なくとも現在の半分程度まで価格が下がる必要がある。
スマートフォン業界1位のサムスンが、技術上の問題でギャラクシー・フォルドの発売を延期し、折りたたむことは物理的に無理があるのではないかとの認識が広がった。だが実際に端末を見れば、完成度が高く物欲を刺激する。大画面だけでも価値がある。PCバージョンでウェブサイトを見ても違和感がない。コンテンツUI(ユーザー環境)を変える可能性も内包する。広い画面の分割機能を活用してユーザーの側面で使用法を研究する必要がありそうだ。
5Gアプリと端末
スマートフォン以外に5G時代に有望と見える端末は、5G対応のモバイルWi-Fi共有機(ルーター)のように他機器を5Gに連結する装置だ。スイスの通信企業サンライズの店舗では、台湾HTCが作った「HTC 5Gハブ」を販売している。これはバッテリーを装着した家庭用5Gルーターだ。5Gで超高速無制限容量の通信が実現されるならば、その需要は増えるだろう。
5Gが本当に必要になるのは、大きさとデザインが具現化された時ではないかと思う。端末カメラも有望だ。クラウドサーバーに直接連結するだけでも便利さが一層良くなるためだ。
5G時代を牽引し代表するサービス、いわゆるキラーアプリは業界で模索している段階だ。通信事業者は、拡張現実(AR)、バーチャルリアリティ(VR)、スポーツ、動画、エンターテインメントなどを片っ端からテストしている。どうしても動画サービスが牽引車になるはずだが、今の実現方式では5Gのフルスペックを生かすことができない。
5Gに限定せずにモバイルで何をしたいのかを考える時、真の5G型アプリが生まれるだろう。例えば、コミュニケーションをもっと上手くやりたい場合、5Gがあればビデオチャット、VRチャット、超低遅延、多数同時接続オンラインゲームなど、その幅が広がる。4Gでも多くのサービスが実現されるが、5Gははるかに強力だ。
自動運転と遠隔手術なども議論されているが、実際に普及につながるかは、やや懐疑的だ。モバイル通信インフラは、約10年かけて世代交代が起きるという。だが、法規制などの障壁があり、2030年までにそのような劇的変化が生まれるのは容易でない。