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カカオトーク、無料通話を無料通話と言えない理由は?

原文入力:2012/06/11 16:14(3073字)

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ポイストークの困った真実
カカオは "音声チャット" と言いながら様子見作戦
移動通信社は実際には打撃軽いのにオーバーアクション

 最近カカオトークの無料モバイル インターネット電話(mVoIP)‘ポイストーク’が社会的なイシューに浮上した。 去る4日のサービス開始後、消費者の歓迎と移動通信業界の驚愕が交錯するや網の中立性問題で火の粉が飛び散り放送通信委員会も頭を痛めている雰囲気だ。 そこへ移動通信3位業者であるLGU+はモバイル インターネット電話を全面許容するとして虚を突いて出てきた。

 このように最近一週間、ボイストークの後続反応と措置が相次いだが、まだ公論化されていない課題も多い。 各自の内心事情、策略などがそれだ。 ポイストークを巡る新しい観戦ポイントを探ってみる。

■ "無料通話を無料通話と言えない…"

 カカオはポイストークをリリースして「絶対無料通話ではなく電話の代わりをすることはできない」と強調した。 この会社のイ・ソクウ代表も言論インタビューで 「ポイストークは音声電話を代替できる無料通話ではない。 音声チャット サービスだ」と釘を刺した。

 だが、厳密に調べればこれは言葉遊びに近い。 既存移動電話の代わりにポイストークを利用して通話した事例が明確に存在するためだ。 制限的ではあるが移動電話の代替としての性格が明らかなのに、これを熱心に否認しているわけだ。 ‘音声チャット’という言葉も突き詰めれば音声で対話または雑談をするという意であり、電話通話の意味と別段違わない。

 お父さんをお父さんと呼べなかったホン・ギルトンのように、無料通話を無料通話と呼べないカカオの内部事情もある。 まず移動通信社と政府当局ぼ顔色を見なければならない。 もしカカオが‘そうだよ. 私たちの無料通話だ’と認めれば、移動通信社が要求する網投資費用分担議論に応じない論理的根拠が弱くなる。 また、移動通信社のように政府から色々な規制を受けることにもなりかねない。

 マーケティング戦略面でも無料電話否認戦略が有利だ。 ポイストークを無料移動電話だと宣伝すれば、消費者の期待水準が高まり‘移動通信社の通話より品質が悪い’として打撲を受けかねない。 だが‘絶対に電話ではないから期待するな’と強調すれば、消費者の期待水準を下げられる。 サービスがちょっと不十分でも‘無料なのにここまで’と有り難く思うという話だ。

 これと関連して1997年に発売されたKT‘シティフォン’が反面教師だ。シティフォンは公衆電話から半径50m以内だけで使える発信専用移動電話サービスであった。 文字メッセージとともに固定電話から無線電話に移る中間段階のサービスであったが、加入費と通話料が移動通信社の3分の1~5分の1に過ぎないにも関わらず発売されて3年で市場から退出させられた。 ‘私も移動電話’として出て、機能と品質面で移動電話と比較され消費者が無視したためだ。 消費者は価格に敏感だが、価格だけを唯一の選択基準とはしない存在である。

■ 移動通信社の理由あるオーバーアクション

 ボイストークサービスが始まると移動通信社は‘メボン’(メンタル崩壊のこと)状態に陥ったようだ。 携帯メールに続き、最大収益源である音声通話までがカカオに侵食される境遇に置かれることになったので、そうだった。

 だが、事案を注意深く覗いて見れば、これはオーバーアクションの疑いが濃厚だ。SKTとKTは「海外主要国の移動通信社の場合、モバイル インターネット電話を全面遮断したり、許容するにしても十分な料金水準で部分許容」していると強調した。 我が国も通信社が自らの判断により制限的にモバイル インターネット電話を許容したり遮断した。 今は撤回したが、LGU+は接続自体を禁止し、SKTとKTは3世代(G)網では5万4000ウォン以上、4世代(G)のLTE網では5万2000ウォン以上の料金制だけで許容した。 それも料金制水準により使用量に差別を設け、無制限使用は不可能な状況だ。 結局、自分たちの判断により部分的に許容してきながらも、‘対策なしに全面許容すればどうなるか’として意地悪を働かせたのだ。

 これは消費者や政府当局の同情心を誘発し、自分たちの動ける幅を広げるための措置と見える。 料金引き下げ要求に対する先制対応の性格もあるように見える。 総選挙が近づき昨年下半期、政界を中心に移動電話料金引き下げ論が提起され、その結果、移動通信3社は基本料金を1000ウォンずつ下げた。 基本料金1000ウォンの引き下げにともなう移動通信3社の年間売り上げ減少額は6000億ウォンに達する。 ところで今年末の大統領選挙を控えて移動電話料金引き下げ論が再び提起されるだろうという展望が多かった。 移動通信社がボイストークのおかげで料金引き下げ論に対して戦略的優位を占めることになったわけだ。

■トムとジェリーの対決…当局も苦心

 ボイストークサービスを巡るカカオと移動通信社の対立は、漫画映画<トムとジェリー>を連想させる。 漫画の中で猫のトムは図体も大きく力も強いが、小さいネズミ ジェリーに毎度振り回される。 現実でも状況を主導するのは企業規模や歴史面で移動通信社らとは比較にならないカカオだ。

 両陣営のスタイルもトムとジェリーほどに違いがある。 移動通信社は‘国益阻害’‘投資余力萎縮’‘サービス品質下落’等、謹厳な文語体を動員するが、カカオトークは‘うまくいかなければ言ってください。(汗)’‘彼氏/彼女に10時間以上ボイストークし続けるようと迫らないでください’等、軽い口語体を駆使する。‘通信社の方々に常に感謝するカカオチーム ドリーム’、‘(ボイストーク 接続全面許容してくれて)愛してますLG’等、風刺も効いている。

 視聴者たちがトムとジェリーでジェリーをより好きなように、消費者もカカオ側に傾いている。 世論市場では移動通信社が弱者だ。 それで表では言えずに内心怒りを抑えている。 “言えないからそうであって、率直に言えばカカオはベンチャー企業でもない。 移動通信コンテンツ産業育成のために政策的にデータ通話料を安くしている状況を悪用した無賃乗車者に過ぎない。だが、対応策が容易ではないのが悩みだ。”(ある移動通信社高位関係者)

 トムが悲しみにふければ漫画がつまらなくなるように、移動通信会社がすねれば深刻な状況がくることもありうる。 移動通信社は音声通話料金を高く受け取る代わりにトラフィックが大量発生するデータは安値で利用できるようにしてきた。 インターネット コンテンツ産業を育成しようと考える政策当局の意志が作用した結果だ。 結局、音声通話領域を蚕食されれば移動通信社は使うデータ量に比例して金を受け取ろうとする可能性が高い。 これは公平な方案だが、消費者の多様なコンテンツ利用を遮ってスマートフォンを基盤とするコンテンツ産業の崩壊につながりかねない。 政策当局が意地悪を働かせようとする移動通信社を容易には追い詰められない理由がここにある。

イ・スニョク記者 hyuk@hani.co.kr

原文: https://www.hani.co.kr/arti/economy/it/537101.html 訳J.S