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抗生物質、毎年8500トンが河川に流出

登録:2025-05-16 08:55 修正:2025-05-16 16:22
[クァク・ノピルの未来の窓] 
使用量増加・不適切な排水処理などにより 
消費量の30%…7億5000万人が影響受ける
毎年約8500トンの抗生物質が全世界の河川に流出しているという研究結果が公開された。写真はインドのガンジス川=ピクサベイ//ハンギョレ新聞社

 毎年約8500トンの抗生物質が全世界の河川に流出しているという研究結果が公開された。これは、全世界で消費される40種類の主な抗生物質2万9200トンの30%に相当する。河川に流れ出た抗生物質はバクテリアの耐性を強め、最終的には人間と生態系に害を及ぼす可能性がある。

 カナダのマギル大学を中心とする国際共同研究チームは、全世界900カ所以上の河川(総延長2380万キロメートル)の現場で採取した抗生物質のデータに基づき、世界の河川における抗生物質の汚染の規模を初めて推定した研究結果を「米国国立科学院会報(PNAS)ネクサス」に発表した。研究チームは、世界で最も多く処方される抗生物質であるアモキシシリンは危険なレベルに達していると推定した。

 研究チームは、現在の廃水システムでは抗生物質の成分を適切に除去できないため、病院や家庭などから廃棄された抗生物質の成分が河川に流入し続けていることを明らかにした。人間が服用した抗生物質も成分の30~90%が体外にふたたび排出される。

 特に東南アジアで使用量の増加と不十分な廃水処理が重なり、問題がより深刻になっていると強調した。抗生物質の濃度が最も高い河川の47%がインドと中国、パキスタンにある。

■家畜農場・製薬工場が含まれる場合、問題はより深刻に

 研究チームは、全世界における抗生物質に汚染された河川の近くに住む人口は7億5000万人と推定した。研究チームは「これは、全世界の人口の10%が抗生物質の累積濃度が最も高い上位1%の表流水にさらされていることを示唆している」として、「したがって、このような表流水を人間が飲用する場合、有害なレベルの抗生物質にさらされる可能性がある」と明らかにした。

 研究を主導したヘロイサ・エハルト・メカド博士研究員(地理学)は「個々の抗生物質の残留量は濃度が非常に低く、検出は困難だが、濃度が低くても慢性的に流入すれば人間の健康と水生生態系に危険を及ぼすことになる」と述べた。医学誌「ランセット」によると、世界的に抗生物質耐性菌による死亡者数は年間70万人に達する。国連は、2050年には年間1000万人が死亡するリスクに直面する可能性があると警告したことがある。

 今回の推定値には、家畜農場や製薬工場から流出する抗生物質は含まれていない。論文の共著者であるジム・ニセル教授(環境工学)は「にもかかわらずこのような数値が出てきたことは、人間に使う抗生物質だけでも河川における抗生物質の汚染が深刻なことを意味する」と説明した。研究チームは、河川における抗生物質の汚染防止のための監視プログラムが最も重要だが、それに続き廃水処理施設の改善も不可欠だと指摘した。

*論文情報
Antibiotics in the global river system arising from human consumption.
doi.org/10.1093/pnasnexus/pgaf096

クァク・ノピル先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/science/science_general/1197133.html韓国語原文入力:2025-05-13 23:51
訳M.S

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