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チンパンジーのシロアリ狩り、マッコウクジラの歌…動物の文化も保護すべき

登録:2025-05-09 09:21 修正:2025-05-09 10:00
アニマルピープル 
国際自然保護連合、「動物文化専門家グループ」発足 
「『動物文化』は個体群の長期存続における中心要素」
人間以外の動物社会でも繁殖・生存・移住・コミュニケーションに関連する「文化」があることが判明し、これを生物多様性の保全戦略に反映しようとする取り組みが続いている=ゲッティイメージズバンク//ハンギョレ新聞社

 チンパンジーのシロアリの狩猟方法やマッコウクジラの歌などを、動物固有の文化と認めることは可能だろうか。人間以外の動物社会でも、繁殖・生存・移住・コミュニケーションに関連する「文化」があることが明らかになり、これを生物多様性の保全戦略に反映させようとする取り組みが続いている。

 国際科学ジャーナル「サイエンス」は1日(現地時間)、国際自然保護連合(IUCN)と科学者らが、野生動物の保全政策に「動物文化」を加えることを求めているとして、哺乳類・鳥類・魚類などの脊椎動物の文化的多様性にフォーカスした論文を紹介した。

 記事によると、IUCNなどが主張する「動物文化」とは、特定生物の種の群れの内部で社会的学習を通じて伝えられる独特の行動を指す。たとえば、チンパンジーは木の枝を使用するが、群れごとに使用法が少しずつ違う。特定の群れでは木の枝をシロアリの巣の中に入れて釣り竿のように使うが、他の群れではアリをかき集めたり、石でナッツ類を割ったりするときにこれを活用した。科学者たちは、このような行動は遺伝子に組み込まれたものではなく、人間の農耕・住居文化のように、世代を経て伝えられたものとみている。しかしこれまでは、このような「動物文化」がその種の生物保全戦略に反映された事例はそれほど多くはなかったが

 しかし、3月にIUCNはこの懸案を研究するタスクフォースチーム「動物文化専門家グループ」を「種の保存委員会(SSC: Species Survival Commission)」の傘下に発足させた。同グループに参加している生物学者らが1日、英国の「王立学会哲学論文集」に分類群(霊長類・クジラ類・鳥類・魚類など)別の最新研究や政策反映の事例などを紹介したことで、「科学的推進力が増している」というのが、メディアによる説明だ。

 この論文の筆頭著者であるニュージーランドのマッセー大学所属のフィリッパ・ブレイクス博士は「保全政策を樹立する際には、必ず科学的証拠を基盤とするべきだが、動物の社会的学習と文化伝承はそのなかでも最も重要な部分」だと説明した。「動物文化専門家グループ」の責任者である米国ハーバード大学のエリン・ウェスリング研究員も同様に「タスクフォースチームは、独特な行動を示す個体群を保全するために、各国が取るべき具体的な方策を設けることに重点を置く予定」だと明らかにした。

 動物文化を保全政策に反映する流れはクジラ類から始まった。2017年には太平洋東部に棲息するマッコウクジラが、音響によるコミュニケーション方式によって違う個体群に分類された事例がある。これは、2014年に国連が「移動性野生動物種の保全に関する条約(CMS: Convention on Migratory Species)」に基づき、「クジラ文化」が保全に影響を及ぼす可能性があることを公式に認め、科学委員会にこれについて調査するよう要請したことで実現した。このような措置のおかげで、多くの国の研究者は、マッコウクジラの写真、音響モニタリング、排泄物のサンプルなどを共有し、それぞれの「音響個体群」がどのような脅威に直面しているかを評価できたという。

動物文化を保全政策に反映する流れはクジラ類で始まり、2017年に太平洋東部に棲息するマッコウクジラが音響によるコミュニケーション方式ごとに分類された事例がある=ゲッティイメージズバンク//ハンギョレ新聞社

 しかし、すべての動物種について文化や独特の行動を考慮した保全策を設けるのは難しい問題になりうる。鳥類の一部の種については、地域別に異なる歌を歌うことや学習した移動経路などを文化と認定して政策に反映できるだろうが、チンパンジーのように多種多様な文化を持つ種では、どのような特性を優先するかを決めることが難しいためだ。ウェスリング研究員は「たとえば『ナッツを割ること』を保全政策に反映することにした場合、なぜシロアリ狩りや海草類の釣りや、手をつないで毛づくろいをすることなどは優先順位を下げるのかといった質問が続くことになりうる」と説明した。

 霊長類・クジラ類・鳥類などと違い、研究自体があまり行われていない分類群はデータ自体が少ないという問題点もある。一部の科学者は、遺伝的・個体群のデータに加え、詳細な行動データまで収集するよう要求される場合、現場では保全の取り組みが分散したり、遅延したりする可能性があるという懸念も出ているという。

 ブレイクス博士は「このような問題に『単一の解決策』はない」としたうえで、「動物文化を保全政策に反映することは、非常に繊細な問題であるため、慎重なアプローチが必要だ」と明言した。そのうえで「だがこのような取り組みが、今後われわれが保全政策を樹立する際に重要な示唆になると信じている」と強調した。霊長類学者であるカナダのビクトリア大学のアミー・カラン研究員も同様に、先月の「サイエンス」の論文で「社会的に伝えられる複雑な行動が、個体群の長期の存続を左右する中心要素である可能性もあるという証拠が増えている」と指摘している。

キム・ジスク記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/animalpeople/wild_animal/1196220.html韓国語原文入力:2025-05-07 17:33
訳M.S

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