微細なダイヤモンド粒子を成層圏に噴射して温度を下げることが可能だとする、荒唐無稽な地球温暖化対処法が提案された。気候を科学技術で制御することが可能だとする「地球工学」(geoengineering)的な思考に基づく研究で、膨大な量のダイヤモンド粒子を空輸するだけでも天文学的な費用がかかるという限界もある。
スイスのチューリッヒ連邦工科大学のサンドロ・バッチアーニ博士の研究チームは、「地球物理学研究会報」10月号に掲載した「成層圏への固体粒子注入を通した太陽放射修正効果」と題する論文を通じて、15年間に毎年500万トンずつダイヤモンドの微細粒子(約150ナノメートル)を成層圏に散布すれば、地球の温度を1.6度下げられるというシミュレーション結果を発表した。
研究は、二酸化硫黄や酸化アルミニウム、方解石、ダイヤモンドなどを大気層にエアロゾル状態で噴霧した場合、物質の大気移動方式や熱がどのように吸収され反射されるのかなどを、スーパーコンピュータの3次元モデルで予測する手法で行われた。その結果、研究チームは、優れた太陽光反射効果を示したダイヤモンド粉末が、地球温度を下げるのに最も適した物質だと判断した。地上に落ちるまでの時間が比較的長く、冷却効果が長く持続し、二酸化硫黄のように大気と結合して酸性雨を作ることもなかったということだ。ただし、2035年から2100年の間に最大200兆ドル(約3京1000億円)を投じる必要があり、実現の可能性には疑問が提起される。
一部からは、地球工学的な方法では気候変動は解決できないと批判されている。温暖化の原因である二酸化炭素の排出を減らすのではなく、化学物質を散布するなどの人為的な太陽光管理技術を実現した場合、予想できない副作用が生じる可能性がある。実際に1991年6月、フィリピンのピナツボ火山の爆発で2000万トンの二酸化硫黄が噴出してからの3年間で、地球の平均気温は最大で0.5度低くなったが、降雨量が急減し、深刻な日照りが発生する逆効果も生じた。
*論文情報
DOI: 10.1029/2024GL110575
Microphysical Interactions Determine the Effectiveness of Solar Radiation Modification via Stratospheric Solid Particle Injection