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地球の「トロヤ群小惑星」、なぜ発見が難しいのか

登録:2022-02-12 09:46 修正:2022-02-12 10:33
2010年に続き10年ぶりに2個目を発見 
太陽・地球と正三角形を成す地点 
地球より2カ月進んだ地点で回る 
日の出の直前・日没直後のわずかな時間に出現
地球のトロヤ群小惑星「2020 XL5」の想像図。小惑星の上に見える二つの天体は地球(右)と月(左)であり、右側で明るく光るのが太陽だ=NOIRLab/NSF//ハンギョレ新聞社

 地球と一定の間隔を維持し、地球と同じ軌道で太陽を回る新たな「トロヤ群小惑星」が10年ぶりに発見された。

 スペインのアリカンテ大学が主導する国際共同研究チームは、地球より2カ月先の地点で太陽を公転する小惑星のトロヤ群小惑星「2020 XL5」を発見し、国際学術誌「ネイチャー・コミュニケーションズ」(Nature Communications)に発表した。この小惑星は、ハワイのマウイ島のハレアカラ火山の頂上にある直径1.8メートルの小惑星追跡用のPan-STARRSの利用により2020年12月に初めて発見された後、2022年2月と3月にチリにある直径4.1メートルの南方天体物理学研究(SOAR)望遠鏡で軌道が確認された。

 トロヤ群小惑星は、太陽とある惑星の重力が均衡を成す宇宙空間(ラグランジュ点)で惑星のような軌道を回る天体を指す。トロヤ(トロイの形容詞形)という別称が付いたのは、トロイの木馬のように目立たないよう隠れているという意味だ。

太陽と地球の重力が均衡を成す5個のラグランジュ点の位置。地球のトロヤ群小惑星が発見された地点はL4=NOIRLab/NSF//ハンギョレ新聞社

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トロヤ群小惑星が特定の地点にある理由

 ラグランジュ点は、太陽と惑星を結ぶ線上に3カ所、惑星の公転軌道上に2カ所の合わせて5カ所ある。このうち、惑星の公転軌道の前後にあるラグランジュ点の2カ所(L4, L5)で太陽を回る天体がトロヤ群小惑星だ。

 ラグランジュ点のL4とL5は、太陽および地球と正三角形を成す地点にある。地球から60度の角度で離れている地点だ。60度は全公転軌道の6分の1に相当する。したがって、地球のトロヤ群小惑星は、地球と2カ月の間隔を保ち太陽を公転している。

2020XL5小惑星が今後500年間、地球の先を動き描く軌跡=HORIZONS System、JPL、NASA CC BY-SA 4.0//ハンギョレ新聞社

 トロヤ群小惑星は、まったく同じ地点で軌道を回るのではない。太陽と地球の重力と小惑星の遠心力が相互作用し、遠ざかったり近づいたりすることを繰り返しながら、軌道を回る。そのため、トロヤ群小惑星は地球の先でインゲン豆の形の軌跡を残す。

 太陽系の他の惑星にも、それぞれ太陽の重力と均衡を成すラグランジュ点と、そこにドーナツ型に広がるトロヤ群小惑星がある。火星(9)、天王星(1)、海王星(23)については、すでにトロヤ群小惑星が発見されている。

木星の前後に集まっているトロヤ群小惑星=ウィキペディア//ハンギョレ新聞社

 太陽系最大の惑星である木星については、トロヤ群小惑星はなんと約1万1000個に達する。木星のトロヤ群小惑星は、木星の前に半分、後ろに半分がある。米国航空宇宙局(NASA)は昨年10月、宇宙船「ルーシー」を発射し、木星のトロヤ群小惑星の探査に乗りだした。ルーシーは2027年から2033年まで木星のトロイヤ群小惑星の7個を近接飛行し探査する。

南半球の空にトロヤ群小惑星「2020 XL5」が現れる位置。矢印は小惑星が動く方向を示す。左側に見えるのがチリのSOAR望遠鏡=NOIRLab/NSF//ハンギョレ新聞社

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トロヤ群小惑星の発見が難しい理由

 地球のトロヤ群小惑星が発見されたのは、2010年の「2010 TK7」に続き今回が2個目だ。両方とも地球の先方(L4)で軌道を回っており、2010年に発見されたものは、大きさが約300メートル、今回発見されたものは、大きさが1.2キロメートルだ。

 地球のトロヤ群小惑星は発見が極めて難しい。L4にある小惑星は日の出の直前、L5にあるのは日没直後の地平線の近くでのみ見ることができるからだ。しかも、炭素成分が多いC型小惑星は黒色であるため、光をほとんど反射せず、発見はさらに困難だ。

 研究チームが観測した結果、今回発見したトロヤ群小惑星もC型小惑星だと思われると明らかにした。これは、太陽系形成の初期に生じたものであり、初期の物質状態をそのまま維持している可能性が高いことを意味する。今回の研究を主導したトニー・サンタナ=ロス研究員は「地球のトロヤ群小惑星は、地球の形成過程で離脱した物体の可能性もあるため、特に興味深い」と述べた。

小惑星での資源探査の想像図//ハンギョレ新聞社

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宇宙前哨基地や資源採掘の候補に

 研究チームは、今回発見したトロヤ群小惑星は、600年前に現在の軌道に進入し、今後約4000年間はラグランジュ点に留まった後、軌道を離脱すると予想した。これに先立ち、2010年に発見されたトロヤ群小惑星の軌道維持期間は1万5000年だと予測された。

 研究チームは、トロヤ群小惑星は軌道が安定的であり、離着陸に必要なエネルギーがそれほど多くはならないため、太陽系の探査のための前哨基地や資源採掘の候補になり得ると明らかにした。

クァク・ノピル先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/science/science_general/1030712.html韓国語原文入力:2022-02-11 10:43
訳M.S

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