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韓国人には肥満と糖尿を防ぐ「米飯遺伝子」がある

登録:2020-10-05 02:16 修正:2020-10-05 08:06
インドより3千年も早くコメ栽培、高血糖を防ぐ遺伝的適応が起きる
東アジア人は世界で最も長きにわたってコメの飯を食べてきており、その過程で栄養学的な副作用を減らす進化的な適応をした=ゲッティ・イメージバンク//ハンギョレ新聞社

 韓国人をはじめとする東アジア人は、長年の稲作のおかげで、高炭水化物の食事による肥満や糖尿病などの副作用を防ぐ遺伝的適応を経てきたという研究結果が出た。

 長い牧畜の歴史がある欧州などの一部の地域の人々は、乳糖分解酵素を大人になってからも分泌するため、牛乳が問題なく飲めるが、これと似たような進化が東アジアでも起きていたという主張だ。

 イタリアのボローニャ大学などの国際研究チームは、アジアの稲作伝播に関する考古学的発見と、124の人口集団に含まれる2000人以上のゲノムを分析し、こうした事実を突き止めたことを、科学ジャーナル『Evolutionary Applications』最新号に掲載された論文で明らかにした。

 研究に参加したボローニャ大学のマルコ・サチーニ教授は「一部の東アジア人の祖先は少なくとも1万年前から毎日コメを食べ始め、その結果、高血糖の食事が体の代謝に及ぼす有害な影響を減らすゲノムの適応が起こった」と同大学の報道資料で述べた。

 コメは、人類が栽培する穀物の中で、炭水化物の含有量とグリセミック指数が最も高い。グリセミック指数は、摂取後どれだけ早く血糖値を上げるかを示すが、東アジア人の祖先が食べていたコメと似ている玄米のグリセミック指数88は、小麦の30に比べ3倍近く高い。

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東アジア人に肥満・糖尿が少なかった理由

野生の稲。中国長江流域では、1万2000年前から野生のコメが食べられていた=マット・ラビーン、ウィキメディア・コモンズ提供//ハンギョレ新聞社

 研究者たちは、中国の長江流域で1万2000年前から野生のコメが摂取され、続いて現在の短粒品種が作物化されたという最近の考古学研究の結果に注目した。野生の稲の作物化と栽培技術は、7000~6000年前に韓国と日本に急速に広まった。インド北部で独立的に稲の栽培が始まったのは4000年前で、この時栽培された長粒種の稲は東アジアの稲に比べてグリセミック指数がずっと低い。

 第1著者であるボローニャ大学博士課程のアドリアーナ・ランディーニ氏は「(グリセミック指数が高い)他の品種の稲を数千年も先に栽培し始めた中国、韓国、日本の人々は、インドなどの西アジア人たちが経験したよりひどい代謝ストレスを受けたはず。そのため高血糖食がもたらす代謝疾患にかかる危険を減らすゲノム適応が起きた」と語った。

 研究者たちは、このような遺伝的適応を確認するために、中国の古い少数民族である湖南省のトゥチャ族、韓国人、日本人などの東アジア人のゲノムをパキスタン、バングラデシュ、ミャンマー、ベトナム人などのゲノムと比較分析した。

稲作の発祥地と調査対象人口集団の位置=ランディーニ他(2020)『Evolutionary Applications』提供//ハンギョレ新聞社

 研究に参加したボローニャ大のクラウディア・オイェダ=グラナドス研究員は「東アジア人と違い、西アジア人と東南アジア人からは、特定の食事による代謝ストレスに関する遺伝的適応は発見されなかった。対照的に中国のトゥチャ族、韓国人、日本人の祖先は類似した代謝ゲノムの適応を示した」と話した。

 研究者たちが発見した東アジア人たちの遺伝的変化の一部は、炭水化物がコレステロールと脂肪酸へと変わることを抑制して肥満指数(BMI)を下げるとともに、心血管疾患の危険を低下させることと関連していた。一部の変化はインスリン抵抗性を下げる方向へと適応していた。インスリンは、肝臓でのブドウ糖生成を抑制するなどのやり方で、血中のブドウ糖濃度を下げるが、インスリン抵抗性とはインスリンの作用が落ちた状態を指し、糖尿病の主な要素となる。

 その他、一部の遺伝的変化はビタミンAの代謝物資であるレチノイン酸の生産を促進する働きをするが、この栄養物質が不足すると、コメを主食とする人にしばしば健康問題が起こる。

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欧州人の牛乳のようにコメに適応

野生種を含む様々な品種の長粒種(インディカ)米=ホワイトブラウン、ウィキメディア・コモンズ提供//ハンギョレ新聞社

 韓国人などの東アジア人たちに伝統的に肥満と糖尿が少ないのは、このような遺伝的進化のおかげということだ。実際、韓国の糖尿病有病率は、1960年代には0.5%未満に止まっていた。

 しかし、ここ数十年間の食生活の西欧化、都市化による活動量の減少、高カロリー食品の消費増加などで、東アジア人の糖尿病有病率は急増し、世界の患者の60%を占めるに至った。早くから高炭水化物のコメを消費することで獲得した遺伝的利点は、すべて失われてしまったのだろうか。

 サチーニ教授は「こうした適応は、今も生活方式のグローバル化と西欧化がもたらした食生活の変化による否定的効果を抑えるのに重要な役割を果たしている」と語る。研究者らは、同じくコメを主食とする西アジア人の糖尿と肥満率が東アジア人より高いことをその根拠に挙げる。

 国際糖尿病連合(IDF)による2019年の20~79歳の糖尿病有病率統計によると、パキスタンが世界で最も高く19.9%で、インドが10.4%でそれに次ぐ。中国は9.2%で19位、韓国は6.9%で26位、日本は5.6%で42位だった。

 研究に参加した檀国大学生命科学部のチン・ハンジュン教授は、「欧州、アフリカ、地中海などで家畜を飼っていた人たちが牛乳をうまく消化できるように遺伝的に適応したように、東アジア人は炭水化物の副作用を減らしつつ、うまく摂取できるように進化した」と説明した。

引用ジャーナル:Evolutionary Applications, DOI: 10.111/eva.13090

チョ・ホンソプ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/animalpeople/ecology_evolution/964257.html?_fr=mb2韓国語原文入力:2020-10-03 10:59
訳D.K

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