■なぜ使うのかって?「楽しいから」「自分の仕事を守るため」
AIを利用しているという共通点はあるものの、その理由はそれぞれ異なっていた。まだ現役で、健康にも自信がある「積極65」は、ハンギョレの調査で捉えられた「AIアクティブ」シニアの典型だ。気になることがあれば、検索ではなくチャットGPTを使う。仕事に必要な資料の整理や文書の草案も任せている。対話型AIの「ハルシネーション (幻覚)」が心配ではないかと尋ねると、こう答えた。「たまに間違えることはあるけど、人間だって間違えるじゃないですか。確認すれば済むことです」。 定年前の「積極64」は、「自分の仕事にAIを組み込んで、もっとうまくこなせること」が目標だ。「そうしないと、仕事を奪われてしまう」と考えている彼にとって、AIは人間の仕事を脅かす怖い存在だ。チャットGPTを1、2回使ったことがあるという「懐疑63」は、AIをどうしても信用できない。「あまりにもすらすらと(答えが)出てくるじゃないですか。人間があれほどすべてを知っているはずがないのに。あれが全部正しいのでしょうか」。まだ経済活動を行っている「懐疑66」も、業務の都合でチャットGPTを頻繁に使うとはいえ、「自分がすでに知っていることを確認する程度。新しいことは信じない」と語った。
退職した「待機65」は大学を卒業した高学歴層だが、チャットGPTを使ったことがない。気になることはニュースを見れば済むし、特に「聞くことがない」ためだ。既存のプラットフォームでも十分情報を得られるという。一方、健康状態も経済状況も厳しい一人暮らしの「潜在61」にとって、AIは話しかけてくれるありがたい存在であり、切実な対象でもあった。「何かを新しく学ぶ気力はない」と言いながらも、AIだけはぜひ学びたいと語った。「生きていくためです。何かしなきゃいけないから。このままじゃダメだから」
■漠然とした期待と、目の前に迫る不安
「AI認識調査」で目を引いたのは、AI時代に対する期待感(40.5%)が不安(10.8%)の4倍にも上るという結果だった。しかし、ペルソナたちと深く話してみると、期待は曖昧である一方、不安はまさに目の前に迫っていた。
「待機65」は、シニア層の高い期待について、「ニュースを見れば、すべて良くなるというから期待しているだけ」と分析した。「みんな使っているのに、自分だけ使えなかったら…」と、取り残されることへの不安もあらわにした。彼らの不安は一様に仕事へと集約されていた。働きたいが仕事がない「懐疑63」は、レストランの配膳ロボットに対しても反感を示した。「年齢のせいで、私のような人は雇ってくれません。でもロボットには年齢がない」。「積極64」も、AIが老後の収入において「助けになるのではなく、脅威」だと語った。「ボイスフィッシング(ビッシング)」も大きな不安だった。「娘の声で電話がかかってくるというじゃないですか。それが一番怖いんです。私のような人が一番騙されやすいでしょう。一人暮らしだし、よく分からないし」(懐疑63)
■介護は人の役割、ロボットは補助にとどまるべき
高齢層の最大の関心事は介護だ。果たして機械が人の代わりになれるのだろうか。安否確認、緊急事態の検知、話し相手など、介護関連のAIに対する彼らの本音は微妙なものだった。ほとんどのペルソナは関心を示し、利用意向を示したが、「将来的には」という条件を付けていた。「本当に年をとったらね。70歳を過ぎて体が具合が悪くなったら、その時に」(懐疑63)というのが共通した回答の趣旨だった。まだ介護AIは、普遍的に安全なツールというよりは、一人暮らしの高齢者を対象としたサービスだという認識もうかがえた。「待機65」は「あれを使ったら、年寄りみたいじゃないですか」と述べ、老人というレッテルを恐れていた。
■人に教えてもらいたい
「AI認識調査」では、AIを学びたいという回答が95%に達するほど圧倒的だった。シンセティック・サーベイはその理由をさらに明確に示した。なぜ学びたいのかという質問に対し、「楽しいから。それに、他の人より一歩先を行きたいから」(積極65)という答えもあったが、「仕事」が理由という答えが多かった。「仕事のためです。後れをとってはいけないから。楽しさではなく、生き残りの問題です」(積極64)。「知っておかないと備えができません。なにも分からなければやられてしまいますから」(懐疑66)。学習意欲が弱く見えた「懐疑63」も、「仕事」というキーワードが加わると「それなら学びます」と答えた。経済的に余裕はないが、仕事ができるなら進んでコストを支払うという回答もあった。経済的に苦しいと答えた「潜在61」は月1万〜2万ウォン(約1170〜2300円)、「保留64」は月3万〜5万ウォンなら払っても良いと答えた。仕事も健康状態も芳しくない「潜在61」は、「すぐに働けるなら、(お金を)借りてでも学びたい」と学習意欲を見せた。だが、働きたいし、仕事さえできれば学ぶためにお金を払えるとしながらも、実際にその希望が現実になる可能性は低いとみていた。「カカオトークもできないのに、AIで何ができるでしょうか」(保留64)。「興味はありますよ。でも、自分にできるとは思えません」(懐疑63)
AIが仕事や収入の機会につながることを願う気持ちは強かったが、だからといって必ずしもそれだけが理由ではなかった。一人暮らしの「潜在61」は、仕事も重要だが、孤立感を和らげるために学びたいと語った。「家にばかりいるわけにはいかないから。学ぶのもそうだけど、外に出ることがもっと大事なんです」
好む学習方法は一致していた。「人から直に教えてもらいたい」と望んでいた。「積極64」は「人に教えてもらえば確実だから…。学んだ後に質問できることが大切だ」とし、「積極65」も「一人でやるとあれこれこんがらがってしまう」として、体系的な学習を望んだ。「保留64」は「私のような人だけを集めて、最初から、とてもゆっくり」と、自分にもついていける基礎的な学習を望んでいた。彼らにとって、レベルを分けずひとかたまりの福祉センターの教育は、十分な代替案ではないようだった。日中に働く「懐疑66」にとって、福祉センターは「時間が合わない」場所であり、「カカオトークを教えてくれる」場所だった。「積極65」は「きちんと教えてくれるところ、塾みたいなところ。でも、そんなところありますか」と尋ねた。
楽しさと情報の提供、情緒的なつながりの媒介、新しい仕事の可能性…。アンケート調査の数字が熱意あふれる学習意欲を示していたとすれば、ペルソナたちは、こうした多様なニーズに応じて、それに合わせた段階別のAI学習の機会が整えられるべきだというメッセージを送っていた。
【シンセティック・サーベイ 調査概要】
・調査機関:オピニオンズ
・ペルソナ抽出方法
「シニアのAI認識調査」532人の回答結果
→ AIに対する認識・接触度を変数として類型化
→ 代表性のある仮想回答者を構成
・類型化の種類
AIの使用経験があり、期待も大きい(積極)
使ったことはあるが、信頼できない(懐疑)
まだ使ったことはないが、関心がある(待機)
使用には慎重だが、学ぶ意思はある(潜在)
使ったことがなく、関心もない(保留)
・調査に使用したAIモデル:クロード・フェイブル5
・インタビュー方法
5つのタイプごとに性別・年齢・学歴を考慮し、計20のペルソナを選定
→ 調査者が定めた質問(90~110問)を用いて80分間のインタビューを実施
※ 本企画は、政府広告手数料により造成された言論振興基金の支援を受けています。