父親は今ではいつでも息子を見守っていられる。今月5日に死去した「ピーターパンのパパ」ことチョン・ギョンチョルさん(64)のことだ。チョンさんの遺骨の一部は、息子のジェウォンさん(27)の新たな生活の場である忠清北道の発達障害者自立施設の日当たりのよい場所に生えている木の下に埋葬された。
ジェウォンさんの精神年齢は2歳ほど。最重度の発達障害者だ。20年以上一人でジェウォンさんの世話をしてきたチョンさんは、昨年4月に末期の肝臓がんで余命宣告を受けた。まもなく一人になる息子の住まいを探し回ったが、千カ所以上で断られた。そして今年3月、あるテレビ番組がチョンさんを取り上げたことで支援が殺到し、1カ月で息子の入所先が見つかるなどの「奇跡」が起きた。
知りたいのは、放送の力がなかったらチョンさんとジェウォンさんの運命はどうなっていたのか、ということ。路上のホームレスの人々を見て自分の子の将来かもしれないと思うという、ある発達障害者の家族の言葉が思い浮かんだ。チョンさんの死後、「一人の人間の生存と尊厳が報道機関の関心と市民の善意に依存してはじめて守られる社会は、正常とはいえない」(全国障害者親連帯)という声があがった理由はそこにある。
せめてもの救いは、チョンさんの死によって、韓国社会が発達障害者の家族が背負わされてきた介護を改めて見つめ直していることだ。ジェウォンさんのような「ピーターパン」を育てているというある親は、チョンさんが生前に息子のことを記してきた文章プラットフォーム「ブランチ」に、「世の中にこのような子どもたちの状況を伝えてくださり、ありがとうございます」というコメントを寄せた。政府は10日、「発達障害者ケア国家責任制推進策」を発表した際、報道資料に「『ピーターパンのパパ』が残した課題、国が答える」と記している。平日のみ運営していた最重度発達障害者の24時間ケアサービスを来年から週末にまで拡大するほか、成人発達障害者のための日中活動サービスの対象者を2030年までに2倍にする、というものだ。
偶然にも、チョンさんの死の直後、発達障害者に関する別の問題が持ち上がった。野党「国民の力」のチュ・ジヌ議員が6日に、キム・スンウォン前法務部長官候補の配偶者と子どもたちが働く「韓国児童発達社会的協同組合」についての疑惑を提起したのだ。
チュ議員は、同組合が2022年3月に京畿道水原市の発達障害者活動サービス提供機関に選定される過程で、特別扱いがあったと主張した。その後、組合の政府バウチャー収益は8億ウォン台に達し、キム前候補の配偶者と2人の子どもが2021年以降に組合から受け取った給与は3億3000ウォンあまりにのぼると強調した。チュ議員は「血税にストローをしっかり差し込んでいた」として、「家族の月給の宴」と表現した。同組合のことを、キム前候補の「家族組合」だとも述べた。
野党が長官候補の専門性と道徳性を検証するのは当然だ。しかし、無差別な疑惑の提起と、それによって発達障害者の家族の胸に刃を突き刺すことは別だ。
報道機関はあまり注目しなかったが、韓国児童発達社会的協同組合の保護者たちは13日、子どもたちとともに記者会見を行い、チュ議員の主張に反論した。
組合は保護者たちが自分たちの力で設立したものだ。「どこも子どもたちを受け入れてくれないなら、私たちが自ら子どもたちの通える場所を作ろう」と志を一つにしたのだ。初期には親がすべての費用を負担していたが、たちまち限界に直面した。そこで、発達障害者が受け取るバウチャーの使用可能機関として認可を受けることを目指したのだという。
とりわけ「過度な給与」疑惑をめぐっては、保護者たちは重度発達障害者の介護労働の重みをまず考えるべきだと声を強めた。「発達障害の介護は、一人の人間の一日をそばで共に過ごす介護であり、先生を一人探すことさえ容易ではない」というのだ。彼らは「チュ議員の発言の一言一言に、とても苦しめられている」として、「これ以上、私たちの家族の暮らしを破壊しないでほしい」と訴えた。
「ピーターパンのパパ」のエピソードには涙しておきながら、「血税ストロー」という言葉には何も感じずにいられるだろうか。19日にキム前候補は辞退したが、これだけは是非とも聞いておきたかった。28万8000人の発達障害者とその家族が直面している世の中の変化が遅すぎるせいだ。
イ・ユジン|オープンデスクチーム長 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )