1987年の民主化以降、全国選挙は地域構図で行われてきました。その年の12月の大統領選で、盧泰愚(ノ・テウ)候補は大邱・慶尚北道、金泳三(キム・ヨンサム)候補は釜山・慶尚南道、金大中(キム・デジュン)候補は光州・全羅南道・全羅北道、キム・ジョンピル候補は忠清南道で圧倒的な支持を得ました。1988年の第13回総選挙も同様でした。
1990年の3党合同で大邱・慶尚北道と釜山・慶尚南道が一体化しました。「慶尚道は保守、全羅道は民主」という地域構図が形成され、あらゆる選挙で今に至るも最も強い威力を発揮しています。
地域構図が少しずつ揺らぎはじめたのは、世代構図が出現してからです。盧武鉉(ノ・ムヒョン)候補とイ・フェチャン候補が対決した2002年の大統領選では、「世代投票」という言葉が初めて登場しました。盧武鉉候補は20代と30代で勝利し、イ・フェチャン候補は50代と60代で勝利しました。40代は伯仲していました。その後の選挙は地域構図が徐々に弱まり、世代構図が徐々に強まる流れになっています。
朴槿恵(パク・クネ)候補と文在寅(ムン・ジェイン)候補が対決した2012年の大統領選では、文在寅候補は20代、30代、40代で勝利したものの、50代と60代で圧倒的な支持を得た朴槿恵候補に勝てませんでした。2017年の大統領選では、ホン・ジュンピョ候補は惨敗したものの、60代と70代以上では勝利しました。
「高齢層は保守、若年層は民主」という世代構図が形成されているように思われました。そうではありませんでした。「共に民主党」に好意的だった若年層の有権者は、徐々に同党に背を向けはじめました。
文在寅大統領時代のいくつかの出来事がきっかけでした。2017年の仁川(インチョン)国際空港公社の非正規社員の正社員化問題、2018年の平昌(ピョンチャン)冬季オリンピック女子アイスホッケー南北単一チーム問題、2019年のチョ・グク法務部長官任命問題、2021年のLH事件(韓国土地住宅公社職員の不動産投機事件)です。4つの事件を貫く価値は「公正」でした。
1980年代に全斗煥(チョン・ドゥファン)政権に立ち向かい、1987年の6月抗争を経験した40~50代は、民主主義や平和などの大きな言説に関心を寄せます。しかし、民主化以降に成長した20~30代は、機会と公正に対しての方がはるかに関心が高かったのです。とりわけ「正義を叫びながら実生活は正義に貫かれていない」40~50代や民主党の政治家たちの偽善に憤りました。
20~30代有権者の怒りは、2021年4月7日のソウル市長補欠選挙、2022年の大統領選挙で相次いで表出しました。
オ・セフン候補とパク・ヨンソン候補が対決した2021年4月のソウル市長選挙では、多くの20代と30代の有権者が50代と60代以上の有権者と同様にオ・セフン候補を支持しました。保守野党「国民の力」が企画した「世代包囲」が機能したのです。
尹錫悦(ユン・ソクヨル)候補と李在明(イ・ジェミョン)候補が対決した2022年の大統領選では、20代と30代の有権者の両候補に対する支持はほぼ拮抗(きっこう)していました。しかし20~30代の男性は尹錫悦候補に、女性は李在明候補に多くの支持を寄せました。世代構図に続いてジェンダー構図も登場したのです。いずれにせよ、20~30代の有権者が民主党に好意的であるという仮説は急速に崩壊しはじめました。
20~30代の新たな有権者の出現を、政治家たちも知らなかったわけではありません。若者にアピールする公約を大量に打ち出しました。
2022年の大統領選で尹錫悦候補は、若者向け原価住宅30万戸と初めて家を所有する人向けの駅近住宅20万戸の供給、若者新婚夫婦向けの伝貰(契約時に賃借人に高額の保証金を預ける代わりに月々の賃貸料を払わなくて済む不動産賃貸方式)保証金ローンとローン返済利子の支援、兵士の月給200万ウォン保証など、公約を大盤振る舞いしました。尹大統領は公約を守れなかったうえ、弾劾されてしまいました。
2025年の大統領選挙で李在明候補は、若者未来積金の導入、仮想資産現物ETF導入の推進、安全な仮想資産投資環境の整備、取引手数料の引き下げ誘導など、27の若者公約を提示しました。しかし、20~30代の有権者は民主党にあまり好意的ではありませんでした。
2025年の大統領選挙の得票率は李在明49.42%、キム・ムンス41.15%、イ・ジュンソク8.34%でした。20~30代の支持は異なりました。放送局の出口調査では、20代の得票率は李在明41.3%、キム・ムンス30.9%、イ・ジュンソク24.3%でした。30代は李在明47.6%、キム・ムンス32.7%、イ・ジュンソク17.7%でした。
2026年6月3日のソウル市長選挙も同様でした。放送局の出口調査では、ソウルの20代と30代の有権者はオ・セフン候補により多くの票を投じました。ただし、男性と女性の投票行動は異なっていました。20~30代男性はオ・セフン候補に、女性はチョン・ウォノ候補により多くの票を投じました。2022年の大統領選で見られたジェンダー構図がまたも出現したのです。
ソウル市長選挙での敗北後、李在明大統領と民主党は20~30代の有権者に対してはっきりと緊張した表情を見せています。
7月1日に国会で民主党のパク・ミンギュ、キム・ナムジュン、キム・ユン、キム・ヨンベ、キム・ハンギュ、ナム・インスン、モ・ギョンジョン、パク・チュミン、チン・ソンジュンの各議員の主催で、「なぜ20~30代は民主党を支持しないのか?」という挑発的なタイトルの討論会が開催されました。ハン・ジョンエ政策委員長は次のように発言しています。
「民主党は既得権勢力だが、私たちは今もそれを否定している。それをまず認めるべきだ。2012年、2017年まで20~30代が私たちを支持していたのは、盧武鉉大統領を失った経験を共有していたからだ。今や大統領輩出は3度目、4度目にもなるのだから、有能さで勝負すべきだ。相手の失政ばかりを期待していてはならない。社会からあがる非常に多様な声をしっかりと聞き、消化しなければならない。不足しているということを受け入れなければならない」
李在明大統領は7月2日の首席・補佐官会議で、「追加税収を効率的に活用し、未来世代のための安定した投資の財源確保に全力を尽くしてほしい」と指示しました。「若者予算の分析および若者政策の再構造化方策」についても報告を受けました。
7月3日、民主党のモ・ギョンジョン、パク・チウォン、チャン・チョルミン、キム・ドンアの各議員は「定年延長を労使問題としてやり取りするのではなく、採用と雇用維持、退職へとつながる雇用制度全般を、新たに設計する大きな枠の中で一緒に議論すべきだ」として、若者の雇用問題の解決策を求める声明を発表しました。
8月17日の全国党大会で最高委員選や代表選に出馬する候補者たちも、若者政策を中心議題に据えつつあります。
キム・ミンソク前首相は7月3日にXで、「首相在任中、最も悩んだ課題は若者の最初のキャリアだった」とし、「『最初のキャリア保障国家責任制』を民主党の代表政策にしていく」と述べました。7月中の連続討論会の2回目のテーマとして「20~30年民主党、若者に優しい民主党」を予告しています。
ソン・ヨンギル議員は7月3日に記者団に次のように述べています。
「習近平主席が中国共産党結党105周年に際して提示したテーマが、まさに若者だった。若者と20~30代の支持なき政党に未来はない。民主党が生まれ変わり、真に20~30代の若者たちに魅力あるものとしてアプローチする政党、彼らに夢を提示する政党を作らなければならない。張保皐(チャン・ボゴ)プロジェクトを発表した。毎年1万人を世界中に派遣し、1年間その地域や文化を学ぶのを支援するために、23兆ウォンを投資する構想を練っている。若者の住居を画期的に解決する方策を準備している」
市民団体「軍人権センター」元事務局長のキム・ヒョンナム氏(民主党のチョン・ウォノ・ソウル市長候補の常任共同選挙対策委員長として選挙戦に参加)は、7月3日の最高委員出馬宣言で次のように述べています。
「若者たちが今回の地方選で最も多く選択したのは、民主党でも、国民の力でも、改革新党でもなく、棄権だ。投票所に来なかったのだ。彼らは民主党を離れたことはない。私たちが獲得しようとしたことがないだけだ」
「過去ばかりをみてリスク管理にばかり気を使う政党こそ、まさに既得権政党だ。そのような政党に若い世代の期待を集めるのは容易ではない」
「必ずや再び若い世代に期待される民主党を作る」
民主党の指導部も動き出しています。7月3日の最高委員会で若者問題を担当する党内機関を設置し、若者世代の所得や資産の二極化の緩和、住居、雇用などの政策を策定することを決めました。
ハン・ソンスク首相も取り組みをはじめています。就任後初の週末となった7月4日、ソウル新村(シンチョン)の大学街のワンルーム密集地域を訪れて住環境を視察したほか、西大門区弘済洞(ソデムング・ホンジェドン)の幸福寄宿舎(韓国私学振興財団が運営する大学生用の寮)でワンルームや寮に住む若者たちと懇談会を行いました。
ハン・ソンスク首相は「寮と若者住宅の供給をさらに増やすべきだという思いを抱いた。国土部、教育部、首相室などの関係省庁と若者との討論を通じて具体的な拡大策を策定する」と述べました。「政府は若者の最初のキャリア形成の重要性を認識しており、若者インターンなどの仕事経験事業の拡大にさらに努める」と述べました。
政府当局者や政治家の言うことは派手です。口で言えないことはありません。重要なのは実践と問題解決能力です。
李在明大統領と民主党にとって、20~30代の若者の問題を解決するのは非常に難しいことです。この時代の若者が抱える苦しみは、所得と資産の二極化、不均衡な成長、世代間の対立、首都圏への集中と地方の消滅、雇用の縮小、高齢化と少子化など、韓国社会のあらゆる問題が集約されているものだからです。
それでも、20~30代の若者問題の解決は、李在明大統領と民主党にとって「選択」ではなく「必須」です。20~30代の若者の問題を解決または緩和できなければ、民主党は2028年の総選挙と2030年の大統領選挙で敗北するでしょう。李在明大統領と民主党にそれができるでしょうか。みなさんはどうお考えですか。