<半導体スーパーサイクルは、インテルやアップルなどの巨大テック企業のサプライチェーン戦略の修正とAIへの投資が絡み合った外的要因によって引き起こされた。業界では、今回のスーパーサイクルは3~4年周期で繰り返されてきた従来の需要曲線とは異なり、基調の流れとなって当分続く可能性が高いとみている。半導体の利益偏重が長期化すれば、産業構造や賃金・所得、資本・資産などの分野で韓国社会の多重格差が深刻化する可能性が高い。半導体発の二極化の展開を3回にわたって検証する。>
誰も予想しなかった最近の半導体スーパーサイクル(超好況)は、ソウルから約9千キロ離れた米国カリフォルニア州のインテル本社で始まった。インテルの最高経営責任者(CEO)に昨年3月就任したリップ・ブー・タン氏は、同年下半期にCPUチップの増産に乗り出し、「勝負手」を打った。モバイルが急成長する中、会社の中核となる基盤であるパソコン(PC)とサーバー用CPU市場の主導権を守り、後発の追撃をかわすための戦略だった。
公式の調達網とは別に、CPUとメモリ半導体メーカーは水面下で事前に物量のすり合わせを行うことが業界の隠れた慣行だ。しかしこれを飛び越えて、人間の脳の役割を果たすCPUが市場に大量に投入されると、それに対応するメモリの需要まで吸い上げた。CPUが演算を担当するなら、メモリはデータを保存・供給する役割を担うため、CPUが増えれば増えるほどそれを支えるメモリも必要になるからだ。供給が需要を生んだということだ。
グローバルなビッグテック(巨大技術企業)のAI投資に加え、巨大テック企業の攻撃的な経営判断が絡み合い、半導体スーパーサイクルの勢いが強まっている。最大の恩恵を受けた企業であるサムスン電子とSKハイニックスの今年の合算営業利益予想は約620兆ウォン(以下、FnGuideの集計基準)に達する。来年の営業利益予想は約830兆ウォンで、追加予算基準で今年の韓国政府の総支出(753兆ウォン)を大きく上回る。
これには米国のアップルも一役買っている。アップルの管理者は自社工場を持たずにスマートフォンやタブレットなどを委託生産しながらも、一度も納品の遅延を起こしたことのない「サプライチェーン管理の王」と呼ばれている。業界関係者は「インテルの影響で当時メモリ供給の不安が顕在化したため、世界の情報技術(IT)企業へ転職したアップル出身者が即座に在庫拡充に乗り出した」と語った。メモリ価格の上昇傾向がさらに急激になった背景だ。
半導体の好況は、低成長の沼に陥った韓国経済にとって「祝福」だ。 しかし、その成果の裏に影を落とす懸念の声も大きい。経済全体の「半導体偏重」が長期化すれば、韓国国内の産業はもちろん、企業と労働者間の格差が拡大し、不均衡と二極化がさらに深まる可能性が高いからだ。産業研究院のクォン・ナムフン院長は「半導体の超好況により国家経済における半導体産業の占める割合が過度に大きくなり、少数の企業に利益が集中して貧富の格差が拡大するならば、産業エコシステムの多様性が弱まり、経済全体の不均衡もさらに大きくなる」と述べ、「これは韓国経済にとって別のリスク要因となりうるという点で懸念される部分だ」と語った。
問題は、このような格差を深める「半導体独走体制」がさらに固定化される可能性があるという点だ。AI競争で優位に立とうとするビッグテックの投資競争が本格化しているが、世界的にごく少数の半導体メーカーが短期間で供給を増やすことは現実的に難しいからだ。また、今後新たな半導体工場が次々と建設され、メモリ価格が下がって安定するとしても、AIイノベーションを支えるインフラ投資ブーム自体は継続するとみられ、これがこの見方を後押しする要因でもある。かつてのパソコン、インターネット、モバイル革命への投資拡大の傾向も約10年間続いている。そのため、格差緩和のための対策が必要だという指摘が出ている。
現在、メモリ市場の供給が需要に追いついていない指標もこの見通しを裏付けている。市場調査会社オムディアによると、サムスン電子、SKハイニックス、米マイクロンの3社のメモリの今年の年間DRAMウェハー(半導体基板)生産量予測は、前年より6.1%増の1842万枚で、増産幅は前年度(7.4%)に比べて縮小した。業況の急落により業績が悪化した企業が、このかん新規投資に慎重に取り組んだ結果だ。
一方、ビッグテックの投資需要は本格的に増加傾向にあり、メモリ企業の評価額を高めている。米国全米経済研究所が今月公表した報告書によれば、グーグル(アルファベット)、マイクロソフト、メタ、アマゾン、オラクルからなる主要5社の年間AIインフラ投資額は、昨年の3810億ドルから来年には1兆900億ドルに増加すると予測されている。JPモルガンは、DRAMは2028年まで、NANDフラッシュは少なくとも今年まで供給不足の傾向が続くと見込んでいる。
ただし、供給不足が解消されることで訪れる半導体スーパーサイクルの鈍化が、すぐにメモリ企業の不況を意味するわけではない。英国のオックスフォード・マーチンのAIガバナンスイニシアティブが昨年2月に発表した報告書によると、世界のAI市場は2033年までにドイツの経済規模に匹敵する4兆8000億ドルに成長すると予測されている。サムスン電子とSKハイニックスも短期的な利益の鈍化はあるかもしれないが、中長期的なAIインフラ投資ブームによる恩恵は続くとみられる。チェ・ビョンホ高麗大学ヒューマンインスパイアードAI研究所研究教授は、「フィジカルAIやロボットなどによりAI産業の重心が移り、関連の投資が引き続き増加する可能性が高い」と見込んでいる。クォン・ナムフン院長は「半導体の超好況が長期化することで韓国経済の不均衡がさらに深まる可能性がある。このような点で、半導体から生じる利益が経済の隅々までしっかりと流れるよう、政府・産業レベルで実効性ある対応策を検討すべきだ」と述べた。