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法と秩序に従うことが「真実の逆転」になるとき【寄稿】

登録:2026-06-06 10:15 修正:2026-06-06 10:17
2026年5月13日、パレスチナ・ガザ地区中部のデイル・アル・バラフで、子どもがイスラエル軍の空爆で廃虚になった建物を背景にして立っている/AFP・聯合ニュース

 ベンヤミン・ネタニヤフが、イスラエル対外情報機関「モサド」の次期長官にロマン・ゴフマンを内定した。彼はパレスチナ人を残酷に弾圧したことで悪名高い軍人出身で、イスラエル国防軍(IDF)の大佐として服務中、未承認の秘密作戦を独自に遂行し、物議を醸したことがある。政治権力の暗黙の意志を実現するためならば、指揮官は公式の権限を超える行動も躊躇してはならないというのが、彼の信念だ。

 ゴフマンは、イスラエル国家とイスラエル人入植者たちが、パレスチナ抑圧のためにイスラエルの法に自ら違反する状況を正当化している。彼の立場は、イスラエル人入植者による政治が数十年間にわたり展開してきた論理の露骨な表現にすぎない。イスラエル人入植者たちは、政府が公式には望まないと言っていることを、代理で遂行する。パレスチナの地を占領して入植地を拡大し、パレスチナ人を脅迫し、これを覆すことのできない現実にする。するとイスラエル国家は、これを事後的に受け入れる。イスラエル人入植者たちは、政府が直接できないことを代理で行う非公式の先鋒隊の役割を果たしているのだ。合法的な国家の政策と違法な入植者の暴力の間の区別は消え去る。

 ネタニヤフがモサドを掌握しようとする理由もここにある。イスラエル情報機関の内部には、まだそれなりに抑制された政治的ビジョンが残っているからだ。たとえば、モサドのエフライム・ハレヴィ元局長は「イスラエルとパレスチナは共存すべきであり、一方だけが優位に立ち、もう一方の熱意は無視するやり方では、どちらも生きていくことはできない」と述べたことがある。ゴフマンをモサドのトップに任命したのは、このような異なる声を封じ込めるために、側近体制を強化しようとする試みだと言える。

 合法と違法が逆転しているという事実は、法を守ろうとする人物に対する処遇にも表れている。イスラエル軍最高法務官のイファト・トメル=イェルシャルミ少将は、パレスチナ人収監者への虐待について調査を試みたところ逮捕され、すさまじい圧力のもとで自殺未遂にまで追い込まれた。一方、過激な人種主義者として有罪判決を受けたイタマル・ベングビールのような人物は、国家権力の中心に入った。イスラエルでは、犯罪自体が国家の政策として常態化している。

 衝撃的なことにゴフマンは、政策決定者のために違法な暴力を代行できるという論理の根拠として、私を引き合いに出した。もちろん、批判理論が反動勢力に流用される現象は、異例のことではない。イスラエル軍は長きにわたり、ドゥルーズとガタリによるポスト構造主義の概念を、パレスチナ人に対する市街戦を遂行する作戦の理論として活用してきた。デジタル新封建主義の設計者と言えるピーター・ティールは、ルネ・ジラールを歪曲して流用する。右派ポピュリストも同様に、グラムシのヘゲモニー論を左派よりはるかに効果的に用いる。

 もしかすると、私の理論の中には、ゴフマンが流用しうる要素があるのだろうか。断言するが、ない。私の仕事は、現代の国家権力が自らの法と秩序に違反しつつ、違法な暴力を動員して権力を再生産する手法を、批判的に分析するものだ。ゴフマンは、これを国家がそうすべきだという方向に逆転し、権力が法に違反することを正当化する戦略として用いている。抑圧者が、自分たちのような者を批判する理論を歪曲し、逆に自分たちの犯罪的活動を洗練させるという点で、驚くべき皮肉だ。

 このような状況において、「法と秩序」を抑圧の道具としてだけみる必要はない。法と秩序は被抑圧者を保護する最後の装置になり得る。パレスチナ人は、イスラエルが課した違法な法と秩序のもとに置かれているだけでなく、イスラエルが自分たちの法に違反してまで行使する無法な暴力にもさらされている。国家権力が暴力を黙認する段階を超え、直接それを支援しているため、パレスチナ人たちは違法な暴力から何の法的保護も受けることができない。法と秩序に従うことが真実の逆転となっている。

//ハンギョレ新聞社

スラヴォイ・ジジェク|リュブリャナ大学(スロベニア)、慶煕大学ES教授 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1261248.html韓国語原文入力:2026-05-31 18:30
訳M.S

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