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住宅価格は果てしなく上がるのか、一気に下がるのか【レビュー】

登録:2026-01-24 08:57 修正:2026-01-24 14:23
2024年9月、中国上海の住居用建物群。2024年の中国の不動産投資規模は2021年の3分の2ほどに縮小した/ロイター・聯合ニュース

 好評を博しているク・ギョファン、ムン・ガヨン主演の映画『もしも私たち』(原題)の原作は、中国映画『僕らの先にある道』だ。2007~2017年の北京を背景に、急激な経済成長の中で浮き沈みを経たはかない青春を描いたこの映画は、実際のところ「家をめぐる闘争」のようにみえる。愛する恋人はみすぼらしくて暗い大都市の狭い部屋を転々としながら安住の地を探すことに熱中する。彼らが苦闘した2000年代初めは、中国で歴史上最大の住宅ブームが起きる直前だった。誰もがマイホームを手に入れようと必死になった。2010年代の中国の住宅所有率は80%を超えた。だが、2016~17年ごろから不動産バブルが崩壊しはじめた。一時「不動産恐竜」と呼ばれた開発企業エバーグランデ(恒大)は、建設前に分譲するというやり方で急速に成長していたものの、債務不履行に陥り、2024年に中国の不動産投資規模は2021年の3分の2ほどに縮小した。

中国映画「僕らの先にある道」。2007~2017年の北京を背景に、はかない青春を描いたこの映画は、実際のところ「家をめぐる闘争」のようにみえる=ネットフリックス提供//ハンギョレ新聞社

 不動産価格の爆発と暴落を経験した日本の不動産市場は、30年あまりがたった今に至るも東アジア経済に巨大な影響を及ぼしているほど衝撃的だった。1980年代のバブル経済時代、6大都市の商業用土地の価格は500%以上に上昇したが、この上昇は今も世界的な記録だ。土地価格の暴騰の背景には「土地神話」があった。日本の株式市場は土地価格の上昇と経済的繁栄に支えられて急上昇し、1989年12月31日に最高値を記録した。その後、四半世紀近くこの記録は破られなかった。1980年代末、日本の土地の価値の合計は米国の4倍以上だったが、金利を引き上げて「土地バブルを意図的に引き起こした結果」、30年以上たっても日本経済は泥沼から抜け出せていない。わなにはまったのだ。

 『不動産はいかに権力となったか』の原題は『土地のわな(The Land Trap)』だ。土地価格が上昇するにしろ下落するにしろ、巨大な変化が生じた時は個人と国のいずれもが途方もない危険に直面するということを表現している。豊かな国であれ貧しい国であれ「土地のわな」を免れた国はきわめて珍しく、このわなにはまって無事に脱出できた国も見つけるのは難しい。わなにはまると長期的に多くの人と国に致命的な被害が出ることは避けられないため、大都市を中心に繰り広げられる「土地危機」に対する問題意識をまず持ってもらおうという考えが込められている。

不動産はいかに権力となったか|マイク・バード著、パク・セヨン訳、RHコリア、2万5000ウォン//ハンギョレ新聞社

 本書は、3200年前の古代バビロンの時代から今に至るまで、人類がなぜこのように古い資産である土地に執着するのかを検討する。土地は数千年の時を経て数十億の人口が富を築く源泉となり、世帯、企業、国の成功または失敗を決定づける要の資産となった。今も520兆ドルにのぼる世界の実物資産に占める土地の比率は、35%に達する。土地が金融と連動する資本主義が深化するにつれ、不動産価格が上がった時に機会をつかんだ勝者とそうでない敗者に分かれて資産格差が広がり、不平等が強まった。土地は心理、政治、経済がクモの巣のように絡み合っており、なまじ触れると崩壊は避けられない。

 著者は米国の事例を特に詳しく描写する。米国は草創期の金融開拓者が土地を用いて信用を創出する方法を開発した国であり、世界の多くの国がその後を追った。19世紀の米国の思想家ヘンリー・ジョージは『進歩と貧困』(1879)で、土地を所有することで得られる経済的利得の100%に税金を課す「土地単税」を主張した。彼の主張は複数の国で実験されて賛否を呼び、土地についての法や規則を作ることがどれほど難しいかを示す尺度となった。

 中国と日本が不動産バブルと下降を経験したのに対し、シンガポールは少し異なる。香港も土地を国有化し、それを財源にして少数の不動産開発業者に莫大な富を集中させ、住宅価格は殺人的なものになったが、シンガポールは政府が市民のために意図的に低住宅価格政策を展開し、土地資産の効果が均等に配分されるようにした。資産を基準とする下位50%の世帯が国全体の住宅資産の25%を所有するシンガポールとは異なり、香港、ロンドン、ニューヨークなどは下位50%の所有する住宅資産の割合は事実上0%だ。シンガポールの公正な土地および住宅モデルは、経済の活力を増進した。ジョージが150年前に抱いた理想を忠実に具現化した国となったのだ。

 英国出身の金融・経済専門記者である著者のマイク・バードは、ツイッター(現X)で名をはせる経済インフルエンサーだ。彼は2008年の金融危機の時代から、住宅問題とグローバル金融危機の関係性に大きな関心を寄せてきた。大学で歴史と政治学を学んだジャーナリストらしく、各国の政治や経済状況についても優れた理解力と洞察を示す。韓国語版の序文で著者は、李在明(イ・ジェミョン)大統領が現在試みている新たな不動産規制政策と保有税引き上げ議論に言及し、そのような状況認識は正しいと評価する。しかし、不動産熱を冷まそうとして失敗した文在寅(ムン・ジェイン)政権の政策になぞらえ、十分な住宅供給なき融資規制はその場しのぎに過ぎず、「誤った電線を切ると、その結果は災い」になると警告する。本書のかなりの部分が、各国の政府が租税制度と金利引き上げ、融資規制によって不動産価格を調整しようとしたものの、「土地のわな」にはまってしまった事例を扱うことに割かれている。

 解放後、米国に主導された韓国の土地改革は成功だったと評価していることもそうだが、過熱する不動産問題の解決策を提示する結末部分に至ると、多少怪しく曖昧な部分がなくはない。著者は、土地資本は特別な革新ではなく全面的にほぼ偶然によって資産を増殖させてきたのだから、穏健な土地価値税を導入するとともに土地に対する税制上の恩恵と優遇政策を廃止すれば、バブル崩壊のリスクは軽減されと確信する。しかし、西欧の大都市で住宅供給に成功した例はなく、途方もない規模の土地に税を課すことを目指すあらゆる試みは所有主の利害と正面から衝突せざるを得ない、とも述べる。

 本書も、土地のわなにはまったり、わなにはまった時に無事に脱する素晴らしい方法を提示してはいない。ただし、土地をめぐる激しい闘争と歴史的教訓を知ることから始めようという主張、デジタル時代にあって今も土地は最も安全な担保だという説明だけは、全面的に共感する。

イ・ユジン先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/culture/book/1241275.html韓国語原文入力:2026-01-23 09:03
訳D.K

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