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休むのではなく、遊ぶべき…引退後「お金をかけず」遊ぶ方法

登録:2025-12-23 08:30 修正:2025-12-23 10:13
ゲッティイメージバンクコリア//ハンギョレ新聞社

 韓国の中高年層は余暇をどのように過ごしているのだろうか。

 グラフは、50代以上の年齢層の週末の余暇活動を示したものだ。青が50代、赤が60代以上だ。両者とも動画/コンテンツの視聴、休息の割合は高いが、趣味や自己啓発、スポーツ活動などに投じる時間は相対的に少ないことが分かる。主にテレビや携帯電話を見ながら暇をつぶしているということだ。

中高年層の週末の余暇活動。左から、動画/コンテンツ視聴、休息、社会活動、趣味/自己啓発活動、観光、スポーツ、コンピューターゲーム/インターネット、文化芸術鑑賞、スポーツ観戦、文化芸術活動//ハンギョレ新聞社

■シニアのほとんどが休みには携帯を見て過ごす

 60歳未満と以上を比べてみよう。動画/コンテンツの視聴、休息は増えており、趣味/自己啓発、観光、スポーツ、文化活動は減っている。なぜこのような現象が起こるのだろうか。老化によって体力が低下するからかもしれないし、以前の習慣と慣性を保とうとする傾向のせいかもしれない。原因が何であれ、年を取れば取るほど「遊び」より「休息」を好むシニアが増えることを教えてくれる。

 人生において「遊び」を「休み」より優先するには、どうすればよいのだろうか。遊びを見つめる視点を変えなければならない。定年と引退は、舞台を降りて客席に座って休めという命令ではない。人生の後半全体を「休み」で満たすことはできないし、そうしてもならない。物質的な見返りを望まない、喜びと楽しさを得ながらも生きる意味を増やしてくれる何かが必要だ。それが遊びだ。

■遊びにもレベルと格がある

 良い人生(good life)を続けるためには、良い遊び(good play)が必要だ。遊びにもレベルと格がある。良い遊びとは何か。人生の後半を支える4本の柱に答えがある。健康に良く、関係の密度を高めてくれ、金が介入しない遊びが「良い」遊びだ。逆に健康に有害で、相手がおらず、金銭的利害関係が絡む遊びは「悪い」遊びだ。

 友人と共に山に登ったり、自転車に乗ったりすること、頭を使うだけでなく体も動かすのが良い遊びだ。小さな部屋に閉じこもって株のチャートを一日中ながめているのは悪い遊びだ。金から離れれば離れるほど良い遊びに近づく。金が介入すると、遊びは労働に化けてしまう。家庭菜園は遊びだが、収益をあげるために大規模に農作物を栽培するのは労働だ。

■自分の遊びを持つ人の方が幸せ

 遊びは楽しさ、人間関係、癒しの関数だ。共に愉快な時間を過ごせば体と心が浄化される。ストレス解消で遊びに勝るものはない。仲間たちと息を合わせて歌を歌ったり、踊ったり、楽器をたたいたりすることを考えてみよう。体力が許せばボール遊びをお勧めする。人がボール遊びに熱中するのは、競争(agon)と偶然(alea)が入り乱れて面白いと感じさせてくれるからだ。人類ははるか昔からボール(球)で遊んでいた。

 植物や動物も遊びの相手になりうる。作物を植えて収穫する行為は、達成感と心理的安定を与えてくれる。病気になった人がペットを飼ったら健康を取り戻したとする報告書は多い。自然は立派な遊び場だ。人との交流が嫌なら、自然を探検すればよい。コケや草、花や木を観察しながら森を歩くだけでも気分が良くなり、心が満たされる。

 青春の遊びが激しく燃え上がるたいまつなら、中高年の遊びはかすかに燃える薪の火のようなもの。年齢や身体条件、生活条件に合った遊びを見つけて、大いに楽しめばよい。遊びという視点から人生の後半に入った100人のシニアを調べたところ、自分の遊びを持つ人はそうでない人より活力にあふれ、心身が健康で、暮らしの満足度が高かった。このことは、遊びの重要性に気づかせてくれる。

■金がなくても十分に遊べる

 遊びにも金がなければならないとよく言われる。うなずける話だが、正しいのは半分だけだと思う。金がなくても楽しめる遊びは多い。金は遊びの必要条件の一つだが、十分条件ではない。金があっても遊ぶことを知らない人は、遊びと自分の間に壁を築いて生きている。だから「遊べる」人になることが重要だ。「遊んだことがある人が遊ぶ」という格言は真である。

 適切な遊びを見つけるのが難しいのなら、携帯電話を遠ざけることから始めればよい。韓国人の一日の携帯電話使用時間は平均5時間だという。国民の4人に1人が、スマートフォン利用の調節が難しい「過依存危険群」に分類される(24.1.19/ハンギョレ新聞)。デジタルデトックスをすれば、家庭菜園、散歩、登山、読書などの新たなアナログの遊びを持つ確率が高まる。

 土に触れ、伴侶と公園を散歩し、親しい仲間と山に登り、季節の変化を満喫し、心を温かくしてくれる本を読み、甘美な音楽を聞き、美しいものを目に入れることより素敵なことが、どこにあろうか。良い遊びは心身の老廃物を燃やして回復力を培い、共感能力を育んでより良い人(better person)にしてくれる。遊びは強い。

付記)面白いことは長くやっても疲れません。その経験を重ねれば、人が簡単には真似のできない境地に至ります。長きにわたって特定のテーマに没頭してきた人々に与えられる特別な贈り物です。

#ムン・ジンスの「あなたの知らない本当の引退の話」とは?

 作家のムン・ジンスさんは塾講師、大企業の幹部、保険販売員、中小企業の取締役、社会的企業の代表、非営利財団の活動家、公共機関の常任理事など、様々なセクターを行き来しつつ生きてきた特異な経歴の持ち主です。著書に『引退の定石』、『引退絶壁』があり、定年を控えた人を対象とした生涯設計についての講演もおこなっています。お金が善良に使われる世の中を探求する「社会的金融研究院」の代表も務めています。

ムン・ジンス|作家、社会的金融研究院代表 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/health/1235832.html韓国語原文入力:2025-12-22 09:00
訳D.K

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