キム・ジョングァン産業通商資源部長官は、韓米関税交渉の後続措置を協議するために訪米したが、目に見える成果が出せずに14日に帰国した。対米投資の方式と収益の配分方法について意見の相違が埋まらなかったことで、こう着状態が長期化する恐れがあるという観測が示されている。
14日未明に仁川(インチョン)国際空港に帰国したキム長官は、「交渉に進展はあったか」と記者団に問われ、「2国間協議が進められている」と述べ、具体的には答えなかった。キム長官は12日(現地時間)にニューヨークで米国のハワード・ラトニック商務長官と会談し、今年7月末の韓米関税交渉で約束した3500億ドル(約51兆円)の投資ファンドの運用方法、利益の配分方法などについて合意を得ようとしたという。
韓国と米国は今年7月30日(現地時間)、米国が韓国に対して課すとしていた25%の相互関税を15%に引き下げる代わりに、韓国が米国に3500億ドル規模の投資を行うという内容に合意した。しかし米国は品目関税の対象となっている自動車に対しては約束通り15%に引き下げず、依然として25%を適用している。
両国が鋭く対立しているのは、3500億ドル規模の対米投資の方式と収益の配分比率だ。米国は直接投資の割合を高めるよう求めているが、韓国は直接投資の割合を減らし、金融や保証による投資の割合を高めることを望んでいる。収益配分方式についても、米国は投資が回収されるまでは米国が10%、韓国が90%を取ることを認めつつも、元金回収後は米国が90%、韓国が10%を取る構造を要求している。これは米国に過度に有利な条件だというのが韓国政府の立場だ。
韓国政府は、米国に3500億ドル規模の直接投資を行うと通貨危機が懸念されるため難しいとみている。先月末基準での韓国の外貨準備高は4100億ドルほど。自動車関税の15%への引き下げ時期が遅れることになっても、米国の要求は受け入れがたい、というのが韓国政府の判断だ。このような理由から、韓国政府は関税交渉の過程で最近、米国に対して無制限の韓米通貨スワップ協定の締結が必要だとの立場を伝えたという。通貨スワップ協定とは、非常時に両国が自国の通貨を預けて相手国の通貨が借りられるようにする取り決め。
米国は、先に交渉が妥結した日本の例をあげて韓国に圧力をかけている。日本は投資を約束した5500億ドルの運用について、対米投資先は米国が主導的に決めること、投資回収までは投資利益を双方が半分ずつ取り、回収後は収益の90%を米国が取ることなど、日本に不利な条項を多数受け入れた。
韓国貿易協会のチャン・サンシク国際貿易通商研究院長はハンギョレに、「日本の誤った先例で、外貨準備高が日本に及ばない韓国の交渉の余地が大きく狭まった」とし、「この状態が長引けば輸出競争力も打撃を受けざるを得ない」と述べた。