25日に開かれる韓米首脳会談で在韓米軍の「戦略的柔軟性」が議題になる可能性が高い中、韓国政府の外交責任者たちはこの事案をどのように解決するかをめぐり苦心している。政府は、台湾有事の際の韓国と在韓米軍の役割を線引きし、会談共同宣言文に戦略的柔軟性と関連して「原則的なレベルの内容」を盛り込むことを目指している。
国際安全保障環境の変化に合わせて「同盟の現代化」を進める米国は、在韓米軍を北朝鮮の抑止に限らず、北東アジアと太平洋で中国を牽制するカードとして活用したいと考えている。特に米国の国防・国務省担当者らは在韓米軍の戦略的柔軟性を明確に求めている。第2次トランプ政権の新たな「国家防衛戦略」(NDS)を担当しているエルブリッジ・コルビー米国防次官が代表的な人物だ。コルビー次官は、在韓米軍の任務を北朝鮮の抑止ではなく中国牽制に切り替えるべきだとみて、在韓米軍の撤退や再配置の可能性を取り上げ続けてきた。ザビエル・ブランソン在韓米軍司令官も8日、京畿道平沢市(ピョンテクシ)のキャンプ・ハンフリーズで、韓国記者団と懇談会を開き、「在韓米軍に変化が必要だ。重要なのは数ではなく能力だ」と述べた。
政府は、韓国と在韓米軍の台湾海峡問題への介入は議論の対象ではないと一線を引いている。チョ・ヒョン外交部長官は18日、国会外交統一委員会の全体会議で「台湾に在韓米軍が介入する形になってはならず、韓米首脳会談で議論の対象になってはならないと思うが、そのように推進するのか」という質問に対し、「そのように進めている」と答えた。また「米国は台湾問題に関して韓国の関与を望んでいるのではないか」という質問には、「米国内の一部でそのような話が出ているのは事実だが、米国政府が政策として我々に通知したことはなく、我々が交渉に応じているわけではない」と話した。
会談が約1週間後に迫るとともに、米国は戦略的柔軟性をめぐる圧力を強めている。政府関係者は19日、ハンギョレに「米国は『同盟の現代化』の枠組みの中でインド太平洋戦略を練っており、韓国にそれに(参加するよう)圧力をかけている。中国をどう捉えるかについても米国と話し合っている」とし、「(ただし、在韓米軍の役割の再調整など)具体的な段階まで話を交わしているわけではない」と述べた。
政府は今回の会談で、戦略的柔軟性よりも国防費の引き上げを念頭に置いている。政府高官は14日、記者団に「在韓米軍の柔軟性が議題にあがる可能性」について、「北朝鮮がロシアと軍事同盟にまで進み、中国の場合も急速に発展し、力の投射が各所で行われている。西海(ソヘ)でさえも韓国との間で問題になりそうなことが出てきている」とし、「こういう時に、どのように韓国の防衛力を高め平和を守っていくのか、これを機に米国と協力し、韓国の国防力をアップグレードさせるのが良い機会だと思う」と語った。米国の求める「中国牽制」に一部呼応する一方、戦略的柔軟性より「国防費引き上げ」に焦点を合わせることで、韓米首脳会談でウィン-ウィン結果を導き出すということだ。
政府は、今回の共同宣言に在韓米軍の性質の変化のような急進的かつ具体的な内容は含まれることはないとみている。政府関係者は「首脳レベルの議論には原則的な内容が入るだろう」とし、「具体的に議論した内容は含まれないだろう」と予想した。チョ・ヒョン外交部長官も3日、米国からの帰路で記者団に「在韓米軍の性質の変化について韓米首脳会談でどこまで話し合うか、コンセンサスはあったのか」という質問に対し、「そこまで深く入り込んではいない。韓米連合態勢が重要であり、米軍が約70年間にわたり朝鮮半島の平和維持に貢献してきたことなどについて話したが、それ以上のことは実務レベルでさらに協議していくことにした」と答えた。
「戦略的柔軟性」が今回の首脳会談の共同宣言にどのような脈絡と表現で盛り込まれるかも関心を集めている。2006年にパン・ギムン外交部長官とコンドリーザ・ライス米国務長官が結んだ在韓米軍の戦略的柔軟性に関する共同宣言文には、「韓国は在韓米軍の戦略的柔軟性の必要性を尊重する」、「米国は戦略的柔軟性の履行において、韓国が韓国国民の意志と関係なく、北東アジア地域紛争に介入することはないという韓国の立場を尊重する」などの表現が盛り込まれた。また別の政府関係者は「(今回の首脳会談の共同宣言で)戦略的柔軟性が言及されるとしたら、どんな表現で盛り込まれるのか、なぜ今の時点で言及されるのかを説明することがカギとなるだろう」と語った。