本文に移動

イランと米国・イスラエルの「約束組手」、いつまで続くのか【コラム】

登録:2025-07-02 01:11 修正:2025-07-02 07:29
28日(現地時間)、イランの首都テヘランのエンゲラブ(革命)広場で、イスラエルによる空爆で死亡したイラン軍の指揮官と科学者の葬儀が行われている=テヘラン/UPI・聯合ニュース

 2020年1月8日未明、イラク内の米軍駐屯地「アイン・アル・アサド」と「アルビル」に、イランが発射した15発ほどのミサイルが落ちた。5日前に米軍のドローン(無人機)による攻撃でイランのイスラム革命防衛隊コッズ部隊のソレイマニ司令官が命を落とした事件に対する報復だった。「殉教者ソレイマニ」と名付けられたこの作戦は、イランの最高指導者ハメネイ師が最高安全保障委員会を訪ね、「米国に対して比例的で直接的な攻撃で報復せよ」と指示した翌日に行われた。しかし、この攻撃で米軍に死者は出なかった。攻撃の1時間ほど前、イランはイラクのアブドゥルマフディ首相に「報復作戦が開始された。標的は米軍が駐留する場所に限定した」と口頭で通告していた。米国は被害を減らすための対策を講じることができた。イランが攻撃したアイン・アル・アサド空軍基地とアルビルは相対的に米軍の密集地域ではなく、さらにアルビルには米国領事館があるものの、領事館そのものは狙わず、ミサイルを落としたのはそのそばだった。イランは、ソレイマニ殺害で激高した自国の世論をなだめつつ、米軍に実質的な被害はあまり及ぼさない攻撃のやり方を選んで戦争拡大を避けたと評された。いわゆる「約束組手」だとの解釈だ。

 4年後の昨年4月13~14日、イランはイスラエル本土に300機あまりのドローンとミサイルを発射した。同年4月1日、シリアのダマスカスにあるイラン領事館がイスラエルに空爆され、イラン革命防衛隊コッズ部隊の2人の高位指揮官を含む7人が殺害されたことに対する報復だった。ただし、イランが撃ったミサイルとドローンはほとんどが撃墜され、イスラエルに大きな被害を与えることはできなかった。イランのアブドラヒアン外相(当時)はテヘラン駐在の各国大使に「周辺国と米国に対し、空爆の72時間前に作戦の実行を通告した」と語った。当時、イスラエルに事前に備える時間を与えたと解釈された。同年4月19日、イスラエルはイランの核施設があるイスファハン州を空爆したが、イスファハン州の核施設そのものは攻撃しなかった。

 そして今年6月13日、イスラエルがイランの核施設を爆撃し、イラン軍の首脳部と科学者を暗殺したことで戦争が起きた。イランも数百のミサイルをイスラエルの実質的な首都テルアビブを含む大都市に向けて発射し、交戦は12日間続いた。イスラエルを支持する米国は、イランの核施設の要として知られるフォルドゥを先月21日にバンカーバスター爆弾で攻撃した。だが、フォルドゥの核施設がこの爆撃で使用不能になったわけではないという米メディアの報道が相次いだ。2日後の23日、イランはカタールのアルウデイド米軍基地をミサイルで攻撃したが、米国のトランプ大統領はSNS「トゥルス・ソーシャル」に「事前通告のおかげで人命被害はまったくなく、誰もけがをしなかった」と記した。24日、イランとイスラエルは休戦した。

 イランとイスラエル、そして米国は、互いに面子を少々立ててやるというやり方で紛争の拡大を避けてきた。「約束組手」をある程度繰り返してきたと考えられる。

 しかし見逃してはならないのは、彼らが一線を越え続けてきたことだ。2020年のイランによる米軍基地に対する報復攻撃は、1979年のイスラム革命で誕生したイラン・イスラム共和国の政府が自国の正規軍の戦力を用いて米軍を直接攻撃した初の事件だった。昨年のイランによるイスラエル本土の直接攻撃も、1979年のイラン・イスラム共和国成立後、初だ。イランとイスラエルは、昨年の事件までは、いわゆる「影の戦争」を繰り広げてきた。イランはヒズボラやハマスなどの代理勢力を通じてイスラエルを攻撃し、イスラエルは要人暗殺や主要施設の破壊のようなやり方でイランを攻撃しはするものの、互いに大っぴらに直接攻撃はしてこなかった。しかし、昨年は直接交戦という一線を越え、今年は12日間の交戦でイランでは900人以上、イスラエルでは20人以上が死亡したと推定される。今回も約束組手だったことで当面は緊張が落ち着くとしても、事態を楽観できない理由はここにある。

 中東の炎は、朝鮮半島を含む世界のその他の国々にとっても他人事ではない。核開発が完了する前に首都と主な核施設を攻撃されたイランを見て各国が何を考えているのかを思うと、背筋が寒くなる。

//ハンギョレ新聞社

チョ・ギウォン|国際部長 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1205578.html韓国語原文入力:2025-07-01 07:00
訳D.K

関連記事