HD現代とハンファオーシャンの最高経営者らが、米通商代表部(USTR)のジェミソン・グリア代表と直接会い、造船業協力案について話し合った。両社は面談で、米国の造船業再建に貢献できる案を提示した。米国造船所への投資および技術・人材共有、米軍艦の維持・補修・整備(MRO)と新しい軍艦建造などが協力案に挙げられる。韓米関税交渉のテコになるかが注目される。
HD現代のチョン・ギソン首席副会長とハンファオーシャンのキム・ヒチョル代表取締役は16日、済州(チェジュ)で開かれたアジア太平洋経済協力会議(APEC)の通商長官会議で、グリア代表と非公開で面談を行った。面談は米国側の要請で行われ、午前はHD現代、午後はハンファオーシャンとの相次ぐ会合が実現した。
両企業はグリア代表に米国造船業の再建に協力できる案を提示した。チョン副会長は面談で「HD現代は米国の造船産業再建の意志と努力を高く評価する」として「そのためのすべての準備ができており、必要な役割があれば喜んで参加する」と述べたという。
HD現代は船舶建造協力、共同技術開発、技術人材養成などを提案した。現在、米国には造船所が21カ所しかなく、造船業関連の協力会社、専門人材の供給網も全て崩れている。このため、同盟国の造船会社の支援と現地投資が切実に必要な状態だ。
HD現代は先月、米国最大の防衛産業造船会社であるハンティントン・インガルスと了解覚書(MOU)を交わし、技術協力はもちろん、生産人材の教育にも協力することにした。グリア代表との面談でこのような事例を強調し、十分な協力が可能であることを強調したとみられる。また、船舶建造協力に関してはHD現代がすでに2月に米海軍第7艦隊が発注した軍需支援艦MROの獲得に挑戦している状態であり、新しい軍艦の建造能力も備えているという事実を米国側に伝えたものと推測される。
チョン副会長は同日、港湾クレーン協力も提示した。USTRは、中国製の船舶だけでなく、中国製の港湾装備に対する手数料賦課も推進している。HD現代が中国製の港湾装備の牽制に役立つことを強調したものと読み取れる。
ハンファオーシャンとグリア代表との午後の面談の議題もやはり「造船業再建」だった。キム代表理事は面談で「ハンファオーシャンは技術移転と生産基盤構築を越え、米国の造船産業の再跳躍を共に実現していく戦略的パートナーになろうと思う」として「検証された技術とスマート生産システムを基盤に、米国現地でも実質的な協力成果を作っていく」と明らかにしたという。
ハンファオーシャンもグリア代表に現在進行中の事業を説明し、さらなる協力が可能であることを強調した。ハンファオーシャンは昨年から積極的に米国進出を進めてきた。昨年、米国のフィリー造船所を直接買収しており、今年に入っては米国の造船所を保有するオーストラリアの造船会社の持分買い取りも進めている。米軍艦MROもすでに受注を獲得している。昨年、日本の横須賀海軍基地が母港である米海軍第7艦隊の軍需支援艦と給油艦など2件のMRO受注を獲得し、軍需支援艦は3月に整備を終えて米海軍に引き渡した。
ハンファオーシャン側は「当社は現在、米国との造船協力に最も先行し、実質的な成果もあげている」として「キム・ヒチョル代表理事が(面談の席で)米国内の造船生産基盤拡大と技術移転方向を中心に、サプライチェーンの安定と産業競争力強化のためのハンファオーシャンの戦略を説明した」と明らかにした。
現在米国には、自国の建造船舶だけが米国内の港を行き来できる法(ジョーンズ法)と、軍艦の建造と修理は米国の造船所だけで実施しなければならないと定めた法(バーンズ-トリプソン法)がある。しかし例外条項を適用して韓国で建造された液化天然ガス(LNG)船などを購入し、軍艦のMROと新規軍艦建造なども韓国の造船所に任せる可能性があると把握される。今月初めに米議会に再発議された「船舶法」は、米国の商船数を250隻に増やすプログラムに同盟国で建造した商船も参加できるよう明示しており、現行の「バーンズ-トリプソン法」は海外根拠地の艦艇、沿岸戦闘艦には外国の造船所でも軍艦MROが可能とするよう例外が設けられている。大統領の例外承認があれば、新規軍艦も外国の造船所での建造が可能な状況だ。