「プロンプトエンジニアという職業は、わずか2年で役に立たない職業に転落した」
人工知能(AI)の飛躍的な発展が、米国の求職市場を瞬く間に再編成している。特に技術職の名称は毎日のように新たに登場しており、これに見合う能力を備えることはますます難しくなっている。過去とは違い、肩書にもなじみがなく要求レベルも高まっていることで、求職者の混乱はますます大きくなっている。
ほんの1~2年前まではAI技術の重要人材として脚光を浴びていた「プロンプトエンジニア」が代表的な事例だ。2023年には年収20万ドル(約2900万円)に達し、技術業界の注目株として注目されていたが、AIモデルの高度化と企業に組み込まれたAIの能力によって、この職業は2025年時点では事実上、消滅の段階に入っている。
実際、マイクロソフトが31カ国の約3万人の労働者を対象に調査した結果でも、プロンプトエンジニアは今後、採用の見込みとしては最下位になった。一方、AIトレーナーやAIセキュリティー専門家、データ専門家など、より専門的で実質的な職務が新たに重要人材として浮上している。
肩書の量的増加はよりいっそう明確だ。「AI」「データ」「機械学習」に「エンジニア」「アーキテクト」「デザイナー」などの肩書が結合している。職業の名前を見ただけでは、実際の役割と責任は分かりにくい。ビジネス特化型SNS企業「LinkedIn」の調査によると、過去1年間に新たに職業に就いた米国人の20%が、2000年には存在さえしていなかった職種に従事している。当然の流れだが、その速度が産業の受け入れ可能な範囲を超えるほどである点が問題だ。
このような変化の陰は、社会に第一歩を踏み出すZ世代(1990年代半ばから2010年代初めに生まれた世代)がまるごと抱え込んでいる。特に技術分野に挑戦する米国の大卒者は、減少する初級採用と生成AIを好む企業環境の中で行き場を失っている。「われわれのライバルは、人間ではなくAI」だという自嘲も出てきている。
米国の就職プラットフォーム「ハンドシェイク」の調査によると、AIツールを使い慣れている大学卒業予定者のうち、62%がAIの登場のために自身の就職の見通しに懸念を示した。特にコンピュータ科学の専攻者は、28%が現在の経済状況下におけるキャリア開始について「非常に悲観的」だと答えた。これは昨年の18%から10ポイント増加した数値だ。
技術発展の急流のなかでZ世代は、職業観を根本的に再定義している。米国の公式学術情報機関である国立学生情報センターによると、2020年以降、4年制大学の入学率は停滞しているが、職業中心のコミュニティカレッジの学生数は約16%増加した。特に注目すべき点は、技術・サービス仲介のプラットフォーム「thumbtack」の報告書結果で、Z世代の55%が技能職への就職を考えていることだ。
このような職業観の転換の背景には、経済的な現実がある。学費ローンの負担と学位の価値に対する懐疑が、若い世代を実用的な道に導いているのだ。AI時代の職業の安定性も、技能職を志向する中心的な要因となっている。事務職がAIに代替される可能性が高まるなか、手と現場の経験が必要な技能職は、むしろその価値を認められている。米国内で溶接工が40万人不足しているという統計は、このような需要を如実に示している。
米国で静かに広がっている「技能職ルネサンス」は、韓国の教育と労働の未来を再構成する重大な転換点になる可能性がある。「大学だけが正解」という固定観念から脱し、多種多様な形態の専門性と実務の熟練度を認める認識の変化が急がれる。いまこそ、政策立案者と教育機関も同様にこのような新しい流れを正確に認知し、さまざまな経路の職業教育に同等の価値を与えるシステムを構築しなければならないときだ。
クォン・スンウ|シリコンバレー革新メディア「ザ・ミルク」サザンプラネット長 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )