第21代大韓民国大統領を選出する6月3日の大統領選挙が23日後に迫っています。5月29日と30日に行われる事前投票までは、あとわずか18日です。
誰が当選するでしょうか。野党「共に民主党」のイ・ジェミョン候補が当選すると思われます。イ・ジェミョン候補が6月4日、国会議事堂で大韓民国の第21代大統領に就任することになるでしょう。
天地開闢ほどの変事がない限り、結果は変わらないと思います。筆者がこのように言い切れる根拠は二つです。一つ目は世論調査の推移です。二つ目は与党「国民の力」の自滅です。
世論調査の推移から見てみましょう。5月8日に発表された全国指標調査によると、次期大統領の適合度はイ・ジェミョン候補43%、(当時無所属の)ハン・ドクス候補23%、(国民の力の)キム・ムンス候補12%、(改革新党の)イ・ジュンソク候補5%でした(中央選挙世論調査審議委ホームページ参照)。
適合度そのものよりは流れが重要です。イ・ジェミョン候補は、3月第1週の29%から持続的な上昇傾向にあります。その間に「(支持する候補が)いない/わからない/無回答」は34%から15%まで減りました。「いない/わからない/無回答」がイ・ジェミョン候補へと少しずつながらも、着実に移動したのです。このように積み重ねられた支持率は崩れません。
与党「国民の力」の候補一本化の失敗や候補交代の失敗騒動の波紋は、深く広範囲に広がっています。国民の力に最も好意的な「朝鮮日報」でさえ5月10日付の紙面に「あれほどの醜態をさらした後に一本化したところで」という見出しの社説を掲載したほどです。国民の力の自滅の反射利益はほとんどがイ・ジェミョン候補に及ぶでしょう。
では、イ・ジェミョン候補は今から何をすべきでしょうか。イ・ジェミョン候補は候補登録初日の10日、慶尚南道の昌寧(チャンニョン)、咸安(ハマン)、宜寧(ウィリョン)、晋州(チンジュ)、泗川(サチョン)、南海(ナムヘ)、河東(ハドン)を訪問しました。11日には全羅南道の和順(ファスン)、康津(カンジン)、海南(ヘナム)、霊岩(ヨンアム)を訪れました。12日にはソウル光化門(クァンファムン)広場で公式選挙運動を始めます。ところで、これから昼夜を問わず選挙運動を行うだけでいいのでしょうか。そんなはずはありません。
「東亜日報」が5月9日付の5面に「国民の力の内紛の中、イ候補が政権獲得時に備えた人選に着手」、「教授を最小化し官僚・政治家を重用する方針」という見出しの記事を載せました。しかし、民主党の選挙対策委員会の公報団は、「イ・ジェミョン候補が内閣と大統領室の構成準備に着手し、側近に政権獲得時の人事に関する指針を下したという報道は事実ではありません」という報道資料を出しました。
「東亜日報」は5月10日付の5面に「イ候補、省庁別長官候補10人余りの推薦を受け…『女性長官40%目指す』」という見出しの記事を載せました。しかし民主党の選対委公報団は「イ・ジェミョン候補がシャドーキャビネット(影の内閣)の構成準備に着手し、省庁別に長官候補群の推薦を受けたという報道は事実ではありません。報道に深い遺憾を表し、該当の報道機関に訂正報道を要請します」という資料を出しました。
民主党としては「東亜日報」の報道を否定せざるを得なかったはずです。選挙運動が始まってもいないのに人事に取り組むと、「捕らぬ狸の皮算用」という批判を受ける恐れがあるからです。
しかし、イ・ジェミョン候補が新政権で共に働く人たちを探しているのは事実です。その痕跡があちこちで見られます。むしろ探していない方がおかしいかもしれません。
今回の大統領選挙は欠位の大統領選挙です。政権の引き継ぎ期間がありません。選挙の翌日から、大統領の業務を始めなければなりません。当然、大統領室参謀、首相、国家情報院長などの要職はあらかじめ準備しなければなりません。問題は人事の内容です。
イ・ジェミョン候補は果たして人事をうまく進めることができるでしょうか。イ・ジェミョン候補は韓国社会のいわゆる「メインストリーム(主流)」とは程遠い人物です。人脈がそう広くありません。大統領が知らない人を要職に起用するのは難しいことです。
最初の人事が政権の最初のヤマ場です。うまくいけば感動を与えることもできますが、うまくいかなかった場合は、就任当初から大統領の支持率が揺らぎかねません。
イ・ジェミョン候補の人事スタイルが垣間見られる場面がありました。4月27日、京畿道のキンテックスで開かれた首都圏・江原(カンウォン)・済州(チェジュ)合同演説会の現場で、筆者はイ・ジェミョン候補の演説の中で次の内容が大変興味深いと思いました。
「同じ城南市(ソンナムシ)の公務員、同じ京畿道の公職者たちが、イ・ジェミョンと一緒に仕事をして、以前とは全く違う結果を作り出しました。私、イ・ジェミョンにチャンスを与えてくだされば、100万の公職者と共に全く新しい大韓民国、真の大韓民国をお見せします」
いかがですか。イ・ジェミョン候補は2022年の大統領選挙で敗北し、国会議員になる前は政治家よりも行政家に近い人でした。その後、国会議員として議政経験を積み、民主党代表として政治経験を積みましたが、今でもイ・ジェミョン候補のリーダーシップは政治家よりも行政家に近いのです。
だからこそ、心配です。官僚出身者は素晴らしい人的資源です。大半が公人としての意識と道徳性を備えており、国政実務に詳しいものです。
しかし、重要な決定を回避し、責任も回避する致命的な欠点があります。歴代政権の中枢にいた人々に尋ねると、「官僚に仕事を任せれば全てがうまくいっているように見えるが、時間が経てば何も実現していなかった」と言います。イ・ジェミョン候補もまさにこの落とし穴に陥る危険性があります。
どうすべきでしょうか。歴代大統領も最初の人事に苦心しました。イ・ジェミョン代表が参考になるような正面教師もいれば、反面教師もいます。
盧泰愚(ノ・テウ)大統領は「和合型」の人事を行いました。秘書室長には黄海道出身で、朴正煕(パク・チョンヒ)大統領の政務首席、内務部長官、保健社会部(現在の保健福祉部)長官を務めたホン・ソンチョル氏を任命しました。個人的なかかわりがあったわけではありませんが、評判を聞いて抜擢しました。首相はイ・ヒョンジェ前ソウル大学総長でした。
金泳三(キム・ヨンサム)大統領は「変化と改革」を基準にしました。「過去の政権に奉仕した人と軍出身者は排除する」と宣言しました。首相には全羅道出身のファン・インソン議員、監査院長にはイ・フェチャン最高裁判事を任命しました。改革派の教授出身を大勢抜擢しました。ハン・ワンサン副首相兼統一院長官、ハン・スンジュ外務部長官、オ・ビョンムン教育部長官、キム・ドク安全企画部部長などです。
史上初めて政権交代に成功した金大中(キム・テジュン)大統領は、秘書室長に慶尚北道出身で盧泰愚大統領の政務首席を務めたキム・ジュングォン氏を任命しました。安企部長はイ・ジョンチャン元議員でした。国民統合と専門性を考慮した人事でした。長官は民主党系の「新政治国民会議」所属と保守系の「自由民主連合」所属で分担しました。国民会議と自民連の共同政府だったからです。金融監督委員長には経済専門家のイ・ホンジェ氏を抜擢しました。
盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領は金泳三政権最後の首相だった「行政の達人」コ・ゴン氏を起用しました。安定感を重視したのです。しかし、他の多くのポストには型破りの抜擢をしました。コ・ヨング国家情報院長、カン・グムシル法務部長官、イ・チャンドン文化観光部長官、キム・ドゥグァン行政自治部長官、ユン・ヨングァン外交部長官がそのようなケースでした。
イ・ジェミョン候補の最初の人事はいかなるものになるでしょうか。まず注目を集めるポストは秘書室長、政策室長、安保室長など大統領室の最側近参謀たちです。何事にも自ら取り組むイ・ジェミョン候補のリーダーシップのため、長官よりは大統領室参謀たちが権力を行使する可能性が高いからです。大統領室の参謀は現職の国会議員にはできないポストです。
民主党のユン・ヨジュン常任総括選挙対策委員長は、2011年に『大統領の資格-ステートクラフト』という本を書きました。今年の2月に改訂増補版が公開された同書には、大統領の人事に関してこのような内容があります。
「官僚を監視・統制・牽制すべき当事者である政治指導者が、むしろ彼らに引きずり込まれ、また経済主体間の公正な審判官の役割を果たすべき政府の指導部と官僚がむしろ大企業のフレームに閉じ込められる結果がもたらされている」
「偉大な業績を残した指導者たちは人を救うことに力を入れており、さらには自分のライバルまでも自分の側にして活用した」
「特定の目的を達成するための一般的な組織とは異なり、国家は包括的な目的あるいは存在そのもののためのものであるという点で、公権力という強制力を伴うという根本的な違いがある。そのような点で、小規模集団の経験が大規模集団にもそのまま通じるという単純な考えを持ち、国家の公共性を十分に理解できず、一般的な管理能力で十分だと考える指導者を国政の責任者に選出することは、危険な選択と言わざるを得ない」
イ・ジェミョン候補が肝に銘じなければならない内容です。
まとめます。イ・ジェミョン候補は、大統領に当選したら、内乱終息と国民統合という二兎を追うことになります。大変難しい課題です。民主党の内外には、文在寅(ムン・ジェイン)政権で国政経験を豊富に積んだ政治家や官僚出身がたくさんいます。彼らを積極的に活用しなければなりません。
なるべく「親イ・ジェミョン派」ではなく「非イ・ジェミョン派」の人物を起用しなければなりません。「非イ・ジェミョン派の起用でむしろ得した」と言われるほど破格の人事をすべきです。そうしてこそ、国民に感動を与え、任期序盤の国政の動力を確保することができます。 イ・ジェミョン候補は果たしてそれができるでしょうか。皆さんはどう思われますか。