ホワイトハウスが日本と韓国を関税交渉の優先対象としたことで、韓国政府の対応基調が試されている。専門家は、米国の意図を把握して効果的に対応するにしても、大統領権限代行体制が経済に長期的に深刻な影響を及ぼしうる合意をしてはならない、との立場を表明している。
ホワイトハウス国家経済会議のケビン・ハセット委員長は8日(現地時間)、多くの国が交渉を要請しているため対応が難しいが、「トランプ大統領は最も近い同盟国であり貿易のパートナーである日本と韓国を明確に優先視している」として、韓国を「優先交渉対象国」に挙げた。同氏は、韓日は「テーブルに本当に多くの譲歩」を載せたとも述べた。韓日はかなりの対米貿易黒字をあげており、米国に順応してきたうえ、米軍駐留で安保面でも米国の影響力が強いという共通点がある。
これについて、慶熙大学のパク・ポギョン教授(経済学)は、「同盟国に優先権を与えるというよりは、韓日がより与しやすい交渉パートナーであるため、最初に名指しされたのだろう」と述べた。韓国貿易協会国際貿易通商研究院のチャン・サンシク院長は、「同盟国を配慮していることを見せようという意図もあり、中国が米国に報復する中で同盟国を相手にまず成果をあげようという戦略的性格もあるようにみえる」と語った。
最初に米国との交渉を行なえば、相互関税の負担が早期に軽減される可能性もある一方、トランプ大統領が多くの譲歩を引き出してその他の国々を圧迫するのに利用するだろうという分析もある。大邱大学のキム・ヤンヒ教授(経済学)は、「韓国と最も似た状況にある日本がどのようにやっていくのかを見てからでも遅くないと思っていたが、韓日を共に初期交渉の対象にしたことに深刻な懸念が生じている」と述べた。
こうした中、ハン・ドクス大統領権限代行はCNNのインタビューで、中国の対米報復関税について、「あのような反撃が状況を劇的に改善するとは思わない」と述べ、米国と積極的に交渉する考えを示した。しかし、米国は長期プロジェクトや立法事項をめぐっても参加や譲歩を要求しつつ、高い期待値を示している。例えば、米国が参加を要求しているアラスカの液化天然ガス(LNG)開発事業は、事業費が莫大なうえ、10年以上かかる長期プロジェクトだ。米国のスコット・ベッセント財務長官はこの日、CNBCのインタビューで、「アラスカの石油とガスの開発事業は韓国、日本、台湾との関税交渉で代案として使える」と語った。パイプラインの設置などLNG事業に参加して金を出せば、関税交渉で酌量しうると直説的に述べたのだ。
専門家らは、大統領代行体制が韓国経済や次期政権にとって大きく長期的な負担となる約束をしてはならないと主張する。「代行政府」は、短期に終わらせることを狙うトランプによって仕組まれた状況に引きずり込まれることなく、韓国のリーダーシップが確立されてから本格的な交渉にあたれるよう、時間を稼ぐべきだということだ。現在の状況は1997年の通貨危機や2008年の金融危機のような「流動性危機」ではないということも、代行政府が追われるように交渉に飛び込む理由はないと主張される背景だ。
パク・ポギョン教授は「LNG開発事業のようなものを代行体制で約束することは望ましくない」として、「事業性を十分に検討しなければならず、いま軽率に判断してはならない」と述べた。キム・ヤンヒ教授も「過度に恐怖を抱く必要はないし、あわてて最初に駆けつける必要もない」と語った。
パク教授は「大統領選挙の日程を念頭に置いて交渉に応じるというメッセージは明確に発するとして、具体的な約束については時間を稼いでおくべきだ」と述べた。また、「トランプの面子を立てることがもっとも重要だ」として、現代自動車の大規模投資やLNG購入などを、形を整え直して改めて成果として掲げるべきだと提案した。キム教授は、今後は企業が個別にあたるのではなく、「すべてのカードをできる限りまとめた」交渉案を立案すべきだと語った。