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「ダブルスタンダード」に基づく米国の相互関税…米黒字の「サービス貿易」は除外

登録:2025-04-09 06:16 修正:2025-04-09 16:28
ドナルド・トランプ米大統領/聯合ニュース

 米国の相互関税が恣意的な基準で賦課されたという事実が次々と明らかになっている。 その中の一つは米国が相互関税の税率を算定する際、自国が黒字を記録している「サービス貿易」は除外してしまった点だ。グーグルやメタ、ネットフリックスのような主要ビッグテック企業などを通じて稼いだ収益は、相互関税率算定の際に算入しなかったという意味だ。

 米国は貿易収支を算出する際、商品とサービスの輸出入を同時に考慮する。しかし、相互関税税率を決める際は、商品貿易だけが反映された。米国は昨年、韓国との貿易でも商品分野では662億ドルの赤字を出したが、サービス分野では107億ドルの黒字を出した。相互関税税率を算定する際、サービス貿易が含まれていれば、韓国の関税率は25%ではなく19%になることが分かった。

米国の貿易収支 //ハンギョレ新聞社

■米国、ほとんどの国に対し「サービス貿易」では黒字

 米商務省が7日に発表した資料によると、米国の昨年の総貿易収支(輸出額-輸入額)は9178億ドルの赤字だ。しかし、商品とサービス貿易の分野では様相が異なる。米国は商品輸出入分野では1兆2130億ドルの赤字を出したが、サービス輸出入分野では2952億ドルの黒字を出した。商品交易側の赤字規模が大きいため、全体の貿易収支も赤字を記録した。

 米国はサービス産業大国だ。商品とは異なり、サービス貿易分野では韓国はもちろん、ほとんどの国に対し黒字を出している。米国は昨年、中国(-2952億ドル)、欧州連合(EU、-2367億ドル)、カナダ(-706億ドル)などで商品貿易では大きな赤字を出したが、サービス貿易ではこれらの国に対しいずれも黒字を出した。中国に対し318億ドル、EUに対し756億ドル、カナダに対し349億ドルの黒字を記録した。

 米国企業のグーグル、アップル、マイクロソフト、メタ、ネットフリックスなどが全世界で稼ぐサブスクライブの料金、手数料、広告収入、著作権使用料などは全てサービス貿易に当たる。ゴールドマンサックスなど米国の金融会社が国外支店でおさめる収益もサービス貿易だ。さらに米国観光、米国留学などもサービス貿易として集計される。

 今月2日(現地時間)に発表された米国の相互関税には、このようなサービス貿易黒字は反映されていない。米通商代表部(USTR)がホームページに公開した計算式によると、相互関税率は交易国に対する貿易収支を輸入額(交易国の輸出額)で割った値に100をかけた後、それを「半分」にした数値。この際「貿易収支」と「輸入額」には商品輸出入だけが反映された。韓国銀行関係者はハンギョレに「米国の貿易収支は商品とサービスを共に集計するが、相互関税計算式には自国に有利な商品輸出入だけを反映したものとみられる」と語った。

 米国が相互関税の税率を決める際、サービスまで含めた全体貿易収支を反映したとすれば、各国の関税率は今より低くなる。ハンギョレが分析した結果、韓国の相互関税率も25%から19%に下がる。

2024年 各国に対する米国の商品収支(単位:億ドル)//ハンギョレ新聞社

■各国、米国のサービス分野に報復するか

 サービス貿易は実物のない輸出入であるため、関税を賦課するのは難しい。米国が相互関税計算の際、これを考慮した可能性はある。しかし、トランプ大統領は相互関税率を決める際、各国のプラットフォーム規制など非関税障壁を反映すると述べた。サービス貿易に触れたにもかかわらず、商品交易だけを計算式に反映したのはつじつまが合わない措置だ。一例として、米政府はネットフリックスなど米国のオンライン動画サービス(OTT)企業のネットワーク使用料(接続使用料)問題を非関税障壁の一つに挙げたが、韓国政府がこれを受け入れても相互関税率は低くならない。ネットワーク使用料はサービス貿易に当たるからだ。

 米国の恣意的な相互関税率は、ブーメランとなって米国に返ってくる可能性がある。米国の主張どおりなら、サービス貿易赤字に苦しんでいる世界各国が米国に対して同じように相互関税を課すことができるためだ。英紙「エコノミスト」は5日、「米国のサービス貿易黒字に同じ方法論(米国の相互関税計算式)を適用すれば、(米国に向けて)各国は平均19%の相互関税を課すことができる」と指摘した。エコノミストの提起した方法でハンギョレが計算した結果、韓国も米国サービス貿易黒字と関連して20%の相互関税を賦課することができる。

 もちろん、サービス貿易は関税賦課が事実上不可能であるため、現実では米国企業に向けた規制強化などの報復措置を各国取りうる。米メディア「ポリティコ」は「EUがグーグル、JPモルガンなど米国サービス部門を標的とする報復カードをちらつかせている」と報道した。米国企業に向けたデジタル税の賦課、事業制限などの措置が取り上げられている。

チョン・スルギ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/economy/economy_general/1191226.html韓国語原文入力:2025-04-08 14:04
訳H.J

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