尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領が裁判所と検察の決定によって拘置所から釈放され、国家的混乱が深まっている。尹大統領が非拘束状態で政治的影響力を行使することに対する恐れと、尹大統領の釈放が憲法裁判所の弾劾審判にも影響を及ぼすのではないかという不安が広がっている。逆に尹大統領の支持層は釈放に鼓舞され、「弾劾棄却」の声を強めている。このような時こそ、憲法裁は揺らぐことなく尹大統領の弾劾審判を終え、速やかに罷免を言い渡すべきだ。
憲法裁は先月25日に尹大統領の弾劾審判の弁論を終えた後、14日目となる今月11日にも、判決言い渡し期日を明らかにしなかった。盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領の弁論終結の14日後、朴槿恵(パク・クネ)大統領の11日後を超え、最長の熟考期間を取っている。判決が遅れている間に、社会的な緊張と不安は高まっている。弾劾賛成派も反対派も、憲法裁の周囲でそれぞれ徹夜集会をおこなっている。尹大統領の支持者は、マクロプログラムを用いて憲法裁のウェブサイトの掲示板に数十万件の弾劾反対意見を書き込んでいる。政界も非常に緊張している。野党「共に民主党」のパク・スヒョン議員らは11日、尹大統領の拘束を求めてソウル光化門(クァンファムン)の近くで断食座り込みに突入した。与党「国民の力」はこの日、党レベルで場外集会には参加しないことを決めたが、ユン・サンヒョン議員らは「弾劾棄却」を要求して憲法裁前で24時間リレーデモを開始した。
憲法裁の判決が遅れれば遅れるほど、このような対決と混乱は深まり、広場の嫌悪と暴力的感情が社会全般へと拡散する恐れがある。弾劾に抵抗する尹大統領に合わせて支持者の凝集力も高まり、対立は8年前の朴槿恵大統領の弾劾の際よりはるかに強まると懸念する人は多い。
尹大統領は、拘束期間の計算ミスと捜査権問題で拘束が取り消された。しかし、これは刑事裁判とは別個の弾劾審判には影響を及ぼさない。尹大統領側は、検察の調書の証拠採用問題などに難癖をつけている。しかし、弾劾審判と刑事裁判は性格がまったく異なる。弾劾審判は、憲法や法律に違反した高位公務員を罷免するために、刑事手続きとは別に憲法が特別に定めている憲法裁判だ。すでに2017年の朴槿恵弾劾審判で確立された原則に則って進められている。憲法裁も「裁判所が判断すること」だと反論して論理を組み立ててきただけに、特にこれ以上時間をかける理由はない。憲法裁はひたすら尹大統領の12・3非常戒厳がどれほど重大な憲法違反、法律違反なのかという観点から判断し、遅滞なく罷免を言い渡すべきだ。