尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領側は弾劾審判などで北朝鮮と中国を非常戒厳の背景のひとつに掲げ、非難しているが、非常戒厳を謀議していたノ・サンウォン元情報司令官の手帳には中国を研究するとか、北朝鮮と取り引きするといった内容が記されていた。
ハンギョレが14日に入手したノ元司令官の70ページの手帳には、非常戒厳後の3選改憲、国会議員定数の50%削減などの計画と共に、「中国とロシアの選挙制度の研究」を行うとする内容が登場する。中国の選挙制度を研究し、権力を長期間維持する方策を研究するという趣旨だと解釈される。また、いわゆる回収対象者の射殺計画については、「中国の用役業者」を活用するという方法も記されている。
北朝鮮との取引にも言及している。手帳には、前線地域で北朝鮮を利用した「回収対象者」射殺計画に言及しつつ、「北朝鮮との接触方法」、「非公式方法」、「何を提供するのか、接触時の保安対策は」などの文言が記されていた。北朝鮮と取引して回収対象者を射殺するとの趣旨であると解釈される。
これは、尹大統領のこれまでの行動と相反する。尹大統領側はこれまで、非常戒厳の背景には中国や北朝鮮、スパイや従北(北朝鮮に追従する)勢力などの存在があると主張してきた。先月16日の弾劾審判では、尹大統領の代理人団のペ・ジンハン弁護士が「不法選挙は、実は中国と大きく関連していると考える」とも主張している。今回の非常戒厳の背景となった「不正選挙疑惑」には中国が関与しているということだ。
このような主張は、その後も保たれている。今月11日の尹大統領の弾劾審判で、被請求人の代理人は証人として出廷したシン・ウォンシク大統領室安保室長に、「(中国は)他国の選挙に介入する政治工作、フェイクニュースや虚偽情報の拡散を通じて他国に危害を加える認知戦、世論戦、情報通信技術を用いたサイバー戦などの戦法を総合して多用していると認識していますよね」と質問している。
また同日、尹大統領側の代理人はシン室長に、「いま韓国が直面している現実は、中国や北朝鮮から様々に脅かされているが、これまでアカ批判や野党批判、いわゆる進歩陣営批判とされて、そのような問題を提起すると、根拠がないかのように国民に受け取られる」とも述べている。
尹大統領の北朝鮮に対する認識は、昨年12月3日の非常戒厳談話にはっきりと表れている。尹大統領は非常戒厳を宣布した際、「北朝鮮共産勢力の脅威から自由大韓民国を守り、韓国国民の自由と幸福を略奪している破廉恥な従北反国家勢力を一挙に清算するとともに、自由憲政秩序を守るために、非常戒厳を宣布」すると述べている。
だが、肝心の非常戒厳の「企画者」とされる人物の手帳には、中国を学んだり利用したり、北朝鮮と交渉したりといった内容が記されていたということだ。