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「21世紀の核兵器」AI、米中新冷戦の最前線に(2)

登録:2025-01-23 07:02 修正:2025-01-24 11:25
上海の長江ロボットバレーで産業用ロボットが展示されている=パク・ミンヒ先任記者//ハンギョレ新聞社

(1のつづき)

 専門家たちは、人工知能(AI)とロボット技術が発達するほど世界の経済・技術・安全保障分野で米国と中国が圧倒的に有利になり、他の国々が後れを取る構図が固着化すると予想する。米国と中国だけが独自のプラットフォームとクラウドを通じて、AI開発に必要な天文学的な規模のデータを集めることができる。

 米国と中国が決して(AI開発競争で)引き下がれない理由は、AIが21世紀の覇権競争を左右する軍事力競争につながるためだ。昨年12月、韓国の成均中国研究所の主催で開かれた学術会議「転換時代の中国と未来」で、復旦大学の趙明昊教授は米中競争のキーワードとして「技術の地政学」(geo-technology)を強調した。技術の地政学とはAIやロボットなどの技術的要素が国家の安全保障戦略に占める比重がますます大きくなっているという概念だ。第一に、AIなどの技術水準は国家の経済力と軍事力に決定的な影響を及ぼす。第二に、先端技術企業が大国間の戦略的競争に及ぼす影響力がますます大きくなっている。中国の華為技術(ファーウェイ)、米国のグーグル、テスラ、パランティアのような技術企業は、米中の地政学的競争に影響を及ぼす主なアクターとして登場し、経済、軍事力、雇用、労働の意味、大国間競争の構図を変えつつある。第三に、技術を中心とした同盟や陣営構築が大国の競争の焦点になっていると趙教授は強調した。米国が中国を牽制するために結成したQUAD(クアッド・米日豪印)やAUKUS(オーカス、米英豪)などは軍事同盟の役割だけでなく、軍事的応用の可能性のある技術を共に開発し共有するという点が重要だ。

 米国と中国いずれも、相手にAIの優位を奪われれば軍事、安全保障、経済のいずれの分野でも負けてしまうという切迫感と焦りを募らせている。特に軍事分野が焦点となっている。米国議会の諮問機関である米中経済・安全保障調査委員会(USCC)は昨年11月の報告書で、「中国がAIに力を入れるのは、経済的な目的だけでなく、自律型致死兵器、データ処理、意思決定、認知戦など軍事的応用のため」だとし、人間を凌駕する汎用AI(AGI)の開発を巡る中国との競争で勝利するために、米国は国家的に「マンハッタン計画」に匹敵する事業を始めなければならないと提案した。1940年代に米国がドイツ、ソ連と競争しながら莫大な費用と人材を投入して核兵器を開発した「マンハッタン計画」のように、21世紀には人間の能力を跳び越えるAGIの開発が核兵器開発競争と同じだという意味だ。「21世紀の核兵器」であるAI技術で先頭を走ろうとする米中の競争はますます激しくならざるをえない。米国と中国は総力戦体制だが、米国は企業が、中国は国家が主導権を持つことがどのような違いを作り出すかも注目に値する。

上海の長江ロボットバレーの入口に書かれている習近平主席の言葉。「ロボットは製造業の皇冠の最も高いところにある真珠であり、その研究開発、製造は一国の科学技術の創新と先端製造業の水準を計る重要な指標だ」=パク・ミンヒ先任記者//ハンギョレ新聞社

 すでにウクライナ戦争ではドローンとAIが主要な役割を果たしている。21世紀の戦争は、誰がより強力な性能のAIを使ったロボット、ドローン、自律型致死兵器システム、情報通信を運営するかによって勝敗が決まるだろう。20世紀の地政学的競争で核兵器が重要な役割をしたように、21世紀の戦争と地政学競争でAIが決定的な武器になる。結局、いずれは人類の共倒れを防ぐためにAIの軍事的利用を制御する「AI版・核兵器不拡散条約(NPT)」が出てくるだろうと専門家らは予想する。1968年にNPTが国連総会で採択される際、すでに核兵器を開発していた米国、ロシア、中国、フランス、英国だけに核保有国の既得権を認めたように、「AI版NPT」が締結されれば、その時点までに高性能の軍事AI技術を確保した国だけが既得権を持つものとみられる。

 大国と巨大技術企業が経済、軍事主導権を逃さないためにAIと無限競争を繰り広げる時代に、人間は何として残ることになるだろうか。中国でもAIと先端製造業に対する無限投資とは裏腹に、庶民の暮らしは活気を失った。中国の人々は「米国の制裁と圧力を突破し、中国の先端技術が屈起している」という政府の宣伝にプライドを感じることもあるが、愛国心だけで多くの人々の苦しみを和らげることができるだろうか。AIが雇用の多くを代替し、「簡単な戦争」の道具になったら、どんな社会がやってくるのだろうか。先端技術競争ではこのような質問も、平凡な個人の発言権も居場所がない。だが、すでに庶民の生活の質の低下と未来に対する不安は、世界各地で社会に対する報復心と極右政治として現れている。怒りと不安が高まる世界で、AIとロボット、自律兵器は人類をどこに導くだろうか。

パク・ミンヒ先任記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1179100.html韓国語原文入力:2025-01-21 18:54
訳H.J

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