韓国検察が「キム・ゴンヒ女史からお金をもらって返す」という内容の「未来韓国研究所」側の債務履行覚書を確保したことで、政治ブローカーのミョン・テギュン氏と尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領夫妻の特殊関係がさらに浮き彫りになっている。ミョン氏が大統領選挙期間中、尹大統領のために無償で世論調査を提供したという政治資金法違反と公認介入疑惑の捜査は避けられないという声があがっている。
昌原(チャンウォン)地検専担捜査チーム(チーム長:イ・ジヒョン次長検事)が確保した債務履行覚書は、ミョン氏が運営した未来韓国研究所から6千万ウォン(約650万円)余りを受け取れなかった世論調査機関「ピープル・ネットワークス・リサーチ」(PNR)の債務履行の督促に対し作成したもの。同覚書に「キム女史からお金をもらって借金を返す」という内容が含まれたのは、ミョン氏がキム女史からもらうはずの金銭があり、これを周囲の人たちにも公然と公開していたことを意味する。実際、未来韓国研究所の会計を担当したカン・ヘギョン氏は検察の取調べで「キム女史からお金をもらうために請求書まで作った」と陳述した。覚書が作成されたのは2022年7月。「大統領就任後、(尹大統領とミョン氏は)全く意思疎通がなかった」という大統領室の釈明に疑念を抱かざるを得ない状況だ。
ミョン氏はキム女史から2度にわたり金一封を受け取った事実も、検察の取調べで認めた。尹大統領が現在の与党「国民の力」に入党し、党内の大統領選候補予備選挙を行っていた2021年9月に行われたとされる供述だった。大統領選挙期間に尹大統領を物心両面で助けたミョン氏に、キム女史が渡した感謝の印とみられる。ミョン氏が知り合いの地域事業家の息子が大統領室で働けるよう口添えをした情況も明らかになった。慶尚北道安東(アンドン)で事業をしているC氏が、未来韓国研究所の借金1億ウォン(約1080万円)を代わりに返済し、彼の息子は尹錫悦候補陣営や引継ぎ委員会の実務委員などを経て、現在、大統領室6級行政要員として働いている。カン氏は検察の取り調べで、「1億ウォンはC氏の息子の採用請託の見返りだった」とし、「帳簿に(C氏の代わりに)息子の名前を書いておいた」と供述した。ミョン氏が尹大統領就任後も政治的影響力を維持していたことを示す事例といえる。
検察は28日、前日に続きソウル汝矣島(ヨイド)の「国民の力」党本部の家宅捜索を進めた。前日、キム・ヨンソン前議員の公認資料などを押収したのに続き、イ・ジュンソク当時「国民の力」代表と公認管理委員会委員間のメッセンジャー資料を確保するためだという。キム前議員の公認を指示したという尹大統領の肉声と、公認にキム女史が介入したというミョン氏の録音記録などが公開されただけに、検察の矛先が尹大統領夫妻に向かうかどうかに関心が集まっている。尹大統領の政治資金法違反は公認介入と関連がある。ミョン氏が大統領選挙期間中、尹大統領のために81回にわたり無償で世論調査を提供し、その見返りとして2022年6月の再・補欠選挙でキム・ヨンソン前議員の公認を獲得したという疑惑が持ち上がったためだ。元検事のある弁護士は「ミョン氏がキム女史から実際にもらうことになっていた金銭があったのか、それとも無償で世論調査を提供したのかなどを、ミョン氏だけでなく対象者であるキム女史も取り調べなければならない」とし、「職務遺棄の批判を免れるためには、検察が捜査の意志を見せなければならない」と語った。また別の元検事の弁護士は「検察はブランドバッグ受け取り疑惑、ドイツモーターズ株価操作疑惑などに関してキム女史と尹大統領に対する捜査をまともに進めなかったという批判世論が広まっている状況だ。この事件もうやむやにしてはならない」と話した。