レバノンの首都ベイルートとイランの首都テヘランで、それぞれヒズボラのナンバー2とハマスの最高政治指導者が殺害された事件後、中東で戦雲が濃くなっている。米国など各国はレバノンに滞在する自国民に直ちに退避するよう通告しており、イランのイスラエルへの報復攻撃に備えて米国は航空母艦と巡洋艦などを派遣した。
駐レバノン米大使館は3日(現地時間)、「緊急、米国市民に対するメッセージ」というタイトルの通告を掲載し、「多くの航空便がキャンセルまたは満席状態だが、まだレバノンから出国できる商用便の選択肢が残っている。どんなチケットでも予約してレバノンを離れることを勧告する」と退避を呼びかけた。カナダは「状況がいつでも前兆もなく悪化する可能性がある」とし、レバノンからの退避通告に加え、自国民にイスラエルへの渡航中止も勧告した。英国は「商用便が残っている間に」レバノンから退避するよう自国民に勧告する一方、緊急退避状況に備えて軍事および領事関係者をさらに派遣したと発表した。中東の米国同盟国の一つであるヨルダンも、自国民にレバノンから直ちに退避するよう通告した。
レバノンのシーア派組織のヒズボラは3日、イスラエル北部ベイト・ヒレルのユダヤ人入植地に数十発のカチューシャ多連装ロケット攻撃を加えた。イスラエルの防空網がロケットの多数を撃墜しており、死傷者が出たかどうかは定かではない。ヒズボラは先月30日、ヒズボラ戦略部隊の首長、フアド・シュクル氏がイスラエルの爆撃で死亡したことを受け、報復を誓ってきた。
先月31日、テヘランでイスラム武装組織ハマスの政治最高指導者イスマイル・ハニヤ氏がイスラエによって暗殺されたとみられる中、イランのイスラム革命防衛隊は3日に声明を発表し、「戦争狂でテロ分子であるシオン主義政権は過酷な処罰を受けることになるだろう」と再び報復を誓った。
イランが支援する「抵抗の軸」勢力に属するイエメンのアンサール・アッラー(フーシ派)も2週間の沈黙を破り、同日アデン湾を通過していたコンテナ貨物船にミサイル攻撃を行った。アンサール・アッラーの攻撃は、イスラエルが先月20日、アンサール・アッラーの根拠地を空爆して以来初めて。アンサール・アッラーはアデンから東南側に225キロメートル離れた海上を通っていたリベリア国籍のコンテナ貨物船グロトンにミサイルを発射し、船体に損傷を与えたと、英国軍海上通商作戦センターが明らかにした。
米国は中東に空母戦団を配置するなど軍事力を増強している。米国防総省の2日の発表によると、ロイド・オースティン米国防長官は、現在太平洋東部にある空母「エイブラハム・リンカーン」を中東に向かうよう命令したという。米国防総省はまた、オースティン長官が海軍巡洋艦および駆逐艦を中東と欧州に追加で配置する案を承認したと発表した。
米国のジョー・バイデン大統領は3日、デラウェア州の自宅で記者団に「イランが一歩引いたと思うか」という質問に「そうであることを願う。しかし分からない」と答えた。
イスラエルも同日、パレスチナのヨルダン川西岸北部のトゥルカルム付近を2回にわたり空爆し、9人が死亡した。イスラエルは最初の空爆で「テロ勢力の細胞組織を破壊した」と発表しており、2回目の空爆はトゥルカルムで反テロ作戦途中にイスラエル軍に発砲した武装団体を狙ったものだと説明した。
イランがイスラエルにいつ報復攻撃を加えるかは定かではない。米国のネットメディア「アクシオス」は、米国とイスラエル当局者3人の話として、イランが早ければ5日にもイスラエルを攻撃すると予想されると報じた。サウジアラビアと英国が合作したアラブメディア「スカイニュース・アラビア」は西側の情報消息筋の話として、ユダヤ教の神殿崩壊祈念日「ティシャベアブ」期間の12から13日にイランの攻撃が行われる可能性があると報道した。