米国を訪問中の尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領が9日、「C上等兵特検法」(殉職海兵隊員捜査妨害および事件隠蔽などの真相究明のための特別検事任命法)に電子決裁を通じて再議要求権(拒否権)を行使した。尹大統領が拒否権を行使した法案は15件目で、22代国会で可決された最初の法案から拒否権政局が再び始まった。
尹大統領は、この日午前にハン・ドクス首相が開いた国務会議で議決した再議要求案を、午後、米ハワイのホノルルで電子決裁を通じて裁可した。海外での拒否権行使は異例のことだ。大統領室は「昨日発表された警察の捜査結果により、実体的な真実と責任の所在が明らかになった状況で、野党が一方的に押し通した殉職海兵隊員特検法は撤回されるべきだ」と説明した。
C上等兵特検法は、第21代国会で尹大統領の拒否権行使により廃棄されてから37日後の今月4日、野党主導により第22代国会本会議で可決された。尹大統領は法案が国会を通過してから5日後、政府に移送されてから4日後に拒否権を行使した。20日が期限であり、大統領室は尹大統領の訪米後に拒否権を行使する案も検討したが、前日に慶北警察庁がイム・ソングン前海兵隊第1師団長を嫌疑なしで不送致したことを受け、時期を操り上げたものとみられる。
野党は強く反発した。共に民主党のユン・ジョングン院内報道担当は「尹大統領が国民の信頼を回復できる最後の機会を自ら捨ててしまった。政権没落の始発点になるだろう」と述べた。祖国革新党は所属議員12人全員が記者会見を行い「大韓民国は民意に真っ向から逆らって挑戦した大統領を放っておかない。再議決に向けて全力を尽くす」と述べた。