韓国政府が19日に打ち出した「少子化のすう勢を反転」させるための対策に、最低賃金を払わなくてもよい外国人家事労働者の導入が含まれていたため、批判が起きている。これに先立ち、モデル事業の推進過程でも似たような批判を浴びたが、差別的待遇に起因する悪影響の方が大きいため、最低賃金を順守させることにした。にもかかわらず、政府はまたも少子化対策にそれをこっそり潜り込ませていたのだ。
政府が提示した案はこうだ。来年上半期に雇用許可制(E-9)によって1200人の外国人家事労働者を受け入れるほか、それとは別に外国人留学生や移住労働者の配偶者など5千人を、最低賃金を適用せずに雇用できるようにするというのだ。家事労働者は家事勤労者法に則って政府から認証を受けた機関に所属するため、働けば最低賃金法などが適用されるが、個別の世帯と直接契約を結ぶと何ら法的に保障されない。このような抜け穴を利用して、政府が安い外国人家事労働者を供給するというのだ。そのうえ、政府はこのような労働者を民間機関に斡旋(あっせん)、仲介させる制度の導入まで検討するという。
2022年の家事勤労者法の施行により、最近ようやく家事労働者が最低限の労働関係法の保障を受けはじめたが、再び迂回(うかい)的に非公式労働を増やすという政府の行為は時代錯誤だ。また、政府が先頭に立って外国人労働者を差別待遇するというのは、国際基準にも合わない。国際労働機関(ILO)第111号条約は出身国、性別、宗教などを理由に労働条件を差別しないよう定めている。専門家は、ケア業種で最低賃金を適用するかどうかを差別的に分けると、外国人労働者が事業所を離脱するため、不法滞在を増やすことになりうると懸念を示している。
何よりも、9月に実施される「フィリピン人家事手伝いモデル事業」に対する評価も出る前に、政府が関連事業を拡大することを打ち出したのは性急すぎる。フィリピン労働界は20日の民主労総との共同声明で、移住労働者の権利が明確に定義された標準契約書の透明な公開▽労働組合の参加の下での居住施設の定期点検などを求めている。フィリピン政府は今年1月、農村の働き手となる季節労働者の送り出しを中止した。賃金搾取などが相次いだためだ。にもかかわらず、韓国政府は何ら対策を打ち出していないとフィリピン労働界は指摘している。今回試みようとしている家事労働者の個別世帯との私的契約は、各種の権利侵害の素地を広げる。慎重に検討することもなくコストの安さばかりに心を奪われると大きな悪影響が起こりうるとの指摘を、政府は重く受け止めるべきだ。