本文に移動

[コラム]これからは「北韓」を「朝鮮」と呼んでは?=韓国

登録:2024-04-23 06:08 修正:2024-04-23 08:08
ゲッティイメージバンクより//ハンギョレ新聞社

 「朝鮮民主主義人民共和国、略して朝鮮という呼称があるのに、なぜ北韓(プッカン:北朝鮮)と呼ぶのですか」。大衆講演の際に、時折受ける抗議の質問です。この質問には、真の南北の和解と平和を追求するためには、正式な名称を使うべきだというアドバイスも込められています。しかし、私はこれまで「北韓」という言葉を使ってきました。同様の質問をする方にも「趣旨はわかりますが、そうでなくても私は北朝鮮支持あるいは北朝鮮追従と非難されることが多いので、朝鮮という言葉を使うと人々の偏見がさらに強くなりかねないため、北韓と呼んでいます」と理解を求めたことを覚えています。

 南北は互いに向かって多様な呼び名を使ってきました。2000年の6・15南北共同宣言から2018年9月の平壌共同宣言に至るまで、首脳らの署名が入った文書に「大韓民国」と「朝鮮民主主義人民共和国」と表記しました。また、南北が接触・対話する際には互いに向かって「南(側)」と「北(側)」と書いていました。これらの場合を除き、韓国では「北韓」を、朝鮮では「南朝鮮」を使用してきました。実は「北韓」は韓国の延長線上という意味であり、「南朝鮮」は朝鮮の延長線上であることを表すもので、対立の素地がありました。しかし、南北はこれを大きく問題視しませんでした。南北関係を「国と国の関係ではなく、統一を目指す過程で暫定的に形成された特殊な関係」としてとらえ、和解協力と平和統一を追求するという総論的なコンセンサスがあったからと言えます。そのため対話と協力が可能でした。

 しかし、最近になって状況が大きく変わりました。2018年12月を最後に南北対話はこれまで一度も開かれておらず、人的・物的交流も全くないのが実状です。再び互いを「主敵」と呼んでおり、危険水域ギリギリの言葉の応酬と武力示威のやりとりが続いています。そのような中、朝鮮は2023年7月から「南朝鮮」ではなく「大韓民国」と呼び始めましたが、時々「傀儡」や「輩」を前後につけて敵対感を表しています。とうとう最近では南北関係を「敵対的で交戦中の二国間関係」と位置づけています。金正恩(キム・ジョンウン)政権はその主な理由として、韓国が吸収統一を追求してきたことを挙げましたが、尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権は「自由の北進」をさらに強く叫んでいます。

 多くの人は「南北が仲良くなれないなら、せめて喧嘩はやめてほしい」とため息交じりの願いを口にします。だからこそ、私はどこから始めればいいのかを考えてきました。「北韓」ではなく、「朝鮮」と呼ぶことから始められるかもしれません。平和共存の出発点は互いを認めることです。その相手である朝鮮は「大韓民国」と呼びながら、自分も「朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)と呼んでほしい」と求めています。延世大学のパク・ミョンリム教授は2020年1月15日付の「中央日報」への寄稿で、「実際と現実に存在しない北韓と南朝鮮を擬制し南北関係にアプローチするよりは、大韓民国(韓国)と朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)でそれぞれ存在し、向き合うのが望ましい道だ」と力説したことがありますが、今や韓国社会が「朝鮮」と呼ぶことを真剣に検討してみるのもいいと思います。

 朝鮮が要求したからだけではありません。対北強硬路線を貫いている尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権でさえ、「北韓との対話の扉は開かれている」と言っていますが、「北韓」と書いた瞬間、対話の扉はさらに固く閉ざされてしまいます。だからこそ、実用的な側面から考えてみる必要があります。多くの心理学者は、相手の言動を変えることができる最も効果的な方法は「共感」にあると言います。ところが、我々が「北韓」を固守すれば、朝鮮の人々は共感どころか、反感を持つことになるでしょう。各種のスポーツ大会で韓国の記者が「北韓」という言葉を口にすると、朝鮮チームの監督が強く抗議し質問の受け答えを拒否することからも分かります。これは逆にわれわれが「朝鮮」を使えば、彼らと最小限の共感を作ることができるということを意味します。対話の扉を開くのにも役立つでしょう。

 議論の余地が大きいと思います。同時に朝鮮半島の構成員が直面している不幸な現実を直視する必要はあるでしょう。韓国と朝鮮は最も近い位置にあると同時に、最も敵対的な関係だからです。そこで、積み重なっていく敵対性を和らげるためにも、まず「正式な名で呼ぶ」ことから始めてみてはいかがでしょうか。

チョン・ウクシク|ハンギョレ平和研究所所長(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/politics/defense/1137528.html韓国語原文入力:2024-04-22 07:51
訳H.J

関連記事