ウォン・ドル相場で1400ウォン台となるウォン急落への切り札として、「国民年金」が注目されている。外国為替当局は2022年、当時の為替レートが1400ウォン台にまでウォン安に進んだのを受け、国民年金と韓国銀行間での外国為替スワップや、国民年金の海外投資資産の為替ヘッジ比率引き上げなどの制度を導入した。この制度が機能すれば、為替レートのウォン急落傾向を止めるのに役立つとみられる。
17日、外国為替当局によると、企画財政部と韓国銀行は、ウォン・ドル相場のウォン安緩和の方法として、「国民年金」の切り札に期待をかけている。韓国銀行と国民年金は、2022年9月に外国為替スワップ取引を締結している。昨年末には350億ドルを上限とする外国為替スワップ(今年末まで)を再合意した。国民年金が海外資産投資を行う場合、ドルをソウル市場で買わず、韓銀から借りて調達することが可能ということだ。韓国の為替市場でその分だけドル買い需要が生じなくなるため、ウォン安の勢いを止める手段になる。
国民年金は外国為替市場を動かす「クジラ」と呼ばれる。海外投資のため外国為替市場にて現物でドルを買う規模は年間300億ドルに達する。ソウル市場でもしこの「300億ドル買い」の需要が消えれば、ウォン安の圧力が少なからず解消される。昨年のソウル市場では、ドルの現物取引量は1日平均258億ドルに達する。
ウォン・ドル相場が1400~1410ウォンを超えた場合、国民年金の「為替ヘッジ比率引き上げ」の手段もただちに発動するものとみられる。国民年金は海外資産(約4000億ドル)のほとんどをドルで保有している。投資戦略上、通常は為替ヘッジを行っていない。しかし、2022年12月に外国為替当局と国民年金は、戦略的為替ヘッジの割合を0%から市場状況に応じて最大10%まで引き上げることにして、今年末までその制度を延長した。
もし国民年金が海外資産の10%(最大ヘッジ割合・約400億ドル)を韓国ウォンに変えて為替ヘッジに踏み切るとなると、現物外国為替市場にはその分だけドル供給が増加し、ドルの価値を下げることができる。ウォン・ドル相場が一定の水準に達すれば、国民年金が自動的にドル先物為替売り(将来の一定の時点で約定した為替レートで売買)に踏み切ることになり、その資金は韓国の都市銀行(外国為替銀行)が受け入れる。しかし、都市銀行はドルの売り・買いポジションを常に中立状態で維持しなければならないという当局規制を合わせるため、その日のソウル外国為替市場にはその分のドル現物を自動で売ることになり、ウォン・ドル相場をウォン高・ドル安にする要因として作用する。
国民年金の為替ヘッジが発動することになるマジノ線は国民年金基金の運用委員会が決めるが、市場では1410ウォン程度だと推定している。ハイ投資証券のパク・サンヒョン研究員は「国民年金の為替ヘッジの資金が外国為替市場に出てくれば、為替レートのウォン安傾向を抑制する効果があるだろう」と述べた。