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韓国で性売買を強制されたフィリピン女性の闘い(2)

登録:2024-03-08 02:44 修正:2024-03-08 06:56
2014年に撮影された群山米空軍基地近くのアメリカンタウン。近くの風俗店に勤めていた高齢の韓国人女性の証言によれば、各家には番号が振られており、米兵が訪れていた。ドキュメンタリー『ホストネーション』のワンシーン=イ・ゴウン監督提供//ハンギョレ新聞社

(1の続き)

国連は人身売買と認め、韓国は違うと主張

 彼らは公益弁護士の助けを借りて強制出国(退去)、拘禁(保護)を命じた韓国政府を相手取り、損害賠償を求めて提訴した。状況は思わしくなかった。2018年に行政訴訟、2020年に損害賠償請求訴訟を相次いで起こしたが、最終的に敗訴した。国連に陳情した。国連の判断は韓国政府とは異なっていた。

 2023年11月、国連女性差別撤廃委員会は「大韓民国は性売買を強いられた3人のフィリピン女性を人身売買の被害者と確認し保護することに失敗しており、司法および十分な救済策へのアクセスを保障していないため、彼女たちの権利を侵害している」と結論付けた。同委員会は韓国政府に対し、この女性たちに完全な補償を行うとともに、人身売買行為の加害者に対する捜査と処罰を強化するよう勧告した。

 だが法務部は裁判所に提出した意見書で、「委員会の決定が再審の対象となる判決にいかなる法的拘束力ないし影響力を及ぼすのかは疑問」だと述べた。被害者の代理人を務めるキム・ジョンチョル弁護士(公益法センター「アピール」)は、韓国政府の人身売買の定義の理解は誤っていると指摘した。

 「E-6ビザを所持しているフィリピン出身の公演移住労働者は人身売買の被害者になりやすいということは、かなり以前から広く知られている事実ですが、出入国事務所は彼女たちが強制退去の対象者なのかを調査する際に深く審査しませんでした。国連の人身取引議定書上の人身売買に当たるんですよ。(2000年12月に)韓国も締約国となったことで、国内法としても人身売買防止法が最近できています。ここで重要な概念の一つは、『被害者が搾取に同意していたとしても、人身売買の構成には何ら支障がない』というものです。当局は『すべて知っていながらやって来たのではないか』みたいなことを非常に重要視していました。様々です。すべて分かっていて来た人もいるし、何となく分かっていて来た人もいるし、完全にだまされて来た人もいる。でも核心は、その搾取に自分が同意していたとしても、結局は強制性売買に追い込まれる状況があったし、自発的には抜けられない状況となっていたことであるはずです」

 実際のところ検察は「被害者は業務時間外に外出できたとみられ、各自が携帯電話を所持していたにもかかわらず、警察の取り締まりの前は外部に対して抗議表示をしていない」ことなどをあげ、被害者を性売買処罰法違反の疑いで起訴猶予処分としている。

 ソウル行政裁判所は、被害者たちが社長の性売買要求に「積極的に反対したり、それを理由として警察に通報したりしていないこと」などをあげ、「原告(被害者)たちも経済的利益を得るために(社長の性売買要求に)黙示的に同意したとみられる」として、被害者の強制退去命令取り消し請求を棄却した。

 ソウル出入国管理事務所は拘禁期間中、店主や店主側の弁護士がフィリピン女性と接見するのを放置した。フィリピン女性たちはその際、店主に有利な陳述をするよう勧められたり、脅迫されたりした。

 マリーさんら3人のフィリピン女性は国連の賠償勧告を根拠として2023年12月26日、ソウル中央地裁に、韓国政府の強制退去・保護命令によって被った精神的損害を認めなかった判決は不当だとして再審を請求した。

人身売買の被害者の権利保障制度はない

 韓国には現在、人身売買の被害者の就業および滞在を保障する制度がない。人身売買の被害者が自らの被害事実を知りながら通報できずに本国に帰ってしまう理由はここにある。実際に、マリーさんと共に逃げた仲間の一部は、早々に飛行機のチケットを取って本国に帰ってしまった。

 韓国のフィリピン女性に対する性搾取問題を取材したドキュメンタリー「ホストネーション」のイ・ゴウン監督は、「この方たちの物語が最後まで行けないのは、ほとんどがとても若い方たちなので、本国に帰ったり新たな人生を始めたりもするから。深く話すのは個人情報が知られてしまうから不安なのだ。ドキュメンタリーを制作する過程でも、それを心配して自分のことは扱わないでほしいと言ってくる方がいた」と話した。

 フィリピン女性に性的・精神的虐待を加える店主の犯罪の究明は難しく、当局はそれに無関心だ。キム・ジョンチョル弁護士は「マリーさんらを苦しめた店主は今も店を運営しており、今は自分を通報した搾取の被害者を虚偽告訴等罪、詐欺罪で告訴するに至っている」と語った。

ソン・ゴウン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/1131164.html韓国語原文入力:2024-03-06 16:45
訳D.K

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