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親に預けた1億ウォン、借金返済に使われ…破産から家族解体まで=韓国(2)

登録:2024-02-08 00:56 修正:2024-02-09 06:51
自己破産、個人再生の申請者の婚姻状況。単位:%(人)。2023年8月16日から11月20日にかけてハンギョレ新聞が実施した128人の自己破産申請者に対するアンケート調査より。上から離婚、既婚、未婚、別居、死別。未記載3.9%//ハンギョレ新聞社

(1の続き)

失踪届を出した母親に「連絡したくない」

 チョン・スラさん(仮名、34)は母親に金を巻き上げられ続けたため、親子関係を絶った。チョン・スラさんは21歳の時、母親に貸金業者に連れて行かれ、2千万ウォン(約220万円)あまりを借金した。その記憶は今も生々しく残っている。

 母親は「家が大変だから一緒に問題を解決すべきなのではないか」と言った。その時は、その借金は「母親が自分で返してくれるだろう」と思っていたが、そのようなことは起きなかった。ある瞬間から自分名義の通帳が凍結されはじめ、チョン・スラさんは債務の深刻さを思い知らされた。「通帳が凍結されたので働くのも大変になりました。貸金業者から私の友人にまで電話がかかってきて返済を迫られた時は、本当に大きなショックを受けました」

 チョン・スラさんは取り立てが続いたせいで対人恐怖症になりながらも、生活費がないと言って「申し訳ない」という母親に、アルバイトをして毎月50万ウォンほどを送金していた。しかし、少しでも貯金しようとすると母親がその度に持っていってしまうため、チョン・スラさんももはや我慢できなくなった。29歳の時、全羅南道の故郷の家を出てソウルに移住した。2週間後に母親から失踪届の提出を受けた警察が訪ねてきたが、「連絡したくない」と伝えた。

 チョン・スラさんは昨年初頭、裁判所に個人再生を申請した。今は個人再生の弁済期間を最大にし、毎月14万ウォン(約1万5600円)ずつ返済している。ソウルのある区役所の構内食堂で働きながら、積立もしている。「個人再生申請のために金融相談に通っていた時、『まずあなたが生活を立て直してこそ家族を助けることができる。今はつらくても切らなければ2人とも死ぬ』とアドバイスされたことが記憶に残っています。現時点では自分にも余裕がないのに、母を助けようとしていたから家族みんなが大変になってしまったのではないでしょうか」

国の支援を受けるために選択した協議離婚

 ユン・ホナムさん(仮名、64)は国の支援を受けるために法的に世帯を分離する離婚を選択したことで、結局は家族と別れることになった。ユン・ホナムさんの2番目の娘(31)は重度の肢体障害を持って生まれた。法人タクシーの運転手として働きながら、娘を自身の車で病院に通わせたり、リハビリ院に通勤させたりしていたため、まともに働けず、会社に納める金が絶えず滞っていた。最初は保証金3千万ウォンの伝貰(チョンセ。契約時に高額の保証金を貸主に預け、月々の家賃は発生しない不動産賃貸方式)住宅から2千万ウォンの家に移り、余った金を生活費などとして使っていたが、結局は銀行から1千万ウォンの借金をするはめになった。その後は4枚のクレジットカードで借り換えながら返済していたため、負債は手の施しようもなく増えていった。

 状況が悪化すると妻から「一緒に暮らしていると、あなたの収入のせいで必要な支援が受けられず大変だから、協議離婚しよう」と提案された。夫婦は結局、離婚の手続きを踏んだ。ユン・ホナムさんはその後、「子どもたちに被害が及ばないように」家も出た。

 宿屋や考試院(簡易宿泊・住居施設)を転々としながら暮らしていたが、2015年にタクシー運転中に交通事故を起こし、収入が完全に途絶えた。アルコール中毒に苦しみ、精神病院に強制入院させられたこともある。ユン・ホナムさんは昨年、自己破産を申請し、まもなく免責決定が下された。「子どもたちのところに訪ねて行くと迷惑がるから、訪ねて行かないことを妻と約束しました。私は今までその約束を守ってきました。今は家族がどこに住んでいるのかも知りません」

 建設会社の役員だったイム・スドンさん(仮名、56)も、10年前にオーナーリスクを抱える会社が不渡りを出したことで会社の負債を抱え込み、数億ウォンの借金をした。家が競売にかけられ、妻とは離婚し、家族はバラバラになった。基礎生活受給者になったイム・スドンさんは考試院で一人暮らしをしている。イム・スドンさんは昨年4月に自己破産を申請し、6カ月後に免責が決定された。

「借金は家族の共同課題ではない」

 このように借金のせいで家族が解体の憂き目にあうことがあるが、自己破産や個人再生などについて相談を受ける専門家たちは「借金は家族の共同課題ではない」と口をそろえる。

 恩平(ウンピョン)金融福祉相談センターのセンター長を務めるキム・ヨンジンさんは「家族の中の1人が借金の沼にはまると、抱えきれない借金を家族全員が背負うことになるケースが多い。家族共同体という美名の下、互いの名義による借り換えで借金を返済しているケースをよく見る。普通、借り換えができている時は借金と認識しにくく、限界が来てはじめて借金だと認識するようになるが、その時にはすでに家族全員が債務不履行状態に陥っている」と指摘した。

 キムさんは続けて「一度の延滞を防ぐために家族に借金させたりせず、親や兄弟であっても冷静に対処し、債務調整制度や債務相談を勧めてほしい。借金は家族が共に解決すべき共同の課題ではない」と付け加えた。

キム・ジウン、パク・チュニョン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/economy/economy_general/1127556.html韓国語原文入力:2024-02-07 05:00
訳D.K

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