1994年朝米枠組み合意(ジュネーブ合意)の主役だったロバート・ガルーチ元米国務省北朝鮮核問題担当特使が「2024年、北東アジアで核戦争が起きる可能性があることを少なくとも念頭に置かなければならない」とし、米国は北朝鮮との関係正常化を進め、非核化は長期目標に設定すべきだと主張した。
米ジョージタウン大学名誉教授のガルーチ元特使は11日、外交・安保専門誌「ナショナル・インタレスト」への寄稿で、「北朝鮮が米国の関心を引き、交渉材料を作るためにデザインされた挑発の代わりに、この3年間、断固として持続的な長距離弾道ミサイル発射実験を通じて、(北朝鮮の)政権交代の試みを抑えるとともに、核分裂物質を確保し、有事の際の核兵器『先制使用』をちらつかせて脅しをかけることに集中している」と指摘した。
北朝鮮を長い間観察してきた ジークフリード・ヘッカー博士も昨年9月、「フォーリン・ポリシー」への寄稿で、金正恩(キム・ジョンウン)北朝鮮国務委員長のロシアへの接近が単に「戦術的か事情が緊迫している」ためではなく、「米国との関係改善を目指す過去30年間の努力を放棄する根本的な政策変化の結果」だと説明した。
北朝鮮が冷戦解体後約30年間進めてきた対米政策を、米国との「関係正常化」から、生存のために核兵器の先制使用も辞さない攻勢戦略に変えただけに、慎重で現実的なアプローチが必要だという点を強調したのだ。
ガルーチ元特使は具体的に北東アジアで核戦争が発生しうる第一のシナリオとして、米中が台湾問題をめぐり対峙する間、北朝鮮が北東アジアの米軍資産と同盟に核の脅威を与える状況、第二に「北朝鮮指導部が核兵器を利用し、韓国が北朝鮮の政治的・領土的指示に対する北朝鮮の指針を遵守するよう強要すること」を挙げた。つまり、北朝鮮が韓国を核で威嚇し、自分たちの政治的・領土的目的を達成しようと試みる可能性があると懸念を示したのだ。
さらに、「このシナリオで、北朝鮮は米国が決定的な要素ではないと考えているものとみられる」と述べた。その理由として、北朝鮮が「開発中の大陸間弾道ミサイル(ICBM)能力が、アジアに対する米国の拡大抑止力の信頼性を弱体化させると考える可能性がある」という点を挙げた。北朝鮮が米国全域を核兵器で打撃できる能力を備えた状況で、自分たちが韓国を核で威嚇しても米国が介入できないと「誤った判断」をする可能性を懸念したのだ。
また「彼ら(北朝鮮)は核兵器を持つ他の国々に比べ、この『ゲーム』を始めたばかりだ」とし、「核兵器の使用をちらつかせる北朝鮮のレトリックを理由に、(北朝鮮が実際行動に出る)可能性が低いと確信してはならない」と指摘した。そして、最後の結論として「米国は本当に(北朝鮮と)関係正常化を求め、非核化をその過程の第一段階ではなく、長期的な目標に設定すべきだ」と主張した。
ガルーチ名誉教授は、1994年の第1次北朝鮮核危機の際、クリントン政権で北朝鮮核問題担当特使を務め、北朝鮮との交渉を主導した人物だ。当時、交渉を通じて北朝鮮が核開発を放棄する代わりに、北朝鮮に軽水炉を建設することを骨子とした朝米枠組み合意(ジュネーブ合意、1994年10月)が実現した。同合意は2002年10月、北朝鮮が高濃縮ウラン(HEU)を活用した核開発を行っているという疑惑を米国が提起したことで、事実上破棄された。