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「再犯率4倍」動物性虐待…「今後は性犯罪として処罰すべき」

登録:2023-12-16 09:21 修正:2023-12-16 10:40
2019年京畿道利川での子犬への性虐待事件で子犬は傷害を負った。当時大統領府の国民請願掲示板に虐待者の処罰を要求する市民の同意が20万人を超え、大統領府が回答した=動物虐待防止連合(@kapca)提供//ハンギョレ新聞社

 動物を対象とする性的接触を「動物虐待」として明確に規定し、虐待防止のために制度を改善しなければならないという声が出ている。動物性虐待の犯罪は、他の犯罪と比較すると再犯率が4倍に達し、虐待者が人間を対象とする性暴行などの他の犯罪に関係する事例が多いためだ。しかし、国外とは違い韓国には、動物性虐待に対する明確な処罰規定はない。人間を対象とする性犯罪の処罰の程度に準じて処罰し、治療プログラムの履修など再発防止対策が必要だという主張が出ている。

 動物福祉問題研究所「アウェア」は14日午後、ソウル中区貞洞(チュング・チョンドン)で記者会見を開き、報告書「動物性虐待の外国法例と政策課題」を公開した。動物性虐待問題は、取り上げることが難しいテーマとみなされ、他の動物福祉問題に比べ社会的な議論と研究が足りない状態だ。報告書は、韓国の事例だけでなく、海外の法例、現行法の問題点や改善の方向性を幅広く加え、韓国の状況に合う制度と法律を作らなければならないと指摘する。

動物福祉問題研究所「アウェア」のイ・ヒョンジュ代表が14日午後、ソウル中区貞洞で記者会見を開き、報告書「動物性虐待の外国法例と政策課題」を発表している=キム・ジスク記者//ハンギョレ新聞社

■「動物性虐待」とは

 報告書はまず、なじみが薄い動物性虐待の概念から説明する。人と動物の性的接触は、これまで「獣姦」(bestiality)あるいは「動物性愛」(zoophilia)と呼ばれていたが、最近の動物福祉分野では、「動物性虐待」(animal sexual abuse)という用語がよく使われている。米国サザン・メイン大学のピアス・ベルン(Piers Beirne)博士は、動物との性的接触は、ほとんどの場合は強要を含んでおり、性行為が動物に苦痛や死を引き起こすケースが多いため、「種間性暴行」(interspecies sexual assault)と定義しなければならないと主張している。

 動物性虐待は、動物の生殖器・肛門・口腔を通した性的虐待、人と動物との間の性器接触、物体を使った性的虐待、動物加虐症(zoosadism)など、様々な行為を含む。

■韓国での実態は…4年前の事件で公論化

 2019年の「京畿利川(イチョン)性虐待事件」は、動物性虐待問題を公の場に引きだした。当時、京畿道利川市では、ある20代男性が大通りで子犬に性的虐待を犯し、動物に永久的な排便障害を負わせる事件が発生した。虐待者は処罰を受けたが、性虐待は明確な処罰条項がないという事実が公論の場に浮上した。虐待者には懲役1年6カ月・執行猶予3年が下されたが、これは、動物性虐待以外に別の女性に対しわいせつ行為を行った容疑を併合して判決した結果だ。

 これを受け市民たちが、動物性虐待行為の再発防止と厳罰のために大統領府の国民請願に乗りだし、わずか1カ月で20万人が同意したが、再発防止対策や虐待動物の保護策などの根拠となる関連法の改正は行われなかった。

 報告書が紹介した事例によると、性虐待の被害動物は、ほとんどがペットと農場の動物だった。2016年の光州(クァンジュ)、2017年の京畿道富川(プチョン)、2018年の慶尚北道奉化(ポンファ)などでは、イヌに対して性的虐待を加え傷害を負わせたり死に追いやり、2018年の天安(チョナン)と2020年の全羅南道羅州(ナジュ)では、牝牛を相手にした虐待が行われた。虐待者らは、動物保護法違反、建造物侵入、器物破損などの容疑で処罰を受けたが、再犯を防止するための処罰は不十分だというのが報告書の主張だ。

 報告書は、表面化していない虐待の事例はさらに多いと推定している。これらの事例の被虐待動物はすべて他人の動物であり、虐待場所が公共場所あるいは他人の私有地だったためだ。もし、被虐待動物と一緒に居住して虐待行為を行っているのであれば、把握は難しいということだ。

■適切に処罰し再犯防止しなければならない理由

 報告書は、動物性犯罪者の高い再犯率と他の犯罪との関連性に注目し、適切な処罰と再犯防止対策の必要性を強調する。犯罪学者のM・ジェニー・エドワーズ(M. Jenny Edwards)氏が、1973年~2016年に行われた456件の動物性虐待事件を分析した結果、調査対象の犯罪者の半数以上(52.9%)が、人間を対象とする性的暴行、動物虐待、対人暴力など他の前科を持っており、そのうち33.2%が児童および成人を対象とする性犯罪の前歴があることが明らかになった。他の犯罪者と比較しても、動物性虐待の犯罪者の再犯率は4倍以上高かった。

 ペットの数が増え、性犯罪はさらに増えると予想される。韓国だけでなく、動物を対象とする性犯罪は全世界的に発生しているが、正確な発生比率や現状を集計した資料はない。ただし、米国の動物学者のアルフレッド・キンゼイが出した2冊の『キンゼイ報告』(1948年・1953年)は、米国男性の8%、女性の3.5%が生涯に1回は動物との性的な行為を経験したことを明らかにした。

 報告書は、最近になりペット数が増加し、農村だけでなく都市でも簡単に動物に接することが可能になったという点を考慮し、性的接触は1900年代中頃から増加したとみている。SNSやネットを通して、動物性虐待の動画が性搾取物の1ジャンルとして流通している。2020年に「動物権行動KARA」が発表した『メディア動物虐待アンケート調査』によると、回答者の70%はメディアで動物虐待の動画をみたことがあると答えたが、そのうち「性暴行・セクハラ」のタイプは4%に達した。

米国50州の獣姦規制法律の現状。緑は法的規制なし、黄色は軽犯罪、赤は重犯罪、オレンジは軽犯罪もしくは重犯罪=資料:ウィキメディア・コモンズ//ハンギョレ新聞社

■韓国は動物を対象とする性犯罪の死角地帯

 ドイツ、スイス、英国、米国などの海外では、動物性虐待の犯罪を禁止し、再発防止のための立法活動が活発に行われている。動物との性的接触を動物虐待と規定して処罰するだけでなく、被虐待動物を没収し、虐待者に心理治療をあわせて命令し、虐待の繰り返しを防止している。

 ドイツは2012年、「動物福祉法」で動物の本性に外れる形態の強制を禁止することによって、根本的に性的接触を防ぎ、性行為によって動物が死んだり苦痛を受けた場合は加重処罰をしている。スイスもまた、動物との性的行為を「すべての動物種に対して特別に禁止する行為」と規定している。米国は、ワシントンDCを含む51州のうち49州が動物を対象とする性犯罪を規制する法令を設けており、米連邦捜査局(FBI)も動物性虐待を重犯罪に分類している。いずれも、人間を対象とする性犯罪と同程度に処罰と再発防止対策を設けている。

 実際に2021年、米国フロリダ州裁判所は、自分が勤務した動物病院で治療したイヌを性的に虐待し、踏んだり投げるなどの行為で死に追いやり、それを撮影した疑いをかけられた獣医師に、動物福祉法違反などで21年10カ月の懲役刑を宣告したことがある。

 しかし、韓国の現行法では、動物性虐待を動物虐待の類型と規定したり、動物を性的に利用する行為を禁止する個別の条項は用意されていない。再犯を防ぐための治療プログラム履修の強制条項もない。「アウェア」のイ・ヒョンジュ代表は会見で「現行の動物保護法は、動物が病気になったり傷害を受けた場合だけ、動物虐待として処罰している。しかし、性虐待は動物に身体的損傷や物理的傷害を与えなくても可能であり、即時の獣医学的検証が行われなければ、性行為や傷害の因果関係を立証することは難しい」としたうえで、「傷害発生の有無を問わず、動物と性的接触をしたり、それを写真や動画で撮影・配布する行為を禁止しなければならない」と強調した。

 報告書は、動物保護法に性虐待禁止条項を新設▽動物性虐待者に治療プログラムの履修義務化▽動物没収および動物飼育禁止命令の制度導入▽現行の動物保護法の虐待(故意的な病気・傷害・身体の苦痛)規定を、行為の結果ではなく行為自体で処罰するように改正しなければならないと提言した。

キム・ジスク記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/animalpeople/human_animal/1120522.html韓国語原文入力:2023-12-15 08:17
訳M.S

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