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[朴露子の韓国、内と外]韓国の「訪問同居ビザ」、もう一つの差別 

登録:2023-12-13 19:58 修正:2023-12-15 10:00
高麗人画家ヒョードル・キムの「強制移住」。1937年、スターリンの命令で極東地方に住んでいた韓人18万人が中央アジアに強制移住させられ、その過程で数千人が犠牲になった。カザフスタン・クズロルダ州のチェ・ジョンハク記念館所蔵//ハンギョレ新聞社

 

 韓国は「血統」によって外国人の法的待遇が異なる世界数十カ国のうちの一つだ。実は驚くことではない。韓国は東アジアで、本国住民に比べた在外同胞の割合が最も大きい社会だ。在外同胞の総数は朝鮮半島の総人口の10%程になるが、これは日本、中国、ベトナムよりはるかに大きい。ドイツ、イスラエル、トルコ、アルメニアのように血統主義の原則に基づいて外国人を待遇する国々は、たいてい大きな海外ディアスポラを持つ国々だ。そういう意味では海外のコリアンが韓国に来て受ける「特別待遇」は、広義の「グローバルスタンダード」に属する。

 しかしよくみると、中国や旧ソ連の血統的コリアンコミュニティの構成員が韓国に来て受ける待遇は、血統主義原則を認める他の国々とはかなり違う。ディアスポラの帰還を強く希望することで広く知られたイスラエルはもちろん、トルコ、アルメニア、アイルランドのような国々は在外同胞が帰還して国籍取得を申請すれば、すぐに国籍が付与される。ドイツやフィンランドは旧ソ連などから帰還する同胞に言語試験などを受けさせはするが、帰還する同胞に国籍を与えるという大原則は同じだ。

 しかし、中国や旧ソ連出身の同胞が韓国で受け取るのは国籍ではなく、在外同胞ビザ(F-4)や訪問就業ビザ(H-2)程度だ。特に後者の場合、韓国国内での滞在期間は最長4年10カ月で、その期間が満了する前に出国し、再びビザを取得しなければ再入国できない。つまり、韓国が先進圏外の国出身の同胞に提示するのは、市民共同体のメンバーシップといえる「国籍」ではなく、たいてい高強度低賃金労働を要する業種での雇用と身分的不安を意味する「訪問就業」、ないしは、うまくいっても「在外同胞」としての(定着ではない)「滞在」だ。

 たいてい血統主義原則に基づく在外同胞に対する国籍付与は、歴史的正義の確立の次元で理解される。例えば、旧ソ連でドイツ人・フィンランド人・ユダヤ人などは強制移住や激しい差別を受けたため、ドイツ・フィンランド・イスラエルなど高所得社会になった「歴史的祖国」は「被害者同胞」に国籍を付与し、「歴史的債務」を清算する。実際、受難を語るなら高麗人(コリョイン)が旧ソ連で経験した苦難は、ドイツ人・ユダヤ人・フィンランド人のそれに劣らない。1937年、高麗人18万人が中央アジアに強制移住させられ、2500人が粛清・逮捕・処刑されたのが代表的だ。ところが高所得社会になったその「歴史的祖国」である韓国は、彼らに歴史的正義を回復させず、彼らを市民共同体の構成員ではなく滞在者、低賃金高強度労働を担う「人材」とみなして扱う。結局、彼らは旧ソ連で経験した受難、そしてソ連解体の衝撃などに続き、韓国に来ても差別を受けなければならない悪循環に置かれている。

2007年夏、ウズベキスタン・タシュケントのある市場で、一人の高麗人女性が高麗料理を売っている=ウズベキスタンの在野通信社「フェルガナ」提供//ハンギョレ新聞社

 それに加えて、高麗人の家族のうちコリアン系ではない家族は二重に差別される。そんな家族は想像以上にかなり多い。旧ソ連やその後継国では異民族間の結婚が一般的だった。特に都心地域ではその比重が高く、すでに1980年代にはほとんどの高麗人は都市民だった。ロシアの教科書にも作品が載せられた高麗人文豪アナトリー・キムの配偶者もロシア人であり、韓国でもよく知られた旧ソ連のスター詩人でロック歌手のビクトル・チェは母親も妻もともにロシア人だった。もしその家庭が今同胞として韓国に移住するなら、たいていは「訪問同居」(F-1)ビザを得ることになる。血統主義が最も徹底したイスラエルでも、イスラエルに帰還するユダヤ人の非ユダヤ人配偶者に5~7年以内にイスラエル国籍を与える。しかし、韓国でアナトリー・キムやヴィクトル・チェの配偶者に与えられた滞在資格は「市民権」でも「滞在権利」でもない「訪問」に過ぎない。

 非高麗人配偶者に与えられる訪問同居ビザの最大の問題は、合法的な就職ができないという点だ。旧ソ連や中国などから在外同胞ビザや訪問就業ビザで韓国に入ってくる同胞家庭の中には、成人家族のうち1人が働かなくても済むほどの中上位層や上流層は少ない。たいていは暮らし向きが豊かでないケースなので、夫婦二人とも働く共働きは生存のための当然の選択だ。夫婦の一人が仕事ができなくなれば生計困難に陥らざるをえない。特に未成年の子どもを育てる家庭ならなおさらだ。そうした状況に追い込まれた訪問同居ビザ保有者たちが感じる挫折と怒りがどれほどなのか、十分に想像できるはずだ。

 もちろん、彼らに就職の機会が全くないわけではない。季節労働が法的に可能だったり、特別に指定された一部の人口減少地域では「地域特化型」の滞在資格で単純労務に従事することもありうる。ところが、指定地域リストを見ればほとんどは農村地域だが、韓国に来ている数千人の非高麗人家族の圧倒的多数は都市出身だ。彼らは農村で単純業務をしたくとも簡単にはできないだろうし、その高麗人配偶者の職場もやはりほとんど都市にある。彼らは「歴史的祖国」に帰ってきたら離散家族になって生活しなければならないということか。

 中国や旧ソ連から来る同胞を、同じ「市民」として受け入れるのでなく「滞在者」として束ね、その異民族配偶者には労働する権利すら与えない移民管理政策は、韓国の官僚集団が容易に統制できないとみている「ウリ(我々)と異なる他者」に対する排他的な態度をその基盤としている。特に異民族配偶者の就職活動禁止は、国際人権標準に違反する露骨な種族差別であるだけでなく、ますます移民に依存せざるを得ない人口減少の時代に合わない政策だ。帰還する在外同胞とその家族を、皆同じ韓国人として受け入れて統合することこそが、真の意味の「多民族社会」を建設する第一歩になるだろう。

//ハンギョレ新聞社
朴露子(パク・ノジャ、Vladimir Tikhonov) オスロ国立大教授・韓国学 (お問い合わせ (お問い合わせ japan@hani.co.kr ) )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1120160.html韓国語原文入力:2023-12-13 08:38
訳J.S

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