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「イスラエル・パレスチナ戦争の責任」互いに向けられた憎悪…知人の死に無力感

登録:2023-12-08 08:27 修正:2023-12-08 08:30
パレスチナのガザ地区出身の難民サーレさん(27)が3日午後、ソウル麻浦区のハンギョレ新聞社屋で、イスラエルとハマスの戦争に対する考えを述べている=ペク・ソア記者//ハンギョレ新聞社

 「あの日」以降、人生は大きく変わった。

 パレスチナのヨルダン川西岸地区に家族を残してきたキリアさん(29)は、10月7日に戦争が勃発した後、「すべての生活が停止したようだ」と話した。もう2カ月が過ぎたが、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)と生放送のニュースチャンネルから伝わる戦争速報に全神経を尖らせて日々を送っている。イスラエル人留学生のリズさん(27)も似たような苦痛を負っている。「(イスラエルの)現地の国境で警報が鳴れば、私の携帯電話にも通知が来る。何もできない無力感を感じる」と言う。彼らのもう一つの共通点は、身近な人を多数失ったという点だ。イスラエル人留学生のダナさん(24)は「高校の同級生だった双子の兄弟は拉致され、また別の男子同級生はノバ音楽祭の現場で殺された」と話した。パレスチナのガザ地区出身の難民サーレさん(27)も「昔の町がすべて破壊された」とし「結婚を控えていた親戚のカップルと隣に住んでいた一家12人が全員死んだ」と話した。

 パレスチナの武装勢力ハマスの大規模な奇襲攻撃で戦争が始まってから、今月7日で2カ月になる。ハマスの攻撃でイスラエル人1200人、2カ月にわたって行われたイスラエルの報復で、5日(現地時間)現在までにパレスチナ人1万6248人が死亡した。双方が犯した恐ろしい蛮行に全世界が驚愕した。

 当事者たちはこの悲劇にどう耐えているのだろうか。ハンギョレは3日から4日間、イスラエルとパレスチナに家族を残したまま韓国で生活しているイスラエル人とパレスチナ人に2人ずつ会い、彼らの考えを聞いた。現地の状況を越えて、パレスチナを巡る対立の原因と解決策について尋ねたが、相手に対する憎悪で綴られた感情の溝が深すぎ、接点はなかなか見出せなかった。突然襲った悲劇に眠れない日々が続いていることを除けば、両グループの間に共通点はほとんどなかった。

 ガザ地区出身の難民サーレさんは、イスラエルの残忍な攻撃による人命被害があまりにも大きいと語った。長さ41キロメートル、幅6~12キロメートルのガザ地区(総面積365平方キロメートル)に220万~230万人が暮らしている。ハマスが2007年6月にこの地域を掌握した後、イスラエルの封鎖が続いていることから、「屋根のない監獄」と呼ばれている。土地が狭く経済事情が厳しいため、6~7人ずつになるきょうだいが数代にわたって一緒に暮らすケースは珍しくない。サーレさんは、だからこそガザ地区ではイスラエルの空襲で「家族全体が死ぬ場合が多い」と話した。「私の友人のムスタファは配偶者と娘、両親、兄弟まで17人が一度に死にました」

イスラエル人留学生のリズさん(27)が5日午前、ソウル麻浦区のハンギョレ新聞社屋でイスラエルとハマスの戦争に対する考えを述べている=キム・ヘユン記者//ハンギョレ新聞社

 戦争はなぜ始まったのだろうか。イスラエル人のリズさんは「ハマスの利己的な反ユダヤ主義」が原因だと語った。「ハマスが外部から持ち込んでくるお金をトンネルやミサイルではなくガザ住民のために使っていたら(こうした戦争を)予防できるでしょう」。続けて、イスラエルが2020年にアブラハム協定を通じてアラブ首長国連邦(UAE)、バーレーン、モロッコなどアラブ国家と関係を回復し、域内の大国であるサウジアラビアとの関係正常化を目前にした状況で、「イランの扇動」が今回の戦争の発端になったという話も付け加えた。今回の攻撃の背後に「宿敵」イランが介入した可能性があるという話だ。ダナさんの考えも似ていた。「ハマスは子どもたちにイスラエルとユダヤ人を憎むよう教育している」。ダナさんは両者の間の対立は人種的な嫌悪に基づいたもので、「単純な領土紛争ではない」という点を強調した。

 パレスチナ人たちの考えは正反対だった。対立の本質的な原因は、1948年のイスラエル建国当時になされた「イスラエルによるパレスチナ領土占領と植民地化」(キリアさん)だという。イスラエルは建国とともに、もともとここに住んでいた人々を追い出した。パレスチナ人のいう「ナクバ」(大惨事)だ。イスラエルはまた、2007年以降17年間、ガザ地区の電気、水、食料、医薬品を統制し、移動の自由を制限している。ガザ地区で生まれ育ったサーレさんは「今まで一度もヨルダン川西岸地区やエルサーレムに行ったことがない」と話した。

 建国後、4回にわたる中東戦争で勝ったイスラエルは、パレスチナの土地を侵食し始めた。1993年の「オスロ合意」によってイスラエルとパレスチナは「二国家解決」に合意した。このため、ヨルダン川西岸地区とガザ地区は独立するパレスチナ国家の領土にならなければならないが、イスラエルは西岸地区でユダヤ人入植地を拡大している。国際社会が不法と規定する行為だ。両方の居住地が混在しているため、西岸地区にはイスラエル軍や民間セキュリティ会社が運営する検問所が188カ所(常時勤務検問所49カ所を含む)にもなる。例えば、西岸地区北部のナブルスから南部のラマラに行くには、このような検問所を通過しなければならない。キリアさんは、数十年間続いたイスラエルの占領で、妥当な理由もなく逮捕され苦痛を受けるパレスチナ人はあまりにも多いと述べた。キリアさんとサーレさんは、2018年に起きたパレスチナ人の故郷帰還闘争である「帰還の大行進」当時、平和デモをしていた人々が犠牲になった事件に言及した。サーレさんは「1万人以上が負傷し、少なくとも600人以上が死亡した。相当数が子どもたちだった」と話した。キリアさんは「家族、兄弟、姉妹をこのように奪うことは生きる意志を奪うことだ。どうやって復讐するかしか考えられなくなる」と話した。

パレスチナのヨルダン川西岸地区出身の移住民キリアさん(29)が4日午後、ソウル麻浦区のハンギョレ新聞社屋でイスラエルとハマスの戦争に対する考えを述べている=シン・ソヨン記者//ハンギョレ新聞社

 ハマスに対する視線もはっきりと分かれる。イスラエル人のダナさんは「ハマスはイスラム国家(IS)のようなテログループに過ぎない」と怒りを隠さなかった。「生放送を通じて、同窓生の両親が殺され、友人が母親の血の上で7時間救助を待ちながら倒れていたというニュースを聞きました。とてもショックでした」。ダナさんは「ハマスが『自由の闘士』なら、なぜパレスチナ人を『人間の盾』として使うのか」と批判した。

 サーレさんの考えはまた正反対だった。「ハマスはパレスチナの解放と抵抗運動の過程で設立された」とし、イスラエル人を人質に取ったのは「(イスラエルに不当に逮捕された)6千人以上のパレスチナ人収監者を釈放させるためのものと聞いている」と話した。キリアさんは「ハマスがしたことはイスラエル人の暮らしの中にパレスチナという存在を喚起させたこと」だとし「彼らの方式にすべて同意するわけではないが、変化のために何かしようとしているのだと思う」と述べた。

 イスラエル最悪の「極右内閣」と批判されるネタニヤフ政権に対する考えはどうか。イスラエルの人々は批判を避ける様子だった。ダナさんは「今回のことがある前まで政府に同意しない人が多かったが、最近は公開的批判を避けようとしているようだ」として「人質の無事の帰還と日常回復に集中する状況で、政治は主要な関心事ではない」と話した。ダナさんとリズさんは、イスラエル国防軍(IDF)もガザ地区の住民に攻撃を予告し、避難を勧告していると強調した。また、ハマスだけでなく、一部のパレスチナの民間人が分離壁を越えて様々な犯罪を犯したとし、「銃を持ってマスクをした人々だけがテロリストなわけではない」と主張した。

 長年の対立の解決策はあるだろうか。イスラエル政府は、ハマス撲滅とすべての人質の無事帰還を戦争の目標に掲げている。インタビューに応じたイスラエル人の考えも大きく変わらなかった。ダナさんは「ガザ地区を統制するテログループを除去することが急務」だとし、リズさんも「すべての人質が帰ってきて、ハマスが権力を手放さなければならない」と断言した。

イスラエル人留学生のダナさん(24)が4日午前、ソウル城北区のあるカフェでハンギョレと会い、ハマスに拉致されたと推定される自分の同窓生に対するインスタグラムの掲示物を見せている=ノ・ジウォン記者//ハンギョレ新聞社

 ガザ地区の残酷な状況については異見はなかったが、イスラエルは「ハマスの暴政」、パレスチナは「イスラエルの抑圧」を原因に挙げた。キリアさんは「ハマス撲滅は達成できない目標」だとし「ハマスに加入した人のほとんどが家族と友人を失った人たちだから」と話した。これに比べ、ダナさんは「裕福な国々がガザ地区に多額の資金を寄付するが、それがテロに使われているというのが問題」だとし、「その金で上水道と学校を建て、経済を起こせば(対立の解消に)役立つ。まともな家と暮らしがない恐ろしい環境では、テログループに傾きやすい」と話した。

 パレスチナ問題を解決できる唯一の解決策として取り上げられている「二国家解決」も、直ちに実現する可能性は高くはないと思われた。パレスチナ側では「イスラエルの建国自体が正しくなかった」(キリアさん)、「私たちの領土と権利を取り戻さなければならない」(サーレさん)という反応を示した。数十年間続いた暴圧の中で大きな苦痛を受けた彼らは、イスラエルとの「平和共存」を受け入れるのは難しいと述べた。キリアさんは、二国家解決は「パレスチナに対するイスラエルの抑圧を永久化すること」だとし、「植民地化を戻してパレスチナを治癒しなければならない」と語った。

 否定的な立場を示すのはイスラエルも同様だった。ダナさんは「国連が領土分割計画を出してイスラエルが建国されたが、アラブはイスラエルを望まなかった」とし「彼らは依然としてユダヤ人やイスラエル人が今の領土に住むことを望んでいない」と話した。リズさんは「ハマスは2017年に『イスラエル除去』という目標を公開した。そんな人々とどうやって共存するのか」とし、「ハマス政権の下でパレスチナの未来はない」と述べた。

ノ・ジウォン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/international/international_general/1119385.html韓国語原文入力:2023-12-07 08:52
訳C.M

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