米国のサンフランシスコで開かれたアジア太平洋経済協力会議(APEC)の首脳会議で、期待を集めた韓中首脳会談は実現しなかった。同期間、米国と日本の首脳が中国の習近平国家主席に会って両国の懸案調整に乗り出したのとは対照的だ。中国と距離を置き、韓米日協力に重点を置いた韓国外交に対し、中国との関係の再設定を求める声が高まっている。
大統領室は、韓中首脳会談が実現しなかった理由について、両国首脳の日程が詰まっており、調整が難しい状況なので、無理に進めなかったと説明した。大統領室の主要関係者は19日、「3日間、APECだけでなくインド太平洋経済枠組み(IPEF)の首脳会議など多国間行事の日程が目白押しだったため、基本的に2国間会談をする時間が足りなかった」と述べた。
尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領と習主席は16日(現地時間)、APEC首脳会議第1セッション前に3~4分ほど会話しただけだ。韓中首脳会談は昨年11月、インドのニューデリーで開かれた主要20カ国・地域首脳会議(G20サミット)を最後に行われていない。
大統領室は米中、中日には必ず解決しなければならない懸案があり、両国首脳会談が必要だったとみている。米国と中国の首脳は4時間にわたる会談で、「デカップリング(経済の切り離し)はない」と確認し、軍事分野で意思疎通を図るチャンネルを復元するなど、緊張を和らげた。習主席は、日本の岸田文雄首相とも1時間以上の首脳会談を行い、日本の水産物の輸入停止などの懸案について話し合い、高官級の経済対話を始めるなど、意思疎通チャンネルの幅を広げることで合意した。中国外務省の発表によると、習主席は15日(現地時間)から米国と日本、メキシコ、ペルー、フィジー、ブルネイの少なくとも6カ国の指導者と会談した。
韓国としては、北朝鮮とロシアが密着する中、APEC期間中の韓中首脳会談を通じて、政府が対中関係を管理しているというメッセージを出そうとしたが、その試みは失敗に終わった。聖公会大学中国学科のイ・ナムジュ教授は「韓中関係の正常化への道のりがまだ遠いことを示している。米国と日本は事前に高官が中国を訪問するなど首脳会談の段階に至るまで準備作業を進めてきたが、韓国にはそのような過程がなかった」と指摘した。亜洲大学米中政策研究所のキム・フンギュ所長は、「韓国は韓米同盟と韓米日協力を強化し、米国の価値観外交の枠組みを積極的に受け入れたが、今回(韓中会談が)実現しなかったのは、そのような外交政策を標榜した結果を象徴的に示している」とし、「日本も中国と対話をしており、米国も対中関係の管理に乗り出す中、韓国は中国に実益のある提案をしておらず、中国も韓国の望む(韓中)関係の設定に応じていない」と述べた。
中国としては、独自の外交空間を確保できなかった韓国に会う理由がないという分析もある。慶南大学極東問題研究所のイ・サンマン教授は「韓国が米国と強く密着した状況では、中国と共有するアジェンダが多くない」と語った。今回のAPEC首脳会議期間中にも、尹錫悦大統領は米日の首脳と会談し、韓米日の三角結束を強調しており、特に、岸田首相とは2国間首脳会談を含め2回会った。
専門家らは、韓中日外相会談とその後の3カ国首脳会談の開催を通じて、韓中関係の再設定が必要だと主張する。外相会談は今月26日、釜山(プサン)で開催される可能性が高く、ここで3カ国首脳会談の開催に関する議論も行われる予定だ。龍仁大学中国学科のパク・スンチャン教授は、「韓中日外相会談を転換点とし、現実的な可能性のあるアジェンダを作り出さなければならない。サプライチェーンに関して両国間の体系を作り、高官級会談を定例化するなど、実利的なアプローチを通じて米国との関係を切り離し、競争と協力の領域を区分しなければならない」と指摘した。
3カ国首脳会談が開かれれば、中国側からは李強首相が出席するものと予想される。イ・サンマン教授は「中国は最高指導者の意志を最も重視するため、習近平主席との会合を通じた関係改善が重要だ」とし、「3カ国首脳会談が行われたとしても、韓中関係の停滞局面はしばらく続くものとみられる」と語った。
大統領室の主要関係者は「今年9月、東南アジア諸国連合(ASEAN)関連会議に出席するためインドネシアのジャカルタを訪問した尹大統領は李強首相に会った。9月の杭州アジア大会開幕式で、ハン・ドクス首相が習主席と対話したため、両国間の緊迫した懸案は解消された状態だ」とし、「今回のAPECの期間にも韓中首脳が会って言葉を交わし、またの機会に会うことを約束した」と述べた。
尹大統領は、APEC首脳会議に出席した後、18日に帰国したが、2日後の20日、英国を国賓訪問するため再び出国する。