ロシアの民間軍事会社「ワグネル」の代表であるエフゲニー・プリゴジン氏が航空機墜落事故で死亡した。ワグネルに近いテレグラムチャンネル「グレーゾーン」は、ロシアの防空網がプリゴジン氏の乗った航空機を撃墜したと主張した。
ロシア国営のタス通信は23日(現地時間)、モスクワからサンクトペテルブルクに向かっていたジェット機「エンブラエル・レガシー」が同日夕方にモスクワから北西に170キロほど離れたトベリ地域に墜落したと報じた。操縦士3人とプリゴジン氏を含む乗客7人の搭乗者10人が全員死亡した。プリゴジン氏とともにワグネルを初期から率いたとされる特殊戦部隊(スペツナズ)の将校出身のドミトリー・ウトキン氏も死亡したとロシア当局は明らかにした。
ロシア調査委員会は事故調査を開始した。調査委は同日、声明を出し「トベリ地域で航空機事故が発生した後、ロシア連邦調査委の主要な捜査部署が刑法263条(航空運送安全および運営規則違反)における犯罪についての捜査を始めた」と明らかにした。
これに先立ち、ロシア連邦航空運送局はこの日夕方の墜落事故発生後、直ちに調査を始め、搭乗客リストにエフゲニー・プリゴジン氏が含まれていると明らかにした。その後、死亡が確認された。23日午後9時20分現在のタス通信の報道によると、現場に出動した救助隊が墜落事故で死亡した7人の遺体を収拾した。
同日、ワグネルはテレグラムアカウントを通じてプリゴジン氏は殺害されたとし、追悼文を載せた。彼らは「ワグネルの代表でありロシアの英雄、祖国の真の愛国者、エフゲニー・プリゴジンがロシアの反逆者たちの行動で亡くなった」とし「だが、たとえ地獄にいたとしても彼は最高であろう。ロシアに栄光を」と書き込んだ。
ワグネルに近いテレグラムチャンネル「グレーゾーン」はさらに一歩踏み込んで「航空機はトベリ地域でロシアの国防省の防空網によって撃墜された」と主張した。グレーゾーンは、1機の航空機が突然石が落ちるように墜落する様子を撮影した動画を掲示した。AP通信は、グレーゾーンがアップした動画のような墜落の様子は、航空機が深刻な損傷を受けた場合に発生すると伝えた。
プリゴジン氏は武装反乱から2カ月で冷たい遺体となった。プーチン大統領に近い飲食業者であり「プーチンの料理人」とも呼ばれた彼は、ワグネルを作った人物だ。一時はプーチン大統領の最側近として注目された。
ワグネルは昨年2月末、ロシアのウクライナ全面侵攻で始まった戦争で、東部バフムトなど最前線に投入された。しかし昨年末からセルゲイ・ショイグ国防長官を含むロシア軍部がウクライナ戦争でワグネルに対する支援をまともに行なっていないと、何度も不満を示してきた。軋轢(あつれき)の末に6月初めにはロシア軍指導部を非難し、ワグネルの隊員らを率いてロシア南部ロストフナドヌを掌握、首都モスクワに進撃する「武装反乱」を起こした。
この反乱は、ベラルーシのアレクサンドル・ルカシェンコ大統領が仲裁者として乗り出し、1日で収拾された。しかし、それによってプーチン大統領は指導力に大きな打撃を受けた。ロシア政府は当時「ワグネルの隊員たちを処罰せず、プリゴジンはベラルーシに行く」と発表した。その後、プリゴジン氏はプーチン大統領が開いた会議に出席し、ロシアと外国を自由に往来する姿を見せた。しかし、ついに不審な航空機墜落事故で命を落とした。