本文に移動

日本・米国に執着し不意打ち食らった尹錫悦政権…「実益すべて奪われる」

登録:2023-04-12 09:52 修正:2023-04-14 08:35
尹錫悦大統領が3月21日、龍山大統領室庁舎で開かれた国務会議で冒頭発言をしている=大統領室写真記者団//ハンギョレ新聞社

 韓米同盟と韓米日協力強化を前面に掲げた尹錫悦大統領の外交・安全保障政策が、就任1年足らずで難局を迎えている。日本政府は11日、「歴代内閣の歴史認識を継承」という表現が抜けたうえに独島(トクト)領有権の主張を盛り込んだ「外交青書」を発表し、米国は情報機関が韓国の国家安保室を盗聴・通信傍受したという情況が明らかになった。このような中、北朝鮮は5日連続で南北定期通話に応じていない。

 日本政府はこの日公開した外交青書に、過去問題に関して「日本政府は歴代内閣の歴史認識を継承する」という内容を書き入れなかった。「歴代内閣の歴史認識を継承」とは、1998年10月に発表された「韓日パートナーシップ宣言(金大中-小渕宣言)」を日本政府が継承するというもので、この宣言には日本の過去の植民支配に対する痛切な反省と心からのお詫びが盛り込まれている。その代わり、外交青書には「竹島(日本が主張する独島の名称)は歴史的事実に照らしても国際法上も明らかに日本固有の領土」と引き続き書かれ、独島(トクト)の領有権を主張した。

 日本政府の態度は尹大統領の予測とは反対だ。尹大統領は韓日首脳会談後に韓国世論の批判が沸き起こると、会談5日後の先月21日、国務会議で「韓日関係は、片方が多く得ればもう片方がその分を失うというようなゼロサム関係ではない」とし「韓国が先制的に障害物を取り除いていけば、きっと日本も呼応してくるだろう」と述べた。外交部は独島領有権の主張に対し「強く抗議し、直ちに撤回するよう求める」という声明を出し、駐韓日本大使館の熊谷直樹総括公使を呼び出して抗議した。

 しかし、(外交青書から)「歴史認識の継承」が抜け落ちた件には対しては「(日帝強制動員)解決策が発表されてから1カ月たった状況であり、これまで日本側でも誠意ある措置が続いている」として、特に抗議はしなかった。これに先立ち、日本の文部科学省は先月28日、日帝の徴用と徴兵の強制性を弱め独島領有権を主張する内容の小学校の社会科教科書の検定結果を発表した。

 韓米関係は、米情報機関の盗聴問題が浮き彫りになって難関に直面した。大統領室はこの日、「韓米の国防長官は『(盗聴疑惑の)当該文書のかなりの部分が偽造された』という事実で意見が一致した」と発表した。韓米同盟に影響はないという点を強調したのだ。

 だが、「韓米同盟強化」を事実上最優先の外交原則として掲げ、国際関係で米国と積極的に歩調を合わせてきた状況で明らかになった盗聴の情況は、政府としては当惑する結果だ。尹大統領は昨年11月、カンボジアで発表した韓米日プノンペン声明で、北朝鮮の核とミサイルの脅威に対する糾弾▽台湾海峡の平和と安定維持の再確認▽インド太平洋地域の現状変更の試みに反対▽南シナ海の航行の自由の保障などに合意し、中国けん制に焦点を合わせた米国の対外政策に積極的に協調した。これに先立ち、米国はインフレ抑制法(IRA)と半導体支援法(CHIPS法)を制定し、自国優先主義を露骨に示した。これらの法は同盟である韓国企業に打撃を与えるものだった。尹大統領は就任後1年近く米国と日本に「全賭け」するような外交政策を推進したが、不意打ちを食らったかたちになった。

尹錫悦大統領と米国のバイデン大統領、日本の岸田首相が昨年11月13日(現地時間)、カンボジアのプノンペンで東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議を機に会合し、韓米日首脳会談を行っている=プノンペン/ユン・ウンシク先任記者//ハンギョレ新聞社

 南北関係は悪化の一途をたどっている。北朝鮮は同日まで南北共同連絡事務所と東海(トンヘ)・西海(ソヘ)軍通信線の定期通話に応じなかった。今月7日以降、5日間つながっていない。

 尹大統領は就任後、北朝鮮が非核化交渉に真摯に乗り出せば、様々な経済的支援を惜しまないという内容の「大胆な構想」を発表した。しかし、これに対して北朝鮮が一貫して冷淡な反応を示し、韓米同盟と韓米日協力強化の基調のなか軍事演習を拡大したことで、緊張は高まった。特に尹大統領は先月、現政権で初めて公開した北朝鮮人権報告書に言及し、「北朝鮮住民の凄惨な人権蹂躙(じゅうりん)の実状が、国際社会に一つひとつ明らかにならなければならない」「核開発を推進する状況では1ウォンたりとも与えることはできない」と述べた。

 専門家らは、サウジアラビアが米国一辺倒の外交から脱し、フランスが米国の対中けん制路線に距離を置いて国益外交を展開している状況で、韓国が韓米日協力に執着すれば外交舞台で遅れを取りかねないと指摘した。キム・ジュンヒョン元国立外交院長は「米国や日本とは、協力をするとしても徹底的に検証し、私たちが得るものは得なければならない」とし、「ところが今は傾いた協力のもと、実益を全て奪われる方向に向かっている」と述べた。

 チェ・ジョンゴン元外交部第1次官は「韓米日協力の定義を韓国自らが立てずに飛び込んだようだ」とし、「そうした状況で、とにかく韓日米協力と言えばまるで万能薬であるかのように唱えているから、何かにつけてやられるのだ」と述べた。

シン・ヒョンチョル記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/politics/diplomacy/1087507.html韓国語原文入力:2023-04-12 09:05
訳C.M

関連記事