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民間用気球?なぜこの時期に…中国の気球、深まる疑問

登録:2023-02-09 05:41 修正:2023-02-09 08:50
米海軍の爆発物処理班所属の将兵が2023年2月5日(現地時間)、サウスカロライナ州マートルビーチ沖合で中国の偵察気球の残骸を回収する様子を、米海軍が7日に初公開した/AFP・聯合ニュース

 米国上空を飛行し撃墜された中国の気球(風船)について、中国は民間用だと繰り返し主張しているが、釈然としない部分が多い。

 中国は、気球は気象観測などの科学研究目的で民間会社が運用したものだと主張しているが、どの企業なのかは公開していない。7日、中国外交部の毛寧報道官は定例会見で「(気球を運用した)企業を教えてほしい」という外国記者の質問に、「中国は関連状況を何度も紹介した。現時点ではこれ以上の情報はない」と述べた。気球の運用主体を明らかにすれば民間用だという自分たちの主張が明確に証明されるにもかかわらず、それを公開していない。中国メディアやSNSなどにも、気球を運用した会社は登場していない。

 しかも、米国メディアなどを通して公開された気球の写真によると、気球の表面には運用主体を示す標識はないものとみられる。気球の直径は約60メートルで、バス3台分程度の装置を載せられるほどの大きさだが、特別な標識がないという点は民間会社が運用する装置とみなしがたい部分だ。

 米国で発見されたものに似た気球が、中南米など他の地域で相次いで確認されている点も疑問を深める。最近、コスタリカとコロンビア両政府は、自国の上空で気球を発見したことを明らかにし、特にコスタリカ外務省は、6日の声明を通じて、中国政府が中国の気球だと認めたことを明らかにした。中国はこれについて、米国上空で発見された気球と同様に「誤って」気球がコスタリカ上空に進入したものだと説明している。だが、中国が主張するような偶発的な事件が、このように同時多発的に起きることは容易ではない。米国や台湾、日本なども、過去に中国の偵察気球が自国上空で確認されたことがあると発表している。

 中国軍が最近、軍事目的で気球を活用する方法を研究している状況も明らかになっている。ロイターの報道によると、人民解放軍の研究所は昨年4月、「特殊航空機」をテーマにした論文で、気球を敵の防空システムに対してテストをするために活用できるとする研究内容などを取りあげた。軍事目的での気球の活用は、中国以外にも米国やイスラエルなどがすでに行ってもいる。

 ただし、気球が登場した時期は、中国の意図について混乱させる大きな課題だ。米国との和解の雰囲気の醸成に入った中国が、あえて軍事用気球を送りムードを壊す必要があるのかという指摘が出ている。実際、中国の習近平国家主席は、3期目が確定したわずか1カ月後の昨年11月、米国のジョー・バイデン大統領と会談して米中関係の正常化を要求し、その結果、今月5日には米国のアントニー・ブリンケン国務長官の3年ぶりの訪中を控えていた。中国外交部はブリンケン長官の訪中を歓迎するという論評を出していた。

 中国当局と軍が「行き違い」を起こした可能性があるという予測が出ているが、党と軍が一体で動く中国の政治体制の特性上、そうしたことが起きるのは難しいという反応もある。米中関係で大きな議論になりうる行動を党が望まない状況で、軍が行う可能性は非常に小さいということだ。そのため、北京の外交筋からは「米中和解に対する習主席の心が変わったことを、今回の事件が結果的に示している」という解釈も出ている。

北京/チェ・ヒョンジュン特派員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/international/international_general/1078791.html韓国語原文入力:2023-02-08 20:25
訳M.S

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