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「尹政権、『強い安保』のスローガンもいいが、国民を不安にさせないでほしい」

登録:2023-01-02 22:44 修正:2023-02-01 09:56
ムン・ジョンイン世宗研究所理事長//ハンギョレ新聞社

 米国と中国の戦略競争の激化、ロシアのウクライナ侵攻と戦争の長期化、朝鮮半島の軍拡競争の激化と「韓国・米国・日本」対「北朝鮮・中国・ロシア」の対決構図の可視化など、2022年の朝鮮半島と世界情勢は、紛争と対立で一貫していた。ならば、今年の朝鮮半島と世界はどこへ向かうのだろうか。この分野の専門家であるムン・ジョンイン世宗研究所理事長兼ハンギョレ統一文化財団理事長に意見を聞いてみた。現在米国に滞在中のムン理事長は、年末に2回にわたって行われた電子メールによるインタビューを通じて、希望の根拠は戦争を望まない市民の力と行動にあると強調した。以下は一問一答。

-昨年の最大の事件は、ロシアのウクライナ侵攻と戦争の長期化だといえる。この戦争を早く終わらせるためには、どのような努力が必要だと考えるか。

 「侵略国ロシアがウクライナの要求を受け入れ、占領地から部分的にでも撤収する場合、戦争終結のための平和交渉の開始が可能だろうと考える。しかしロシアが、占領地からの撤収はもちろん、クリミア半島返還、戦犯処罰、戦争賠償金の支払いなど追加の要求を受け入れる可能性は極めて低い。したがって、戦争の長期化は避けられないようにみえる。長期戦にともなう犠牲者の増加は、終戦をよりいっそう難しくするだろう。状況がさらに悪化する前に、米国や国連などが積極的に乗りださなければならない。ロシアには名分ある出口を提供し、ウクライナには武器供給の中断の圧力を行使してでも、休戦交渉を始めなければならない。その場合でも、ウクライナ事態は朝鮮半島のような長期紛争地域として残る可能性が高い」

-ロシア・ウクライナ戦争の長期化とともに、米国と中国の戦略競争の進退も関心事だ。米中関係が改善される余地はあると考えるか。

 「昨年11月14日にインドネシアのバリで開かれた米中首脳会談には大きな意味があったと考える。ジョー・バイデン大統領は『新しい冷戦はないだろう』と明言し、習近平主席は『歴史を教訓にして未来を切り開こう』と同意の返事をした。しかし、見通しはそれほど明るくはみえない。米国は気候変動、伝染病、核拡散防止などでは協力、貿易と技術分野では競争、そして、地政学と価値の分野では対決を同時に追求する。しかし、中国は、台湾、南シナ海、新疆ウイグル問題など自身の核心利益が脅かされるかぎり、米国との協力は難しいとする姿勢だ。これらの問題とともに、半導体をはじめとする高度技術分野の対中規制と2024年に大統領選挙を控えた米国内の『中国バッシング』感情をみると、米中関係改善は容易だとは思えない」

-朝鮮半島問題を見てみたい。バイデン政権の対北朝鮮政策が「戦略的無視」にまで後退しているという指摘が出ているが、最近の米国の流れはどのようなものなのか。

 「バイデン政権は、対北朝鮮制裁など最大限の圧力政策を維持しつつ、同盟強化を通じて朝戦半島情勢を安定的に管理することに焦点を置いているようだ。対話を通しての北朝鮮核問題の外交的妥結には、おそらく消極的だ。特に、トランプ式の首脳外交方式に対しては極めて否定的だ。しかも、バイデン政権の外交安全保障の優先順位では、北朝鮮問題は大きく押し下げられている。『戦略的無視』政策という話は、そのような流れから出てきたようだ。それに対して尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権は、北朝鮮に対する強硬姿勢を強力に求めている。このような状況では、北朝鮮が対話に乗りだす可能性はほとんどないようにみえる」

-大陸間弾道ミサイル(ICBM)をはじめとする北朝鮮の核高度化は、歴代最高値に向かいつつあるが、米国が消極的な態度を取る理由は何だと考えているか。

 「米国は、北朝鮮の核戦力増強に対してまで消極的な態度をとっているのではない。拡大抑止力の充実、韓米合同演習の頻度と強度の引き上げ、戦略兵器の随時配備、韓米日3国の軍事協力の強化、そして、国際社会での北朝鮮孤立化への圧力など、様々な対応戦略を展開している。それには、北朝鮮に対する抑止を越え、対中牽制のための韓米同盟の結束と韓米日軍事協力の強化という戦略的な計算が背景にあるのかも知れない。しかし、そのような対応は、朝鮮半島に一触即発の危機を持ち込む可能性があり、北朝鮮核問題の解決をよりいっそう遠ざけることになりうる」

-漸進的な非核化を追求しなければならないという声が高まっているが、北朝鮮が核戦力を「国体」とみなしている状況で非核化は可能なのかという疑問に対する意見は。

 「昨年9月8日、金正恩(キム・ジョンウン)委員長は、国家核武力政策の法令の採択を宣言し、『核は我々の国威であり、国体であり、共和国の絶対的な力であり、朝鮮人民の大きな誇り』だと語った。北朝鮮の核保有国の地位は不可逆的だと釘をさし、過去の反撃中心の抑止戦略に加え、核の先制使用と戦術核の配備を公式化した。それだけに、北朝鮮の非核化は難しい課題になっている。しかし、北朝鮮の非核化は、あきらめられない私たちの目標だ。北朝鮮核問題はすぐには解決不可能なだけに、『凍結、縮小、そして廃棄』の漸進的な経路に乗りださなければならない。必要であれば、その過程で軍縮交渉も行わなければならない。特に、北朝鮮が望む敵対視政策の解消と非核化を同視する行動原則に基づき、徐々に交換していかなければならない。そのためには、朝米、南北間の信頼回復が先行しなければならない。米国のような強い国家の先制的な譲歩が、現在の膠着局面の打開に役立つだろう」

-韓国内では非核化は水泡に帰したとして、韓国も核武装に乗りださなければならないという主張が強まっている。米国をうまく説得すれば黙認してもらえるという主張も出ているが、これについてはどう考えるか。

 「ワシントンの極端な反中勢力は、中国の浮上に対応するために、韓国と日本の核武装を許容しなければならないと主張している。また、米国が北朝鮮の核によって人質にとられることが起こりうるため、韓国の核武装を許容し在韓米軍を撤収しようという孤立主義の見方もある。一部の韓国の保守の人々は、イスラエルのようにロビー活動を通じて米国を説得し、独自で核武装に進もうという主張をしたりもする。しかし、これは希望的な考えにすぎない。ワシントンでは、今でも韓国の核武装を許容してはならないとする非拡散勢力が圧倒的だ。核武装した韓国を統制するのは難しいという米国の認識もまた広まっている。しかも、イスラエルは長期間にわたり秘密裏に核開発を行い、いまだに確認も否認もしない態度を示している。私たちのようにあからさまに核開発を持ちだしたとしても、米国でこれを支持する人は皆無だ。私たちにはイスラエルのような強大なロビー力もない。究極的に韓国の核武装を許容し東北アジアに核のドミノ現象が発生すれば、米国の覇権的地位が弱まるだろうが、米国がそれを容認する可能性はほとんどない」

-平和に対する希望が萎縮しているが、希望の根拠はどこで発見できるか。

 「ウクライナ事態を反面教師としなければならない。いったん戦争が始まり犠牲者が多くなれば、戦争を中断するのは難しい。戦争と死の泥沼に陥り、犠牲となるのは無実の市民だ。市民が立ち上がり、戦争を防止し平和を守らなければならない。市民自らが強力な力を持って平和の急先鋒に立つ時、私たちは希望の根拠を見出すことができる」

-最後に、尹錫悦政権に望むことは。

 「『強い安保』というスローガンもいいが、国民を不安にさせないでほしい。北朝鮮との緊張の高まり、中国・ロシアとのぎくしゃくした関係、日本の攻勢的な動きなど、私たちの安全保障の環境は危難な方向に展開している。地政学的な流れをよく判断し、国民が安心して暮らせる環境を作るよう願う。価値外交もいいが、国益という実利も逃さないでほしい。そして、敵味方に分ける政治でなく、国民的な合意を求める大乗的な外交・安全保障政策を展開してほしい。政権は有限で、国民は永遠なものではないか」

チョン・ウクシク|ハンギョレ平和研究所所長 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/politics/defense/1074027.html韓国語原文入力:2023-01-02 11:46
訳M.S

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