国軍機務司令部(機務司。現:国軍防諜司令部)が2017年の大統領選挙直前に野党候補である文在寅(ムン・ジェイン)前大統領陣営の軍人事関連の動向を把握し、国防部長官に報告していたことがうかがえる報告書が公開された。
軍人権センターは25日、軍事安保支援司令部(現:国軍防諜司令部)を相手取った情報公開拒否処分取り消し訴訟で、7月28日に最高裁で勝訴して確保した機務司の3件の文書を公開した。これらの文書は、すべて大統領選挙直前の2017年3~4月に作成され、当時のハン・ミング国防部長官に報告されたと軍人権センターは説明した。
機務司が2017年3月3日に作成した「文在寅の文民国防部長官考慮可能性膾炙(かいしゃ)」と題する文書によれば、機務司は、汝矣島(ヨイド)の政界では「(文在寅候補は)文民長官を任命する可能性が高いと見通している」とし「アン・ギュベク議員が最近の雰囲気に便乗して国防長官に対する意志表明説」があると記している。その一方で「安保専門家たちは『最初から文民長官を任命するのは容易ではないだろう』との見解」を示したとする分析を付け加えている。実際に、文在寅政権の最初の国防部長官には海軍出身のソン・ヨンム元長官が任命されている。
続いて機務司が2017年4月14日に作成した「ファン・ギチョル提督4月末文在寅支持宣言予定説」と題する文書では「ファン・ギチョル提督、共に民主党安保特委のソン・ヨンム委員長の紹介で文在寅候補と2回にわたり単独で面談し、後に文在寅選挙陣営に合流」するだろうと報告されている。そして「文候補陣営、『セウォル号の隠れた英雄、白衣従軍李舜臣(イ・スンシン)』などと呼ばれるファン提督の支持宣言は100万票以上の効果があると期待している」と分析している。実際にファン提督は、文書作成から20日後の2017年5月4日に文在寅陣営に合流している。
機務司はまた、2017年4月28日に作成した「文在寅候補当選時にチョン・インボム将軍再起用の噂」と題する文書で「文候補の当選時にはチョン・インボム将軍が再起用される可能性がある」との内容の報道記事に言及している。そして「メディア界の一部は『主要職責には抜擢されないまま時間が過ぎれば、用途廃棄されるだろう』と評価した」と書いている。チョン将軍は文在寅陣営に合流したものの、合流からわずか1週間後の2017年2月10日に米国に行くと表明し、その後、陣営活動はしていない。
軍人権センターが情報公開を請求した機務司の報告書は35件で、そのうち25件はまだ公開されていない。公開されていない文書の中には「文在寅陣営の国情院改革構想腹案」、「最近のアン・チョルス陣営内部の雰囲気」、「ホン・ソッキョン前中央日報会長の今後の歩みの見通し」などの、野党陣営についての文書が含まれている。
軍人権センターの関係者は「軍の情報機関が野党についての情報を日常的に収集していたことが確認できる。事実上、野党政界を査察していた」とし、「民間人査察と同じくらい深刻な問題」だと指摘した。